異世界帰りの憑依能力者 〜眷属ガチャを添えて〜

第161話 攻略開始

　「ぬぅ…。荒廃しておるな…」

　「何があったらこんな風になるんだろうね〜」

　禁忌領域、山田花子さん風に言うと、特級の狭間にようやく侵入した。

　桜が俺の方を見てニヤニヤしながら白々しく言ってくるが、真顔を貫き通す。

　メテオと大爆発を何発か放り込めばこうなるよ。

　「こういう狭間は初めてですねぇ。街がフィールドになってるのは、世界でも初めてなんじゃないでしょうか？」

　「面影だけでも凄い綺麗な街だったって事は分かりますねっ！」

　陽花と神田さんが周りを見渡しながら、目をキラキラさせている。

　大村さんも不思議そうにしながら、街全体を撮影してくれている。

　「確かに街ってのは初めてかもな。いつもみたいにパッと終わらせるんじゃなくて、ちゃんと探索してみようか」

　陽花と神田さんはナイスパスをしてくれた。いつもなら俺がここで魔法をドーンで終わりだが、初めてのシチュエーションだから探索する理由がある。

　これで特級狭間の危険性やら、難易度を上手く伝えられるかもしれん。まずは俺は手を出さずに、見守るスタンスでいこうか。

　「狭間とは一体なんなんでしょうね？　発生した当初から、世界中で研究されてますが、未だに詳しい事は分かっていません。とある研究者によると別世界、所謂異世界の一部が何かの弾みで地球に来てるのではと言われてますが」

　「なるほど。面白い着想ですね。こうやって廃れた街が、狭間としてこちらに来てる以上間違いではないのかもしれません」

　大村さんが撮影しながら不思議そうに聞いてくる。ってか、その研究者さん凄いな。

　ほぼ合ってるじゃん。

　俺が異世界に転移したせいで、女神が気付かない程のちっちゃい穴が空いて、俺が行った異世界と繋がって、それが地球の次元の狭間になったんだし。

　地球からしたらとばっちりなんだろうか？

　最初期は10億ぐらい人が死んだみたいし、とばっちりなんだろうな。直接的にそれだけ死んでるって事は、間接的にはもっと死んでるだろう。

　でもエネルギー不足解消の一助になってるのも確かなんだよなぁ。

　やっと狭間関連で落ち着いてきて、発展するのはこれからってところだろうけど。日本で邪魔しそうな勢力は俺が排除したしね。

　裏に潜ってる勢力はまだまだ居るだろうけど、それは表に出てきたら俺が叩けばいいし。

　海外では狭間に頼らない生活を続けたい勢力ってのが、一定数存在するしね。

　「むっ。いきなりリッチか」

　まずは入り口付近を探索してると、魔物が近寄ってくる気配を感じた。

　まだ遠目だけど、骨の魔法使いがローブをパタパタとはためかせながらこちらに来ている。

　「リ、リッチですか！？　それは織田さんが初めて攻略した1級のボスでは！？」

　素晴らしい。大村さん、素晴らしい反応だよ。おっしゃる通り、俺が1級の狭間で初めて倒したボスだな。

　それがモブとしていきなり出てきたって訳だ。これだけでも、この狭間の危険性が少しは伝わるだろう。俺が大根演技しようと思ってたけど、大村さんが素でビビる反応をしてくれて助かった。

　「そうみたいですね。入る前から違和感がありましたけど、やっぱりこの狭間はおかしいです」

　「織田さんがわざわざ入る前に調べてた、あれですね？」

　「はい。1級より攻略難易度が高い狭間が出現してるのかもしれません」

　大村さんにはある程度狭間がおかしい事は伝えてあった。それでもいきなりモブリッチはインパクトがあった事だろう。

　「ぬぅん！！」

　まず最初に仕掛けたのは公英。

　何故か一度ポージングをしてから、リッチに突っ込む。リッチは当然魔法を使ってくるが、そこは陽花が液体を飛ばして相殺。

　そして公英にも聖水をぶちまけている。

　……なんか卑猥だな。陽花の聖水。

　ドン◯とかで売ってそう。

　「ドラァァァ！！」

　公英が雄叫びを上げてリッチに殴り掛かる。リッチは障壁を張って防御するが。

　「シャコパンチ！」

　公英の背中に隠れるようについて行っていた、神田さんがモンハナシャコに変態して軋んだ障壁に更にシャコパンチ。

　破壊された障壁に桜が、束糸でしばく。

　これにも陽花の聖水が、糸に染み込ませてある。それをリッチはモロに食らった。

　流石にそれでとどめとはいかなかったが、リッチはかなり怯んだ。

　そこに陽花が聖水の雨を降らす。

　「ドラドラドラドラァ！！」

　「チャンスですっ！」

　聖水で動きが鈍った公英と神田さんがラッシュを仕掛ける。桜は糸でリッチの動きを封じ込めてサンドバッグ状態だ。

　リッチも魔法を撃ったり、障壁を張ったりして対抗しようとしてるが、魔法は陽花が相殺して、障壁は公英と神田さんが即座に壊す。

　そして約5分後。

　リッチはドロップ品に成り変わった。

　「す、凄いですね！　1級のボスクラス相手に完勝じゃないですか！！」

　「そうですね」

　確かに大村さんが言うように、連携も悪くなかったしあっさり勝ったように見える。

　これが1級なら問題なかった。

　「おーい。次が来たぞー」

　もう一度言うが、これが1級なら問題なかった。でもここは禁忌領域、特級狭間なのである。

　リッチを倒し終わった余韻に浸る暇もなく、次にやってきたのは、2体のリッチとデスナイト。

　俺の見た感じそれなりに全力で戦ってさっきのリッチは倒してたけど、今回はどうやって対処するのかな。

　中々恐ろしさが伝わる動画になりそうだ。