第175話 次の国は
「反響が凄いな」
「まさか晒されるとは思ってなかったんじゃないかな〜」
SNSにアメリカから来た攻略要請の全文を晒したら瞬く間に拡散されていった。
それはもう大炎上だ。
俺じゃなくてアメリカがだけど。
自国のアメリカ国民ですら、あり得ないみたいな感じになってるからな。
「アメリカ上層部はなんでこんな馬鹿みたいな条件を提示したんだろうな」
「最初に無理な条件を出しておいて〜徐々に条件を緩めていく〜みたいな感じだったんじゃないの〜?」
なるほど。商売とかでそういうのがあるな。だとしてもアメリカ上層部は馬鹿としか思えんが。
「そんな馬鹿みたいな駆け引きをしてる余裕はあるのかね? 自国では無理だからこっちに要請してくる訳で。俺達が下手にでる訳ないじゃん」
「そこはほら〜。だんちょ〜は優しくて温厚みたいなイメージが根付いてるから〜。そのままなあなあで押し通すつもりだったんじゃないかな〜。アメリカのメディアもだんちょ〜が既に要請をオッケーした〜みたいな流れになってたし〜」
ふーん?
まあ、なんにせよ拒否だが。
これで生半可な条件では無理では要請出来なくなったね。変な所でケチろうとするから、そうなるんだ。世界有数の大国なんだからみみっちい事しなきゃ良かったのにね。
「拒否で」
アメリカから謝罪と二回目の攻略要請が来た。その謝罪も文書のみだけど。
普通はお偉いさんがこっちに来て頭を下げるんじゃないですかねぇ。
そんで二回目の条件はペルーよりも金額が安いときた。舐めてるとしか思えない。
「誠意は言葉じゃなくて金額。素晴らしい名言だと思います」
別にもう充分にお金はあるし、前ほどお金が欲しい訳じゃない。
でもこれでオッケーしたら、ちゃんと誠意を持ってお願いしてくれたペルーに申し訳ない。
失礼な事をされてペルーよりも安くアメリカの狭間を攻略するのはありえないね。
「ちょっと傲慢かな?」
「それぐらいで良いと思うよ〜。押せば通ると思われるのも良くないし〜。実際にだんちょ〜以外は攻略出来そうにないんだから〜」
ちょっと上から目線過ぎるかなと思ったけど、桜さん的にはもっとやれ状態らしい。
なんか世間ではアメリカと絶縁かとか騒がれてるし。流石にそれはない。
アメリカと絶縁したら日本は困るぞ。
日本は他国からの輸入に頼らないと生きていけないんじゃなかったっけ?
食料とか。転生する前にそう習った様な気がする。違ったかな。
狭間から多少魔物肉が取れるとはいえ、根本的な解決はしてないと思うんだけど。
他にも色々輸入してるよね? アメリカと絶縁してもやってけるのかしらん?
武力なら最悪俺が出張っても良いけど。戦闘機ぐらいなら目を瞑ってても落とせる。核兵器はどうだろうな。結界でなんとかなると思うが。魔王の攻撃より強いって事はないだろう。
「おーい。お前ら旅行の準備しろー」
「お! 団長殿! とうとう行く気になったか!!」
「待ちくたびれちゃいましたよぉ」
ラウンジで公英と陽花がお酒を飲んでいた。神田さんはラウンジの隅っこの方で、新しい生物を観察している。かなり集中してるみたいで、俺の声が届いてないっぽい。
「イギリスに行くよ」
「むっ? アメリカでは無かったのか?」
「攻略要請が来ないもんで」
アメリカからの二回目の攻略要請をファックと送り返してから一週間が経った。
そこから音沙汰はないけど、別の所から攻略要請が来た。
「アメリカは放置だ。どうせ馬鹿みたいなのしかこないし」
「イギリスですかぁ。料理は美味しくないって聞きますねぇ」
イギリスさんはアメリカの二の舞にはなるまいとかなりの好条件で要請してきたので、二つ返事で了承。なんと女王さんからも是非お願いしますと直々にお電話を頂いたぐらいだ。かなりテンションが上がった。
「アメリカも最初から普通に要請しておけば良かったのにね〜」
「大国のプライドってやつだろ」
そのプライドで国を窮地に陥れてたら世話ねぇや。充分反省して次こそまともな条件で要請して来て下さい。
「七海ちゃ〜ん。旅行の用意だよ〜」
「ぴゃわ!」
桜が後ろから神田さんに話しかけると、びっくりした様に飛び跳ねた。
相当集中してたんだな。今回の生物は神田さんが例のゴキブリ殲滅漫画を読んで選んだ。
漫画ではカッコよかったけど、神田さんが変態したらどうなるんだろうな。
残念ながらイギリスでお披露目とはいかないだろうけど。こればっかりは仕方ないね。
観察には時間が掛かるんだ。
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