第159話 跡地


 「ちょっと日本からうちのギルドメンバーをもう一人呼んでも良いですか?」


 「はい? 勿論構いませんが…」


 狭間が出てペルーの協会の人に声を掛ける。追加料金とか頂かないから安心して欲しい。ただ山田花子さんにこの狭間を見てもらいたいだけなんだ。


 新しく狭間を計測する機械を作ってもらうにも、実際に禁忌領域を見てもらわない事にはどうしようもない。

 アメリカから要請があったら、山田花子さんについてきてもらおうと思ってたけど、まさかペルーにも禁忌領域が出現してるとは。


 嬉しい誤算ってやつだね。

 って事で早速山田花子さんに電話。


 「もしもし? 山田花子さん。ちょっとペルーに来てくんない? 迎えはよこすからさ」




 「さて。山田花子さんに来てもらえる事になったけど、それまでどうしようか」


 急にペルーに呼び出す事になった山田花子さんには申し訳ない事をした。

 かなりテンパってたからな。ごめんやで。


 「それよりも中はどんな狭間だったの〜?」


 現在は用意されたホテル。

 みんなで大量のルームサービスをつつきながらお話し中である。陽花はお酒をカパカパと飲んでるけどね。


 「俺が昔爆撃した異世界最大の宗教国家の跡地だな」


 「あ〜。前に言ってたところだね〜」


 そうそう。後で面白いもんでもあるかと、探索するために結界を張ったけど、色々あって放置して忘れてた場所だ。

 お偉いさん達がアンデッドになって彷徨ってるぞ。しかも、無駄に実力主義に傾倒してる国だったから、お偉いさんは大体武闘派。普通に強い。


 「なんで放置しちゃうかな〜」


 「あの時は忙しかったんだ」


 魔王四天王と戦いながら、足を引っ張ろうとしてくるこの国の対処をしたりしてて。

 で、なんやかんやしてたら忘れてたって感じだ。


 天使姿の時は滅茶苦茶協力してくれてたのに、悪魔姿を見せた途端敵になったからな。

 いやーあの時はめんどくさかった。

 

 俺の事をどうこう言うのは、好きにしてくれたら良いけどね。こっちが必死に魔王軍幹部を倒そうとしてるのを邪魔するのは許せない。こっちは関係のない世界を救うために頑張ってるんだぞ?


 性悪女神のご褒美につられただけだが。

 異世界転移したのも、厨二病を拗らせてただけだが。


 理由はさておき、頑張ってたのにさ。

 邪魔しちゃいけないよねぇ。爆撃されても仕方ないと思います。その後にちゃんと死体処理して浄化でもしとけば、こんな事にならなかったんだけど。なんなら、俺が忘れずに探索して処理しておけば、ペルーには1級の狭間自体が出現しなかったかもしれない。


 「まっ、結果オーライだな。俺はこっちでお金を稼げて、新しい魔道具を作る為の参考に出来る」


 「ペルーの人達からすると迷惑なだけだよね〜」


 そこはほら。俺が来たって事で。なんか俺が他国に行くと結構経済が動くんでしょ?

 流石に自惚れすぎ? でもそんな事を言ってたしなぁ。


 「まぁ、狭間はそんな感じだ。で、山田花子さんが来るまで攻略出来ないし、暇になった訳なんだが」


 「観光する〜?」


 うーん…。後に予定が控えてるのに、素直に観光を楽しめるのか…。

 台湾の時みたいに、時間制限があるとどうしてもなぁ。いや、あれはあれで楽しんだけど、どうせなら攻略してから観光したい。


 「近くで美味しい料理を食べるだけで我慢するか」


 「そうだね〜。ペルーは美食で有名らしいし〜」


 「私観光雑誌持ってきますねっ」


 うむ。美味しい料理を食べながら山田花子さんを待つとしよう。

 なんならペルーの人達と交流するのもいいな。南米なんて来るの初めてだし。


 アマゾンとかも行ってみたいなぁ。

 異世界の森と比較してみたい。危険度は流石に向こうの方が上だろうけどさ。

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