第125話 大阪へ


 「じゃあ、よろしくお願いします」


 「お任せ下さい」


 大阪への出発日。

 俺は事務所の事はギルドの人に任せて、戦闘員五人全員で向かう。

 因みにポテは広報のアイドル娘が面倒を見てくれる事になった。猫好きで飼ってた事もあるらしい。

 ポテも特に警戒せず、いつも通りだったのでお願いする事にした。


 「わ、私が東京に来る時に乗った飛行機と全然違いまする!」


 「むっ! 天井が低いな!!」


 「あらあら。お酒が用意されてあるのね? 準備がいいわぁ」


 大阪までは自家用ジェットで向かうので、全員で乗り込み操縦士さんに出して下さいとお願いすると、初めての三人が三人らしい反応をしている。


 俺の自家用ジェットは学校巡りが終わってから、王族でも乗るんかってぐらいの改造を施している。

 乗り心地にこだわっているのはもちろん、お風呂やシャワーにだって入れるし、ふかふかのベッドにラウンジまで用意してある。

 今日は大阪までだからすぐに着くけど、海外旅行もこれ一機で楽しく出来る事だろう。

 だから、早く攻略要請お待ちしてますよ? 未だにどこからもありませんが。


 「あれだな。公英が居ると広い筈の機内が狭く感じるな」


 「がっはっはっは! 俺様は何もかもがBIGだからな!! ところで団長。機内にジムは置いていないのか?」


 置いてる訳ないだろ。

 俺が俺の為にくつろぐ空間なんだよ。

 飛行機内ぐらい自重して下さい。

 ほら、ジブリ見ますよ。一作みたら丁度大阪に着くからさ。




 「お前に大阪が救えるか」


 もの○け姫っていいよなぁ。

 ジブリってなんでこんなに面白いんだろう。

 って事で到着しました、大阪。

 神戸の1級を攻略した時に観光に来て以来だな。

 大体一年振りになる。


 「大阪が平常運転過ぎて怖い」


 1級の狭間が出て来て世界はてんやわんや。

 既に出て来た街から逃げ出す人も出て来てるってのに、大阪は全然慌てた様子がない。

 俺が居るから大丈夫だと思ってるんだろう。

 テレビのニュースでもやってたぞ。危機感が足りないんじゃないかって。


 「それだけだんちょ〜が信頼されてるって事じゃないの〜?」


 「それは嬉しいんだけどな」


 俺が攻略するのが当たり前みたいな風潮になられると困るというか。

 いずれは1級も他のギルドに任せたいし。俺は悠々と楽隠居させてもらいたい。


 「きたな、天魔!」


 空港に入るとたくさんの野次馬に囲まれた。

 いつも通り軽くファンサービスをしてたんだけど、神田さんの人気が凄い。

 探索者学校の希望だ、なんて言われて人に囲まれてぴゃわぴゃわしてる。


 公英はムキムキな人達に囲まれてるし、桜と陽花は主に男性から。

 俺は老若男女問わずって感じだな。


 すると、わざわざ空港まで『リア獣撲滅』の柴田さんが迎えに来てくれた。

 他にも数名ギルド員を連れて来てるみたいだが。


 「意外とすぐに1級が出ましたね」


 「出過ぎや。ニュースみてびっくりしたわ。天魔はまた海外行くんか?」


 歩きながら柴田さんと話をする。

 チラッと周りの野次馬を見てみると、柴田さんは小さい子供に好かれる人間らしい。

 キラキラした目で見てる子供が多くいる。

 『聖剣召喚』って普通にカッコいいもんな。


 勿論大人の人にもそれなりに人気があるし、中には可愛い女性も居るんだが。

 これでモテてないとか言ってるんだもんな。

 気付いてないだけじゃん。


 「今の所要請は来てないんで。来たら行きますけど。大阪が終わっても来なかったら、生産者学校の事について動こうかなと思ってます」


 「さよけ」


 要請が来てくれたらお金は稼げるし、旅行に行けるしでハッピーなんだけど、俺は今忙しいから。

 狭間探知機の事もあるし、他の魔道具開発の意見を言ったり、生産者学校の事もある。


 なんか引きこもりたいのに、自分から仕事を作りに行ってるような気がするな。

 やれやれ。あんまり働きたくないんだがな。

 お。今のはやれやれ系主人公みたいだな。

 俺の話を物語にしてくれたら、結構ウザい主人公になるかもしれん。

 


 柴田さんは本当に迎えに来てくれただけで、俺達をホテルにまで送り届けてくれると、あっさり帰って行った。

 自分のホームグラウンドに色んな上位ギルドがやって来るって事で忙しいのかもしれんな。


 「さてさて。大阪観光に出掛けるか。俺と桜は前に来た事あるけど、他は初めてだろうし」


 例の如く、まだ全ギルド揃ってないので、到着するまでは観光させてもらう。

 たこ焼き食べてぇっす。


 「大阪にはどんなお酒があるのかしら?」


 「織田さん! わ、私、この大きな蟹の看板があるお店に行きたいですっ」


 「大阪のジムはいかほどなものか。確かめねばならんな!」


 なんか一人おかしい事言ってる奴もいるけど。

 ジムなんてどこも一緒だろ? 筋肉からすると地域毎に何か違うのか? 


 「やっぱり大阪といえば道頓堀。あの通りは外せないよな。美味しい食べ物いっぱいあるし」


 「んふふ〜。早く行こうよ〜! お腹空いてきた〜!」


 あそこなら神田さんのリクエストにも応えられるし、陽花のお酒云々も何かしらあるだろう。

 公英は知らん。多分探せばジムもあると思う。

 飛び入りで参加させてくれるのかは知らないけどさ。


 「よーし! 大阪食い倒れの旅に出発だー!」

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