第153話 禁忌領域について


 「なるほど! 織田さんは異世界へ旅立ってたんですね! 凄いですっ!」


 とりあえず一通り説明した。相変わらずよいしょしてくれる。凄く気持ちいい。

 滅茶苦茶すんなり受け入れられて、こっちとしては拍子抜けなんだけどね。

 『シークレット』で揉まれすぎたか。精神的に成長して、ちょっとやそっとの事じゃ驚かなくなっちゃってる。異世界転移って結構な事だと思うけど。


 「織田さんが苦戦した魔王に、面倒な禁忌領域ですか…。禁忌領域については公表した方が良いんじゃないですか?」


 神田さんは相変わらず肉やらをパクパクしながら鋭い意見を言ってくる。俺もそれはずっと思ってた事なんだよね。

 日本で1級を攻略して、いずれ俺なしで攻略する事にもなるだろう。その時に禁忌領域にぶち当たったら、被害はかなり出る事になる。


 今のアメリカみたいにね。

 そうなる前に1級より更に上があるって事を公表した方が良いってのは分かるんだが。


 「なんて言うべきかねぇ。禁忌領域の攻略映像を流して、1級より上があるって事を周知するか…」


 でもなぁ。禁忌領域にも当たり外れがありまして。魔族に当たったら、俺は高確率で悪魔に憑依する。魔法が効かないし。それはそれで面倒なんだよねぇ。


 「今更だんちょ〜が悪魔に憑依しても評判は変わらないと思うけどね〜。それだけの貢献はしてきたと思うな〜」


 桜がポテをわしゃわしゃしながら嬉しい事を言ってくれるけどね。絶対宗教勢力が騒ぐぞ。

 異世界みたいに。あいつら天使の時は持て囃してきたくせに、悪魔に憑依した姿を見せると手のひらグリンだからね。異端者だーとか。あほかて。

 ちょびっとむかついて首都を爆撃しても仕方ないと思うんだ。ちゃんと人は避難させてからやりました。一般人を殺すほど堕ちてないからね。


 「宗教ってほんと面倒だよね〜」


 「神に会った事あった身からすると、宗教関係者の方がよっぽど異端なんだけどな。存在しない神を崇めてるんだし」


 まぁ、俺が会った事ないだけで、本当にそういう神がいるのかもしれんが。

 でも地球の神だっていう、ロリ女神は実際存在する訳で。嘘ついてなかったらだけど。


 「そういう事があるからめんどくさいなーって」


 「それなら新しく狭間の等級を計る魔道具でも作れば良いのでないか? 狭間探知機を作った山田花子殿にお願いすれば出来る可能性はあると思うが」


 マンガ肉を両手に持って豪快に食べていた公英が賢い事を言い始めた。

 こいつ、脳筋のくせにたまに鋭い事を言うのはなんなんだろうな。解釈違いも甚だしい。

 芸術に精通してたりと、今日は公英のキャラぶれが激しいぞ。


 「信じてもらえるかが重要ですねぇ。新しい難易度の狭間を一度は攻略して映像にしてから信じさせないとぉ」


 「ふむん。結局は一度映像を残さないといけない訳か。禁忌領域は明らかに難易度が違うのだろう? アメリカ辺りは直接体感してるだろうし、信じるのではないか?」


 ちょっとちょっと。賢そうな会話するのやめてくれる? 俺は馬鹿なんだから。あんまり難しい話はついていけないよ?

 分かりやすく説明してほしい。


 「だんちょ〜はなんとか一回は悪魔に憑依せずに禁忌領域を攻略して〜。1級より難しい狭間があるんだよ〜って分からせてくれたら良いんだよ〜。多分アメリカは乗ってくると思うな〜。1級より難しいのを攻略してたんだからある程度面目はたつって考えそうだし〜」


 ふむ。それで今までに出た犠牲をなぁなぁにしようってか? クズだな。

 いや、禁忌領域がある事をもっと早くに公表しなかった俺の方がクズか。

 どう公表するか思い付かなかったって言い訳はあるけど、悪魔に憑依した姿を見せたくないっていう自分の保身の為だしな。


 「じゃあ山田花子さんに早速お願いして…。実際に禁忌領域の狭間を見てみないとどうしようもないか」


 「そうだね〜。アメリカから攻略要請があったら連れて行けば良いんじゃないかな〜」


 ふむ。明日にでも伝えておこう。

 アメリカ以外にも禁忌領域が出てたら、そこを調べても良いだろう。ニュースを見てる感じだと、はっきり禁忌領域だって分かるのはアメリカだけなんだけど。特徴的だったし。


 「よし。そろそろBBQは終わりにするか」


 「金庫整理も途中だしね〜」


 だな。ついでに金庫を神田さんに見せてやろう。

 もしかしたら武器に興味を持つかも。

 テラフォーマー○も、専用武器とかあったし。

 何か装備したがるかもしれん。


 

 「はわわ! 凄いですっ! カッコいい武器がたくさんっ!」


 「せやろせやろ」


 金庫に案内した神田さんは武器を見て目をキラキラさせてらっしゃる。

 こういうのに興味あるんだな。小動物みたいな感じだから可愛いもの系が好きなもんだとばっかり。

 人を見た目で判断したらダメって事ですわ。


 「ここって警備はどうなってるんですか? かなりの貴重品だと思うんですが」


 「一応銀行の金庫並みになってるけど。最終的には魔道具と俺の結界を張っておこうと思ってる」


 『地震に負けない』にここの防御力はそれなりに作ってもらってるんだけどね。

 それだけじゃ不安ですし。魔道具の俺の結界の二段構えで守らせて頂きます。まぁ、そんな事するぐらいなら、アイテムボックス内に入れとけよって話なんだけどね。


 せっかく整理整頓出来たし。

 まぁ、いいでしょ。

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