第149話 アイテムボックスの整理


 「なんだ、みんな来たのか」


 「気になるも〜ん」


 ずっと後回しにしていたアイテムボックス内の整理をしようと、金庫の部屋にやって来た。

 リビングやらラウンジやらで他の面々は何かしらをしてたんだけど、全員着いてきた。

 神田さんは居ないが。異世界の事をガチャ組以外には言う気はないし。


 「異世界のお酒とかないんですかー?」


 「俺様は異世界の筋トレ器具が気になるな!!」


 なるほど。陽花の要望には応えられるかもしれんが、異世界の筋トレ器具なんてありませんよ。

 向こうに筋トレの概念があったのかすら怪しい。

 自然に鍛えられていくし。『筋肉増強』の能力持ちも自重のみで鍛えてたような気がするし。


 「さて。まずは当分表には出せない素材シリーズから」


 A級ぐらいなら誤魔化せるけどね。

 1級の狭間ですらB級なんだ。それ以上の素材は当分死蔵する事になるだろう。

 1級以上の狭間が出て来たらまた考えよう。


 「あ、禁忌領域があるから誤魔化せるか」


 「でも禁忌領域もだんちょ〜が何回か攻略しないと素材を持ってるのは不自然だよね〜」


 それもそうか。やっぱり当分は死蔵で。


 「ふむ! この鱗は凄いな!! 壊せる気がしないぞ!」


 「グリーンドラゴンの鱗か」


 懐かしい。俺が初めて討伐した竜種だ。

 あの時は死にかけたなぁ。まだまだへっぽこだった天魔君だったから。悪魔にすら憑依出来ない時だ。討伐するのに丸一日掛かりました。


 「それ加工して武器防具にすると1級ぐらいなら簡単に攻略出来るだろうな」


 「ドラゴンさんは凄いですねぇ」


 まぁ、道具に頼った実力は認めないが。

 武器防具に頼りすぎたらロクな事にならないからね。異世界にも武器防具で過信して、すぐに死んでいった奴は結構いるからな。

 だから俺はこういうのは現代でも提供しないようにしてる。実力がついてきたら考えるけど、実力があるなら自分でとってこれるよねって話だ。


 「うわ〜。この羽すっご〜い。なんかキラキラしてるよ〜」


 「フェニックスの羽だな」


 そいつは結局討伐出来なかった。

 てか、フェニックスとはお友達だ。最初は討伐しに行ったんだけどね。

 中々どうして話の分かる奴で。魔の森の奥の方に住んでるぞ。俺が素材集めるのが好きって知ってるからか、たまに抜け落ちた羽とかを持って来てくれるんだ。元気にしてるだろうか。お別れの挨拶してないんだよね。まぁ、いつでも戻れるからあんまり気にしてないが。性悪女神が上手い事言ってる事を祈る。


 「この禍々しい液体はなんですかぁ。私でも取り込もうと思わないですねぇ」


 「おっと。それはいけねぇ」


 ベヒモスさんの血液ですね。

 飲めば不老不死になれると噂らしいですぜ。

 絶対嘘だが。こんな禍々しいのを飲むとかありえん。大体、俺は何故か不老だし。

 何かに使うかとずっと死蔵してるんだが、一生使う機会はなさそう。肉はべらぼうに美味いんだけどな。なんで血液はこんなに禍々しいんだか。


 「ふむん。表に出せない素材はこんなもんか」


 「多いよ〜。素材だけで部屋が埋まりそうじゃんか〜」


 そりゃな。俺の異世界300年の努力の結晶だぞ?

 魔王を討伐してからは引きこもってたが。それでもごく稀に活動してたしね。


 「他にもあるんでしょ〜? もう置くスペースがないじゃ〜ん」


 「困ったな。まだ魔道具やら武器防具、薬とか金銀財宝もあるんだが」


 因みにこの辺は劣化したりしない。

 魔法処理がされてるからね。

 便利な言葉だぜ。


 「だんちょ〜は空間拡張系の魔道具持ってるんでしょ〜? それ使うか〜魔法鞄に素材毎に分けて入れて置くかだね〜」


 「魔法鞄に分けようか」


 いっぱい持ってるし。

 鞄型だけじゃなくて、ピアス型、指輪型、腕輪型と。一時自分磨きと素材集めの為にダンジョンに入り浸ってたから。


 「カッコいい素材だけは飾っておこう。このドラゴンの魔石とか迫力があっていいだろ」


 「じゃあ私が分類してってあげる〜。魔物のタイプ毎に分けようかな〜」


 「俺様はカッコいい素材の選別をしてやろう!」


 「私は桜ちゃんを手伝いましょうねぇ」


 それからは俺と公英が飾る素材の選別、桜と陽花がそれ以外の整理をして三時間。

 ようやく素材整理が終了した。


 「思ったよりも時間が掛かるな」


 「だんちょ〜が溜め込み過ぎなんだよ〜。フェンリルの涎とか絶対いらないよね〜」


 分かんないじゃん。もしかしたらフェンリルの涎が必要になるシチュエーションがあるかもしれないじゃん。俺はそういう時に焦らないようにするために、ありとあらゆる素材を集めてるのだ。


 「公英って意外に美的センスがあるよな」


 「当たり前だ! 筋肉とは芸術である!! 筋トレをしてると自然と養われていくものだ!!」


 ちょっと何を言ってるか分からないが。

 ブラックラグー○のダッ○みたいな見た目して。

 かなりセンスが良いんだよね。


 綺麗に飾られたドラゴンの爪。

 フェニックスの羽に、ギャラクシースライムの真核。ヴァンパイアの血液に、ノーライフキングの頭蓋骨。リヴァイアサンの牙、バジリスクの目玉、グリフォンの尻尾。


 錚々たる魔物の顔ぶれである。

 どれもこれも討伐するのにかなり苦労した。

 フェニックスは討伐してないが。


 「こんなのを倒してるんだからだんちょ〜が現代をヌルゲーって言うのが分かるよね〜」


 まぁね。ってか、こんなのが束になっても敵わなかったのが魔王なんだが。

 ほんとあいつはイカれてたなぁ。


 


 

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