第160話 特級


 「これを見てどう思う?」


 「うーん…」


 五日後。

 ペルーに山田花子さんがやってきた。


 待ってる間はホテル近くを出歩いて、近隣の方々と交流させてもらいました。

 美味しい料理もちょこちょこ食べたりして、非常に有意義な時間を過ごせたね。


 まだ本格的な観光はしてないけど、早く色んな所に行ってみたい。

 その為にはさっさと狭間を攻略しないと。


 そう意気込んでると、山田花子さんが到着したって訳だ。もう挨拶もそこそこに、すぐに狭間の前まで連れて行ったよね。


 野次馬さん達はいつもならすぐに攻略するのに、俺達が全然狭間に入らないから不思議そんな顔をしてたけど。


 ごめんね。俺もスパッと攻略して、邪魔な狭間はさっさと撤去してあげたいんだけど。

 こっちも結構重要なもので。下手しなくても世界が一変する情報を提供しようとしてるからね。


 映像もしっかり撮らなきゃだから。


 「それで私が呼ばれた訳ですね」


 「わざわざすみません」


 日本の探索者協会にお願いして、『撮影』の能力を持ってる大村さんを借りた。

 いくら山田花子さんが禁忌を見分ける魔道具を作っても、実際に見てみない事には信用もへったくれもないだろう。


 で、どうせなら俺達の素人映像じゃなくて、ちゃんとした綺麗な映像にしてもらおうと、大村さんを呼んだ訳だ。ペルーに『撮影』の能力持ちが居たら良かったんだけどね。


 いや、いるにはいるけど、1級の狭間なんて危険な場所には入りたくないと拒否されてしまった。普通に考えたらそうか。

 大村さんがおかしいんだ。


 「いや、私だって好き好んで入りたくありませんよ。何故か日本では危険な場所専門のカメラマンみたいな立ち位置になってますが」


 うん。俺のせいだね。申し訳ない。



 「違和感があるのは分かります。いえ、言われるまでは分かりませんでしたが。言われてみればおかしいですよね」


 大村さんとお喋りしつつ、山田花子さんが計器を使って色々調べてるのを見守ってたんだけど、とりあえずの結論は出たらしい。


 「おかしいとは?」


 「次元の狭間の等級を計る時は、狭間から放出される魔力量を調べます。で、このペルーの狭間は上限いっぱいなんですよね」


 「ふむ?」


 説明してもらったものの、俺ちゃんは非常にオツムが弱いので難しい話は分からない。


 「で、織田さんはアメリカも怪しいって言ってましたよね? 狭間探知機で放出されている魔力量が分かるので、確認してみたんですけど、これも上限いっぱいの数値なんです」


 「ふむ?」


 俺ちゃんにはだから? としか言えないんだけど。とりあえず訳知り顔で頷いておく。


 「多分計測する機械の上限を上げれば解決するんじゃないですかね? この上限の数値までを1級にして、それ以上は特級とでもしておけば良いんじゃないでしょうか?」


 「ふむ」


 知りませんがな。分からないから山田花子さんを呼んだんだぞ?

 よく分からないけど、その上限を超えた計測機はすぐに作れるのかな?


 「1級以上の魔石が必要になりますね。1級の魔石じゃ、1級までしか計測出来ません。でもこれは織田さんの予想特級なんでしょう? ボスの魔物の魔石を使えば作れるんじゃないかと思います」


 ほむほむ。よく分からんけど作れるのね?

 ここのドロップ品はペルーに売ることになってるけど、金庫の中には魔石が大量にある。

 それを使えば作れるだろう。


 「狭間探知機と組み合わせれば、特級も表示出来るようになると思います。でもそれをするならあれ以上の魔石と素材が必要になりますが…」


 なるほどなるほど。

 狭間探知機と組み合わせるのか。

 確かにそれは必須だな。


 「じゃあ山田花子さんには帰ってからそれを作ってもらうとして」


 「がっはっはっは!! 待ちくたびれたぞ! いよいよ攻略だな!!」


 そういう事になるね。山田花子さんはホテルで早速素案をまとめておくらしい。

 協会の人に護衛をお願いしておこう。あの人はうちの宝ですので。


 ………万が一協会の人がフランスの時みたいに裏切ってこないとは限らないか。

 防御用の魔道具をいくつか渡しておこう。


 「腕が鳴る! 筋肉が唸るぞ!! この攻略で俺様は団長殿に指スマを勝てるまで成長してやる!!」


 うん。やる気があるのは良いことだけどね。今回の魔物はアンデッドだし、公英とは相性がちょっと悪いんじゃないかなぁ。


 むしろ陽花が聖水をぶちまけるだけで簡単に終わりそうな気もするけど。俺が魔法を使っても良いし。


 あ、でも禁忌領域…特級の初お披露目になるのか。ちょっと苦戦して見せないと、強さが伝わりにくいかも。

 思ったよりも面倒な攻略になりそう。

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