第198話 齟齬


 「アイス美味しいね〜」


 「ジェラートって言うんだぞ」


 何が違うのかは分からんが。

 まあ、アイスでも良いでしょ。

 美味しいもんは美味しいし。


 「何卒お時間頂けませんか?」


 「ピザとパスタも食べたいな」


 「美味しそうなお店がいっぱいですっ」


 ローマの街を歩きながら、ジェラートを食べつつ観光を堪能する。そこかしこから良い匂いがしてる気がするなぁ。


 「お願いしますお願いします」


 「ほう! 映画で見たシーンそっくりではないか! まだほぼそのままの状態とは恐るべし!」


 スペイン広場にて公英が某映画の事を思い出しながらテンションが上がってる。

 俺、あの映画は見た事ないんだよね。こういうシーンがあったってのは知ってるんだけど。


 ってか、ここがそうってのも今日初めて知りました。言われてみればって感じだな。


 「あの…。ほんの少しだけで良いのでお時間を…」


 「私は少し落ち着いた店でワインを楽しみたいですねぇ」


 陽花はお酒を飲みたいのを我慢している。

 ビールとかなら平気で歩き飲みとかする奴なんだけどな。流石にワインはしないらしい。ワイン瓶片手に歩いてるのを想像すると面白いからやってみてくれても良いけど。



 「で、ここがトレヴィの泉か」


 某テレビ番組と名前が似てるけど、関係あるのかな? なんかへぇ〜へぇ〜言うやつ。

 小さい頃は見てたような気がする。かなり昔の記憶だからへぇ〜ぐらいしか記憶にないんだけど。


 「コインを投げたら色々ご利益があるみたいだよ〜」


 「へぇ〜」


 確かに観光客が写真を撮りながら色々やってるか。俺達もやるべきか? せっかくだしな。両替してない500円玉とか放り込んでも効果はあるのかね? 


 カードでしか会計しないから外国に来ても両替なんてしないんだよなぁ。現金を持ってるのはゲーセンで遊ぶ為だし。


 とりあえずミーハーな観光客らしく、コインを放り込んでおいた。なんか投げ方とかにも作法があったみたいなんだけど、関係なく放り込んで、さっさと楽隠居できますようにとお願い事をしておいた。


 後から知ったけど、そういうお願い事をする場所じゃなかったみたい。またローマに戻って来れますようにだとか、2枚、3枚となるとまた別の効果があったりとか。


 まあ、別に面白そうだからやっただけで、簡単に叶うとは思ってないけど。だって神様があんなんだし。俺が楽しようとすると、新しく仕事を捩じ込んできそうな気がする。




 「あー、お前達は先に入ってて」


 ローマを練り歩き、夜は予約していたレストランへ。ここは陽花が楽しみにしてた場所で、なんでもワインが美味しいらしい。


 早速入りたいところだけど、今日の観光でずっと着いて来ていた厄介者がいる。

 俺達は無視して観光してたんだけど、めげずに最後までついてきた。


 迷惑以外のなにものでもないし、流石にレストランまで付き纏われたら困る。って事で、みんなは先に入ってもらって、レストランの近くで応対する。


 まあ、分かってると思うがバチカン勢力だ。今日ひたすら付き纏ってきた奴は、バチカンの中でもまともみたいだが、それでも下っ端なのである。


 ここまで追い詰められてもお偉いさんを出さないのかと呆れるところ。なんならペルーで偉そうにしてた奴のほうが身分的なのは上だ。


 「バチカンの狭間を攻略して欲しいのです」


 「毎回断ってますよね? 未だにペルーでの事も謝罪がありませんし。はいそうですかと言う訳にはいきませんよ」


 「勿論上の者も攻略した際には謝罪する意思があると…」


 「いや、そこがおかしいでしょ」


 なんで攻略してから謝罪なんだよ。

 普通は前に謝罪があって、そこから交渉でしょうよ。どこまでズレてんだ。


 「まだまだ認識に齟齬があるみたいですね。今日のところはこれで。もっとまともな提案が出来るようになってから来て下さい」


 俺は相手の返答も待たずにその場を後にした。あの人も可哀想にね。上の尻拭いの為に奔走しないといけないんだから。


 まあ、そういう組織に所属した自分が悪いって事で。諦めておくんなまし。

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