第152話 神田さん参戦


 「ねぇねぇ〜。どうせなら今から配信しな〜い?」


 「えー。食材の事とか突っ込まれそうで面倒だし、神田さんを今回呼んでないから可哀想かなーって思うんだけど」


 異世界系の事が絡むとどうしてもね。

 別に神田さんに言っても問題ないんだけど、言う理由もないっていうか。


 「でもさ〜。これからもこういう会を開く時に毎回仲間外れは可哀想じゃな〜い? 戦闘部隊に入って大体行動を一緒にする事になるんだし〜。言っておいた方が何かと良いんじゃないかな〜ってあたしは思うけどな〜」


 ふむ。確かに今回のBBQに限らず、こういう異世界系の遊びの時に毎回仲間外れは可哀想か。

 俺達だけで楽しいを共有して、神田さんが知らないってのもな。気にしないかもしれないが、これが不和の種になっても困る。だって俺が逆の立場なら滅茶苦茶気にするし。

 それはもう拗ねまくるね。織田天魔君は面倒な性格をしてるのです。


 「私も呼んで良いと思いますけどねぇ。七海ちゃんがそう簡単に秘密を漏らすとも思えませんし。短い付き合いですが、それは団長さんも分かってるんじゃないですか?」


 「俺様も賛成だな!! あやつは一本芯の通った良い奴である!!」


 うむ。なら呼ぼうか。

 金庫整理してる時はガチャ組以外に言う気はないとかうんたらかんたら思ってたけど、前言撤回させて頂きます。


 俺は自分の言葉をすぐに撤回出来る男なのだ。それが良い事なのか、悪い事なのかは時と場合によると思うが。



 「うわぁ! 皆さんでBBQやってたんですね!」


 はい。って事で、ギルドで熱心に次の変態先を観察してた神田さんをBBQ会場の庭にお呼びしました。ここまでのプライベートゾーンに呼んだのは、神田さんが初めてですよ。

 是非是非楽しんでって下さい。なんなら途中参加になってしまって申し訳ない。


 「こ、このお肉凄いですっ! 味もさることながら、このお肉の断面!! 美しいでありまする! ああっ! お口の中でお肉が溶けて無くなっちゃいましたっ!」


 すんげーハイテンション。

 食レポも澱みなくてパーフェクト。

 ほんと、神田さんってモチベーターの役割させたら凄いよね。裏表なくよいしょしてくれるし、こんなに喜んでくれたら、もっと食べてって思っちゃうよ。


 「はわわ! このイカも凄いですね! 噛めば噛むほど味が出てきます! わさび醤油で食べると美味しいっ! こんなの初めて食べましたよー!」


 ベヒモスの肉を堪能した後はクラーケンへ。

 恍惚とした表情で、かなり美味しそうに食べてる。はてさて。いつこの素材の事について話そうか。とりあえず食べてもらってからって思ってたんだけど、予想以上に神田さんのテンションが高い。


 「七海ちゃんは可愛いね〜。ほらほら〜。もっと食べてよ〜。他にも色んなお肉やお魚、野菜もあるよ〜」


 「わっ! 良いんですか!? この漫画に出てくるお肉も気になってたんですっ!」


 それはもうリスみたいに口の中に食材を溜め込んで、どんどこ桜の勧められるがままに、食べていく神田さん。あなたも結構凄い胃袋してますよね。

 俺達の食欲についてこられるって相当だと思いますよ。


 「こんなの食べた事ないですっ! 一体なんのお肉なんですか?? はっ!? これがもしかしてA5ランクというやつなんでしょうか…」


 一通り出されてる食材を食べた神田さんは、軽く落ち着いたのか、ようやくこれはなんなのかと気になり始めた。

 随分遅かったなと思うけど、そんなもんかな?

 まぁ、俺も美味しかったらなんでも良いやって思うし。あんまり気にしないもんなのかも。


 「最初に食べたのはベヒモスだな。そのイカみたいなやつはクラーケン。漫画肉はドラゴンだ。他にも、リヴァイアサンとか、バジリスクとか色々あるけど」


 まぁ、丁度良いのでサラッと食材についてカミングアウト。ここから異世界の事を説明出来たらなーなんて思ってたんだが。


 「はわー。凄いですっ! ドラゴンなんて初めて食べました! どおりで美味しい訳ですね!」


 「うん?」


 「クラーケンってイカだったんですね! 私、てっきりタコだと思ってましたっ!」


 「およよ?」


 「ベヒモスはあいにくと存じ上げませんが、このお肉が私は一番美味しかったですっ!」


 あらら? 素材については疑問に思わない感じ?

 今挙げた食材は現代では存在しない筈の魔物達の素材なんだけども。

 なんか当たり前の様に受け入れちゃってない?


 「あ、あの--」


 「七海ちゃんはこの食材について疑問に思わないのかな〜?」


 おお。桜さんが俺が今まさしく聞こうとしてた事をズバッと聞いてくれたぜ。

 流石桜さん。そこに痺れる憧れるーつって。へいへいほー。


 「? ドラゴンとかの事ですか? 確かに不思議だなーとは思いますけど。織田さんの事だし気にしても仕方ないかなーと思ってます。戦った事もないような1級の魔物やボスの情報について詳しかったりもしますしねっ」


 「なるほど〜」


 桜はうんうんと頷きながら俺の方をチラッと見てくる。どうするのかと目で聞いてきてるな。

 うん。どうしようか。なんと気にしても仕方ないと思われてるとは。


 まぁ、そうだよね。普通に考えたらおかしいもん。よそのギルドも疑問に思いながらスルーしてくれてたんだろうなぁ。

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