第192話 ロシア料理


 「え? 白い」


 「これがビーフストロガノフだよ〜」


 とりあえず観光って事でロシアで有名な料理を食べるかってなって、野次馬さん達にここらで美味しい料理屋さんを聞いてみた。


 携帯で調べるのも良いけど、地元の人が美味しいって言うところの方が外れは少ないだろう。


 で、ロシアで有名な料理って言ったら、ビーフストロガノフとボルシチぐらいしか知らない。


 そう思ってたんだけど、ボルシチは正確にはウクライナが本家本元らしい。じゃあビーフストロガノフ食べてみるかってなったのはよかったんだけど。


 「俺が想像してたの違うんだけど」


 「どうせハヤシライスみたいなのを想像してたんでしょ〜?」


 「うん」


 正直違いがあんまり分からなんだと思ってたら、出て来たのは白い料理だった。茶色のが出てくると思ってたから面を食らっちゃったよ。


 「ここはサワークリームと生クリームを使用しているみたいだな!」


 「シチューみたいですねっ!」


 公英がしたり顔で言ってるけど、これが正しいビーフストロガノフって事で良いのかな?

 神田さんが言うようにシチューに見える。


 「店主さんのおすすめウォッカをもらえるかしら?」


 陽花は早速お酒も注文してる。ロシアと言えばウォッカだよね。お酒にあんまり詳しくない俺でも知ってる。酒精が強過ぎてあんまり好きにはなれないけど。


 とりあえずビーフストロガノフをパクり。


 「うまっ。まろやか! 思った以上に味がしっかりしてる」


 まあ、大体の料理を美味しいって言えるバカ舌だけど。美味いもんは美味い。サワークリームをいっぱい使ってるからか、酸味が感じられるけど、それがまた良いアクセントになってる。


 「ハヤシライスと全然違うな」


 「美味し〜! お代わりくださ〜い!」


 桜の言葉にちょっと小太りの店主さんが親指をグッと突き立てて厨房に戻る。すみません、俺もお願いして良いですか?


 「ウォッカも美味しいですよぉ」


 「割ったりしないんだ?」


 「ロシアでは基本ストレートで飲むみたいですぅ」


 どうやらウォッカを瓶のまま冷凍庫に入れて、飲む前に取り出すのが美味しい飲み方らしい。完全に凍ってる訳じゃなくて、トロッとした感じになるんだと。


 口当たりがまろやかになって、のどこしがスムースに、芳醇な味わいを楽しめるのだと陽花に熱弁された。


 「いや、それでもきついよ」


 「団長さんはお酒に強いのにきついお酒は好きじゃありませんねぇ」


 お酒に強くないと、異世界で酔っ払ったりしたら暗殺される可能性があったから。

 死にもの狂いで強くなったよね。お酒は好きでも嫌いでもない。付き合って飲むけど、自分からあんまりって感じかな。


 「飲んだ後のカーッって喉が熱くなるのがどうしても苦手」


 「それが良いんじゃないですかぁ。その後に爽やかな気持ちになりますよぉ? 大将さん、おつまみもお願いします」


 それはアル中の言い分なんよ。

 あれのどこが良いのか俺には良く分からんね。


 「団長さん、お酒を買って帰っても良いですかぁ? 日本に戻っても飲みたいです」


 「好きにしてくれ」


 なんかウォッカにも色々種類があって、陽花は早速ピックアップしてる。クバンスカヤ、ベルーガ、スタルカとか呪文みたいに言ってるけど、俺にはなんの事か分かりませんね。


 「おつまみは美味い。酒のつまみって、酒飲みじゃなくても美味しく感じれるのはなんでだろうな」


 陽花にピクルスとニシンの塩漬けを出されたのでつまんでみると、普通に美味しい。

 コンビニとかで売ってるお酒のつまみとかも美味しいんだよね。たとえお酒を飲まなくても全然食べれる。


 「このニシンの塩漬けはセリョートカって言うみたいですよぉ。ウォッカに合いますねぇ」


 うむうむ。やっぱり食ってのは素晴らしいな。イギリスではほとんど食で楽しめなかったけど、あそこは例外って事で。


 ロシアは食で楽しんで良し。酒で楽しんで良しと、まだ観光が始まったばかりなのに、既に堪能しまくってる。


 まあ、その分観光名所はちょっと少なめかななんて思っちゃったり。

 モスクワだけで充分楽しめるんだけどね。

 

 

 

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