第127話 砂漠


 「あっつ」


 とうとう1級の狭間に突入した。

 入った瞬間、灼熱。

 見渡す限り砂。どうやら砂漠らしい。

 俺はすぐさま反転で適温を保ちつつ、狭間に全員が入ってくるのを待つ。


 「あっつ〜い!!」


 「ぴゃわー!」


 「これは私と相性が悪いですねぇ」


 「俺様の筋肉は暑さになぞ負けん!!」


 続々と入ってきたメンバーが感想を言う。

 他のギルドも同じ様な感じだ。面倒なフィールドに当たっちゃったなぁ。

 しっかりフラグを回収しちゃって。


 「さて、どうしましょうか。これは戦闘云々の前に環境に適応出来るかが重要になりますよ」


 俺はすぐさま全てのリーダーに集合してもらい、これからどうするか話し合う。

 カメラマンの大村さんなんて既に死にそうだ。


 「クーラードリンクが欲しい」


 モンハ○の世界ならあれで全て解決出来る。

 暑いってのは本当に立ってるだけで体力が奪われるからなぁ。

 しかも砂の上での戦闘は、思ってるよりもしんどい。


 正直、俺が魔法で結界を付与すれば終わりなんだが、それじゃあ俺が居ない時に困る。

 俺が居なくなっても攻略出来るようにならないといけないんだしね。


 「何か対策ありますか?」


 「うーん。ある程度の暑い寒いならなんとかなるんですけど…」


 稲葉さんはここまで暑いとあんまり打つ手がないらしい。

 他の面々も似た様な感じ。1級に入っていきなり躓いちゃったな。

 とりあえず今にも死にそうな顔をしながらも、必死に撮影してくれている大村さんにだけは結界を張っておく。この人は戦闘員じゃないからね。


 「俺が居れば対処は出来ますけど、その場凌ぎにしかならないですからね。毎回皆さんの攻略についていく訳じゃありませんし」


 うーん。どうしたもんか。

 とりあえず今日の所は俺の結界でなんとかするとして、対策は後日にした方が無難か?

 あんな盛大なセレモニーをして、入ってすぐに出たら赤っ恥も良い所だろう。


 「リーダー組だけ一瞬外に出ましょうか? それぞれ抱えてる生産系能力者や提携してる生産ギルドに連絡して対策を考えてもらいましょう」


 狭間の中では電波が通じないからね。

 次元が違うからそりゃそうなんだけど。

 いつか山田花子さんが開発してくれないかな。

 今度お願いしておこう。




 って事で気を取り直して攻略。

 リーダーがぞろぞろと狭間から出てきて野次馬はびっくりしてたけど、関係なく電話だけして狭間に戻ってきた。


 「うーん。ここはどこだろ。向こうにも砂漠はいっぱいあったからなぁ」


 誰にも聞こえないようにボソリと呟く。

 俺が居た異世界と繋がってるみたいだし、見覚えがあるかなと思ったけど、砂だけじゃ分かりませんわ。


 「何か来ます!」


 どこかのギルドの斥候さんが声を上げる。

 砂を見るとヒレだけぴょこんと出た存在が、こちらに複数向かってきている。


 「音爆弾投げたら飛び跳ねそう」


 いかんな。最近モンハ○ばっかりやってるから、思考が全部そっちに行ってしまう。

 気を引き締めねばなるまい。……ちょっと山田花子さんにお願いして作ってもらいたい気持ちはあるけども。


 1級攻略の記念すべきファーストアタックは協会勢力だ。これは別に政治が働いたとかそんなんじゃない。公平にじゃんけんで決まった。


 そして魔物が砂から姿を現す。

 見た目はまんまサメだな。大きさは3mぐらい。

 サンド・シャークか。これ、C級だったような気がするんだけど。1級に出てくるのは役不足のような?


 「ハッ!」


 俺が首を傾げてる間に戦闘が始まった。

 砂から飛び出してきたサメを、一ヶ月の地獄でフィジカルモンスターになった真田さんが叩き落とす。そして他の面々がそれを攻撃してる間に、真田さんはまた別の個体へ。

 それを繰り返す事四回。戦闘が終了した。


 「うーん。やっぱり弱いよね。2級レベル」


 真田さん達をディスった訳じゃない。

 これが1級の魔物なら苦戦せずに倒せるなんて、ほぼあり得ないんだ。それなら俺が現代に返ってくる必要はなかった。


 「複数の種類がいるタイプかもね〜」


 「それが濃厚か」


 アンデッドの時みたいなもんだな。

 色んな種類の魔物が出てくるパターン。

 単一種族だけの方が楽なんだけどな。攻略法さえ分かればそれである程度なんとかなるから。


 砂漠のB級って何が居たっけな。

 頭に『デザート』とか『サンド』とかつけてたらなんでもありだからな。

 デザート・ゴブリン、デザート・オーク、デザート・オーガ。

 単に砂漠という環境に適応しただけで名前が変わるから。強さは元の種族と大差ない。

 だから俺が何を言いたいかと言うと。


 「どんな魔物が出てくるか予想出来ないって事ですな」


 眼前で戦ってる面々を見ながら大村さんと喋る。

 今は『MMM』が戦っている。

 この筋肉ギルドは意外に思うかもしれないが、魔法使いも普通に在籍している。ムキムキだが。

 動ける魔法使い、移動砲台ってやつだな。

 だから『MMM』って意外にバランスが良くて強いんだよな。暑苦しいけど。砂漠のせいで効果2倍だ。


 「むぅ! やはり足がとられるな。これは砂上での効率的な戦い方を模索せねばなるまい」


 サメを拳で叩き潰した武田さんが苦い顔をする。

 まぁ、動きは鈍かったよね。相手が弱かったから良かったものの。1級クラスの魔物なら苦戦必至だった。


 「とりあえず全ギルドが一回戦ってからだな」


 今回の攻略は思ったより時間が掛かるかもな。

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