第178話 ボス戦
「魔物には対処出来るようになったけど、ここはとにかく移動がしにくいな」
ワイバーンを粗方処理し終わった。
後は残党処理をして、ボス個体を探すだけなんだけど。とにかく移動がしにくい。
横穴とかに隠れられてると、俺が運んであげないといけないし。神田さんは短時間なら飛べるけどね。オオスズメバチには羽があるから。
「フッフッフッ〜。あたしも飛べるようになったんだよ〜」
「短時間だけどな」
それと桜も飛べるようになった。
本当に短時間だけど。糸を翼みたいにしてバサバサしてらっしゃる。そのうち雲を掴んで移動とかしそうだな。実際雲を掴めるっておかしいと思うけど。
「ボスはどこにいるんだ〜い」
「ワイバーンのボスってなんでしょうか?」
広いし歩きにくいってボス探しは難航している。まあ、俺はどこに居るか分かってるんだけどね。こうやって自分達で探すのも経験でしょうと温かく見守らせてもらってます。
ボスの正体にも大体の目星はついてる。
ちょっと強くなったトカゲ程度だし、四人で協力すれば苦戦はしても勝てるはずだ。
俺はしっかり撮影者の役目を果たさせてもらいますよ。撮ったのをそのままノーカットでアップしてるから、大村さんのと比べて評判はよろしくないんだけど。
素人と大村の動画を比べないで欲しいね。
イギリスさんは俺達がアメリカにムカ着火ファイヤーしてるのを知ってるからか、撮影者の同行すらお願いしてこなかったんだ。
探索者を連れて行くのをアメリカに対して拒否ったからか、撮影者が着いてくるのも嫌がってると思われたのかもしれん。それぐらいなら全然良いのに。俺が撮る動画より絶対良いものが仕上がっただろうにね。
「むっ! 生き残りのワイバーンを発見したぞ!!」
「全員攻撃だ〜!」
探索が暇になってきてワイバーンが出てくると嬉々として襲い掛かるようになってしまった。戦鬪狂集団みたいになってる。
「ボスだ〜!」
「がっはっはっ! 黒いな! しかもこれまでのワイバーンとは強さが全然違うように見える!」
「公君! もう少し声のトーンを落として下さいっ! 見つかっちゃいますよ!」
「もう捕捉されてるわよぉ」
そうして歩く事数時間。
中々見つからないし、今日もそろそろ撤退かなと思ってたらボスを発見した。
ワイバーンは茶色と緑が混ざったような感じの色なんだけど、ボスは真っ黒だ。
やっぱり俺の予想通りイビルワイバーンだったな。
「モンハ◯でいう亜種とか希少種みたいなもんだ。公英が言うように強さは段違いだぞ」
公英が神田さんにポコポコ殴られてる。
じゃれてるみたいな感じなんだけど、なんか微笑ましい。今の神田さんはシャコ形態なので、ポコポコというよりは、ドスドスって感じなんだけど。
それはさておき。
「! 火を吹いてきたぞ!」
「私の出番ねぇ」
猛スピードでこっちに飛んできたイビルワイバーン。今までのノーマルなワイバーンなら、そのまま急降下してきて尻尾で叩き付けたり、毒針を使ったり、噛み付いてきたりしたんだけど。
こいつは火を吐く。
ブレスみたいなもんだな。まあ、本物のドラゴンはビームみたいな感じだけど。
陽花は一歩前に出て液体を飛ばして相殺。
あれはなんの液体なんだろう。そう簡単に火を消せるのは難しいと思うんだけど。
陽花は防御だけじゃなくて、液体を操作するのも上達してるな。よきよき。
「かった〜い! 普通のワイバーンならこれで切れたのに〜!」
桜はブレスで動きを止めてたボスの翼に糸を巻き付けてそのまま切ろうとしたみたいだが失敗。ボスだからな。そりゃノーマルワイバーンよりは何かもが強い。
「でも弱点は一緒だぞ。翼膜を狙え」
ワイバーンは翼を補助にして魔力で空を飛んでいる。翼がないと空は飛べないんだよね。翼自体は硬いかもしれないけど、翼膜には結構簡単にダメージが通る。穴だらけにして飛べなくしてしまえば、後は楽勝だ。
「動きが速い〜」
「あの大きさであの速さは驚異ですねぇ」
桜は糸を弾丸のようにして、陽花は酸の液体を飛ばしてボスに攻撃するが、スルスルと避けられる。この辺の技術はまだまだだな。
相手を誘導する囮の攻撃をしたりしないと。まあ、こればっかりは経験か。
「むぅ。もどかしいな」
「私達は遠距離への攻撃手段が乏しいですからね」
公英と神田さんはボスが落とされてからが本番だ。公英にあげたガントレットは衝撃を飛ばす事が出来るけど、距離が離れたら威力は落ちるからなぁ。神田さんもオオスズメバチに変態したら、毒を飛ばせるけど即効性が薄い。シャコ形態で待機しておいた方が、後が楽だろう。
「うーむ。ピントを合わせるのが中々難しいな」
俺は俺で撮影に苦戦している。
機械オンチと、戦闘の動きが速すぎて全然ピントを合わせられない。
やっぱり今度からは撮影者をしっかり用意してもらおう。
桜、陽花ペアとボスの攻防は一進一退。
これは長引くかもしれんなぁ。
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