第128話 多種多様


 その後も各ギルドが問題なく、サンド・シャークを倒していく。

 砂漠の戦い方に慣れながらだから、若干ぎこちなくはあるけども、そこは俺がブートキャンプで鍛えた猛者達。回数を重ねる毎に動きはどんどん良くなっていく。


 「お、新しいの来たな」


 やってきたのはウネウネとした巨大なミミズ。

 所謂ワームってやつだな。デザート・ワーム。

 これは確かB級の魔物だったはず。強さはそうでもないんだけど、再生力が中々。

 倒すのに時間が掛かって、かつ実入りが悪いと異世界では不人気だった魔物だ。


 「がっはっはっは! サンドバッグだ!」


 公英が能力を使って、馬鹿みたいなフィジカル任せの一撃を加える。

 あいつが、武術習ったらいい線いきそうなんだけどなぁ。習う気はあるみたいなんだけど、どれにするか迷ってるらしい。

 それらしいのを全部極めちまえと思うが。


 「ほう! 殴っても殴っても再生するぞ!」


 公英の能力は時間が経つ毎に身体能力が上がっていくピッタリな能力だ。

 パンチで頭を吹き飛ばして、再生されたらまたパンチ。そのスピードがどんどん上がっていく。


 「たんぽぽちゃん体液まみれだよ〜。ばっちいね〜」


 それな。ムキムキ色黒スキンヘッドマッチョマンの体液まみれの絵なんて誰得なんだよ。

 ………安藤さんの視線が怪しい。

 俺は見なかった事にしておく。しゅ、趣味は人それぞれだからね。俺は応援するよ、うん。


 「浄化」


 それはそれとして。

 撮影中なので絵面がまずい。

 しっかりキレイキレイする。


 「再生力が厄介ですね。燃やして再生阻害が出来るのか試してみましょう」


 稲葉さんが公英の戦いを見て感想を述べる。

 そうなると出番は『風神雷神』だ。

 魔法使いを多数抱えてる魔法のスペシャリスト達である。俺から見ても中々悪くない出来に仕上がっている。魔力量がもう少し増えれば、殲滅力はもっと上がるだろう。


 最近では前衛のスカウトにも力を入れてるらしく、東京探索者学校の一年生ながら『百獣化』という面白い能力を持っていた女の子が既に内定してるらしい。まぁ、俺が紹介したんだけど。


 でも『百獣化』って『変態』でも出来るんだよねぇ。神田さんが観察すればの話だけど。

 虫とかの方が強いからそっち優先になっちゃうけどね。虫が人間サイズになると強いのは、分かりきってる事だしね。

 女の子からしたらビジュアルに問題ありだけど。



 「生半可な火力じゃ」


 「再生されちゃうねー」


 5分ほど時間を掛けて倒し切った毛利姉妹の感想である。二人だけで戦った訳じゃないけど。

 二人が言うように、軽く炙った程度じゃすぐに再生する。炭化させるぐらいじゃないとな。

 勿論俺は知ってたけど、こういうのは自分達で攻略法を見つけるのが大事だからね。

 いつか自力で攻略する時にも役に立つだろう。


 「じゃ、どんどんいきましょう」


 発生したてで時間はいっぱいあるんだ。

 他国から要請されても、俺なら一日で攻略出来るから焦る事はあるまいて。

 日本の探索者のレベルアップ の為にここは骨を折る場面。根気強くやっていこう。



 「お疲れ様でしたー」


 「「「………」」」


 昼前に狭間に入り、時刻は大体18時ぐらい。

 俺の腹時計での話だが。お腹が空いてきたから多分そんなもんだろ。

 砂漠でひたすら戦い続けたせいで、全員バテバテである。桜達『シークレット』組も肩で息をしている。


 「この絵面…大丈夫でしょうか…」


 「問題ない問題ない。モーマンタイってやつよ」


 せっかくみんな揃ってるんだしと、ここでも育成しようと思ってさ。

 適当に砂漠を刺激して四方八方から魔物を呼び寄せる事にした。焦らず根気強くやるとはなんだったのか。どうも。自分の言葉に責任を持たない男、織田天魔です。よろしくどうぞ。


 勿論死にそうになったら助けられるように俺がいつでも出れるようにしたが。

 しかし、それは俺が言ってないもんだから、みんなは必死である。倒し切れそうになると、また適当に刺激して呼び寄せる。

 中々良い訓練になったね。


 大村さんはこの絵面をアップしていいのか、迷ってるみたいだけど。

 じゃんじゃんアップするべきだよ。将来的には俺の手助け無しで攻略出来るようになってほしいが、1級攻略が簡単と思われて無謀な特攻をされても困る。華々しい活躍だけじゃなくて、苦労してるシーンもしっかり見せないとね。


 「それにしても魔物は多種多様だな」


 最初のサメに始まり、ワーム、ワニ、サソリと面白いぐらい種類が出た。

 新しい素材がたくさん手に入って、日本は更に潤うな。よきかな。


 「疲れた疲れた疲れたよ〜。牛丼食べないと力が出ないよ〜」


 「お酒が飲みたいですねぇ…」


 「プ、プロテイン…。俺様にプロテインを…」


 「ぴ、ぴゃ…」


 ダメだ。みんな本当に疲れてるみたいだ。

 俺のぼやきに答える事なく、みんなが好き放題喋っている。他のギルドも同じ感じなので、今日はこの辺で切り上げるとしようか。


 「明日攻略するかは疲労度を考えてからにしましょうか。砂漠の暑さ対策もありますし」


 間髪入れずに全ギルドから賛成の声が返ってきた。余程疲れてるみたいだね。

 初の1級って事で気を張ってたのもあるかも。

 みなさんお疲れ様でした。

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