第191話 協会長さんとお話し
「わざわざご足労頂きありがとうございます」
「いえいえ」
狭間から出て攻略したよーって言ったら、野次馬達はびっくりしてた。
ここ最近は一ヶ月ぐらい攻略に時間を掛けてたし、今回もそれぐらいは掛かると思ってたんだろう。
すみませんが今回は俺が手を出してしまいました。
その後野次馬と軽くわちゃわちゃして、探索者協会に素材を売りに来たら、協会長さんが少し時間が欲しいって言うので、お話しに来た。
なんか滅茶苦茶腰が低いけど、一体どうしたんだろうか? 何か面倒事でも起こったのかね?
「探索者の育成ですか」
「ええ。今回の様な事がもう起こらないと考えるのは楽観的でしょう。もしまた自国で1級の狭間や特級の狭間が出た時に、都合良く織田さんの手が空いてるとも限りません。万が一の時に備えておきたいのです」
違った。
普通にまともなお願い事だった。
用意された資料を見てみると、報酬やら期間やらがちゃんと書かれてある。
条件も申し分ないし、俺に否はない。
わざわざ日本に来てくれるみたいだしね。
ってか、正直この提案は滅茶苦茶嬉しい。
日本は着実に探索者は育ってきてるけど、他国は以前同様へなちょこのままだ。外国に観光に行くのも楽しいけど、1級とかが出現するたびに毎回行くのはだるい。
俺がわざわざ外国に教えに行くのもなんか違うし。だから、日本に来て指導して下さいって提案はマジで助かるんだよね。
そのうちどこかしらの国が似たような提案をしてくると思ってたが、まさかロシアが一番手とはな。日本との仲は良いとは言えないし。悪いとも言えないけど。
「良いですね。どうせなら他国の探索者とまとめてやりたいところです。ロシア側から提案してみてくれないですか? どうせなら一気にやった方が時間も掛からないので」
「い、良いのですか?」
「はい。ただアメリカとバチカンはダメです。あそこは今の問題が解決してからじゃないとね」
アメリカとバチカンの名前を出すと、協会長さんは露骨に顔を引き攣らせた。
ほんとあそこはね。いつまで意地を張ってるんだか。さっさと土下座の一つでも大衆の前でやってくれたら許してあげるのに。
「後、時期については要相談ですね。これからも他国から攻略要請が来るでしょうし、今の狭間を攻略し終わってからの方が嬉しいです」
「分かりました。日程はこちらの方で調整させていただきます」
特級を攻略出来るレベルに育てるなら流石に1ヶ月じゃ足りない。1級レベルなら1ヶ月死ぬ気でやればワンチャンって感じだし。
実際日本の探索者も『暁の明星』以外は1ヶ月の指導でギリギリだった。しかも合同攻略だしね。1ギルドで攻略しようと思ったら、更なる鍛錬が必要になるだろう。
「ではこのように話を進めさせて頂きます。日本の探索者協会の方にもこちらから話を通しておきますので」
「ええ。お願いします」
俺も朝倉さんに一言連絡入れておいた方がいいかな? 他国の探索者が大勢日本に来るってなると、色々対応とかもあるだろうし。
また仕事を押し付けちゃう事になるね。
マジで過労死してしまうかもしれん。またポーションを差し入れしておこう。
「織田さんのこれからの予定は?」
「勿論観光ですよ。他国に来たらこれだけは外せません」
「それは良かったです。観光地に織田さんが来るのを国民も楽しみにしてるんですよ。そうだ、もしよろしければ大統領ともお話ししてみませんか? 探索者上がりの人で、織田さんと話してみたいと言っていたので」
「時間が合えば是非」
海外遠征に行ったら絶対有名な観光名所は行ってるからね。国民の皆さんも楽しみにしてくれてるらしい。嬉しい事だ。使徒様の好感度あげあげ大作戦が成功しているようでなによりです。
大統領さんとのお話もね。
この国に来る前にちょろっと調べたけど、探索者として結構優秀な人で、3級の狭間の攻略経験もあるらしい。
で、比較的若めの時に引退して、そこから政治に参入。あれよあれよと大統領にまで登り詰めたらしい。
俺に政治の事は分からんけど、凄い事なんじゃないかな。さぞかし優秀な人なんだろう。
そういう人と喋ると馬鹿がバレるから、なるべく遠慮したいけど、短時間なら大丈夫だと信じたい。
時間が合えばちょびっと話をしてみてもいいかもね。
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