第124話 ぼっち
「こ、こんな高級店に私が来る事になるなんて…。私は感動してまする!」
「七海ちゃんは可愛いね〜」
旅行グッズやらを買うぞとやって来たのは、フランスに行く前にも爆買いしたブランド店が多く建ち並んでいる場所。
最初は俺が全部買うよって言ったら恐縮してた神田さんだが、いざ店に来ると目をキラキラさせている。なんかほんとにお上りさんって感じだな。
「それではここに! 『シークレット』散財祭りの開催を宣言する!!」
「やった〜! 七海ちゃん早速見に行こうよ〜」
「どこまでもお供しまする!」
俺の開催宣言と共に桜と神田さんはとある店に突撃して行った。ここからは自由行動って事にしてるからね。桜にカードは渡してあるから大丈夫でしょう。
「さて、公英もどこ行ってもいいけど、正装になるような服は2.3着は買う事。後は旅行に必要なものを買ったら自由に散財してくれ」
「がっはっはっは! 了解したぞ! セレブの気分を楽しんでくるとしよう!!」
「きみちゃんが心配なので私も着いていきますねぇ」
「あ、じゃあよろしく」
ドシドシとどこかの店に向かう公英に陽花は着いて行った。公英とは対照的に綺麗な歩き方をしてらっしゃる。
「およ? 俺一人か」
あれよあれよと一人ぼっちに。
これ、五人組いくない。
二人一組になると仲間外れがでちゃうじゃん。
「しゅん」
この悲しみは爆買いでしか解消する事は出来ん。
お金は使ってなんぼなのである。
日本の経済にこれでもかってぐらい貢献してやるぜ! よーし! 買うぞー!!
「楽しかったね〜」
「はい! 金銭感覚が麻痺してしまいました!」
「スーツというのはキツくていかんな!!」
「きみちゃんは体が大きいですから」
昼から開始した爆買いは日が沈むまで続いた。
みんな自宅に送ってもらうようにしておいたらしく、手ぶらだが満足気な顔をしている。
いや、公英はスーツの採寸に苦労したみたいだけどさ。そりゃ2mは優に超えている身長に馬鹿みたいに発達した筋肉。
採寸した人が気の毒だ。
俺はというと、適当にブランド店で目についた商品を買って、その後はゲーセンに行った。
いや、思ったよりも寂しかったんだよね。
爆買いしてもなんか虚しいだけだった。
だから少し足を延ばしてゲーセンにまで行って、ファンの方々に遊んでもらった。
可哀想だと言うなかれ。
俺は非常に有意義な時間を過ごしたと思ってるし、いつも以上にファンサービスに力が入った。
「晩飯はどうする?」
「吉野さ〜ん!」
「鳥貴品」
「玉将!!」
「焼肉! …は、この前行ったのでお寿司が良いですっ!」
相変わらず。相変わらずですよ、こいつらは。
なんか神田さんが一番高いところをチョイスしてるのに、可愛く思えてくるのはなんでなんだろう。
これが小動物効果か。
「じゃんけんしてくれ」
俺がそう言うとバチバチと視線で会話する四人。
たかだか晩飯でそんなにガチにならないでほしいよね。どのチョイスでもいつでも行けるし。
「「「「じゃんけんぽい!」」」」
そして勝負は一発で決まった。
「あー、とりあえず餃子を三十人前お願いします」
やって来たのは玉将。
席についてとりあえず餃子だけは頼んでおく。
「たんぽぽちゃんがチョキを出すなんて〜」
「ぜ、絶対にグーだと思いましたっ」
「悔しいわぁ」
玉将に来てる事から分かる通り、結果は公英の一人勝ち。みんな公英がグーを出すと思ってたらしい。因みに俺も思っていた。
脳筋はグーを出すって古事記にも書いてあるんだけどな。無駄に知恵を働かせたみたいだ。
「がっはっはっは! 俺様だって少しは考えるぞ!!」
「とりあえず他に注文するか。俺が適当に頼んで良いか? 他に欲しいのがあったら、各々頼んでくれ」
店員さんを呼んで注文する。
「ニラレバ、エビチリ、肉と卵のいりつけ、豚キムチ、チンジャオロース、八宝菜、野菜炒め、皿うどん。これ、全部十人前ずつ下さい」
俺はメニューを流し見して、とりあえず美味しそうなモノを片っ端から注文する。
店員さんはびっくりしたような表情をしていたけど、ぴこぴこと手元の機械で打ち込んでいく。
「唐揚げ、海老天、春巻き、チューリップ、油淋鶏。これも十人前ずつお願いします」
「ラーメンの全種を大盛りで五人前ずつ。ご飯モノも全部大盛りで五人前ずつお願いします」
とりあえずこんなもんだろ。
俺達はどいつもこいつも大食いだからな。
「足りるかな〜?」
「足りなかったらまた頼みましょうね。あ、すみません。生大を三つお願いします」
桜は足りるか心配してたけど、足りなければ追加すれば良いんだ。
一回しかチャンスが無い訳じゃないんだし。
陽花は相変わらずお酒を注文。生大を三つ。
これがとりあえずなんだから恐ろしい。
俺ちゃんは運転があるので付き合えませんが。
玉将の厨房は一気にフル稼働だ。
俺達が来るまでは比較的暇そうにしてたけど、今ではてんやわんやの大忙し。
厄介な客ですみませんね。
お金をいっぱい落としていくから許しておくれ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
作者は5年ほどこのチェーン店で社員として働いてたんですけどね。
本当にこういうお客さんが来たんですよ。
滅茶苦茶体の大きな五人組でやってきて、嵐の様な時間でした。デブとかじゃなくて、ラグビー選手的な体の方々でした。
死にそうになりましたね、ええ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます