第5章 海外遠征

第78話 探索者学校へ


 「結局かっちりした服で来ちゃったな」


 「買い物に行かなかったからね〜」


 今日は探索者学校の東京校にお邪魔する日だ。

 ラフな服で行くか、スーツでかっちりした服で行くか迷って、スーツにした。

 次までには良い感じの服を買っておきます。


 車を走らせる事約30分。

 目的地に到着した俺達は、校長先生に歓待されていた。


 「いやはや、今をときめく『シークレット』のお二人に来て頂けるとは! 生涯の誉れにさせて頂きます!!」


 ただのオタクなんだよな。この人。

 なんか探索者協会の会長みたいだ。あの人は理性を抑えてたけど。この人はもう隠す事なく推してくる。


 「それで本日の流れですが!!!」


 圧が。圧がすごいんよ。

 目が血走っちゃってるよ。怖いんだけど。


 「普段の授業風景を見せて頂ければ。どんな風に教えてるのか気になりますので」


 「それはもう!! 何か至らぬ点がございましたら!! ビシバシと!! それはもう!! ビシバシと!! 指導して頂きたい!!」


 テンションが面倒だな、この人。

 もう少しまともな人選はなかったのか。

 新手の嫌がらせか?


 校長先生に関わりたくないので、さっさと校内を回る事にする。

 学校はそんなに広くない。何せ母数が少ないので。一応三学年あるみたいだけど、全校生徒で500人もいない。

 東京だけにしかない訳じゃないしね。


 「一年生は主に座学がメインですか。これは良いんじゃないですかね」


 「狭間の事を知らない子がほとんどですからね」


 因みに案内の人は校長先生ではない。

 あの人はあんなんだけど、結構忙しい身らしい。

 俺からしたら助かるけど。落ち着いた人が来てくれて良かったな。


 探索者学校は高校と同じ感じだ。

 15歳で能力が発現すると、能力を見せるだけで試験なしに入学出来る。

 しかも学校でかかる費用のほとんどは国持ち。

 積極的に支援して、探索者を増やす努力はしてるらしい。それでも危険な事には変わりないから、中々全体数は増えないみたいだけど。


 で、一年生は入学したら、まずは座学で狭間の事や能力の事について叩き込まれる。

 能力を使わせる前に、危険性とかを教える為らしい。これは良い事だと思う。

 老害はまぁまぁ使いこなしてたけど、『爆発』とか危険極まりないからな。


 「こちらが生徒の能力リストになります」


 「戦闘系ばっかりだな」


 「仕方ないでしょ〜」


 とりあえず一年生の能力リストを見せてもらったけど、見事に戦闘系ばっかり。

 能力も似たり寄ったりだし。


 「戦闘系以外の能力者は普通に進学する事が多いですね。専門学校に行ったりするみたいです」


 「絶対それ用の学校も作るべきだと思うけどなぁ」


 「戦闘を支えてくれる生産職の人が居ないと、いずれ行き詰まるよね〜」


 ゲームあるあるな。

 レベルのゴリ押しで進めてたら意味不明な状態異常とかでやられたりするパターン。

 装備もしっかりしてから出直してこいってメッセージである。


 「ふむ。俺が作るか。返済する必要のない奨学金制度とかも作って。およよ。お金がいくらあっても足りませんぜ」


 いや、色んな上位ギルドに声をかけて、合同でやった方がいいか?

 長い目で見たら利益はでるし。お金じゃなくて、人材っていう面でだけど。


 出資してくれたギルドには優先してスカウトする権利とかあげたら良いんじゃない? 知らんけど。

 こういうのは勢いで決めたらダメか。後でしっかり考えよう。


 「チラホラと面白い能力の人もいるよね〜」


 「『百獣化』とかな。絶対かっこいいじゃん」


 是非見せてもらいたい。ライオンに変身したりするんだろうか。

 『リア獣撲滅』とかこういう人材大好きそう。

 あそこはノリが良いからな。


 「あ、これ女の子なんだ。じゃあ無理だ」


 「あんな男臭いギルドには勿体無いよ〜」


 その通り。『風神雷神』に行きなさい。あそこは前衛不足してるから重宝してもらえるんじゃないかな。


 ふむん。異世界でも知らない能力が多いな。

 こういうの見るのは楽しい。自分だったらこんな風に能力を使うなって妄想して楽しめる。


 「うおっ! どえらい能力の子がいるな」


 「どれどれ〜? うわ〜ぴったしじゃ〜ん!」


 俺はリストを指差して教えてあげる。

 『銃弾生成』。どこぞのトリハピギルドにぴったりすぎる。後で教えてあげよう。絶対欲しいだろ。


 「あ、その子は既に『夜明けの時間』に内定が決まってますね」


 しっかりスカウトしてたみたいだ。

 なんでもこの能力を聞き付けたその日の内にスカウトに出向いたらしい。

 この子が居れば撃ちたい放題だもんな。


 「今はアルバイトで『夜明けの時間』に銃弾を卸してるみたいですね」


 「これ単体じゃあんまり役に立たないけど、あのギルドなら即戦力ですね」


 「本人も残念がってましたよ。一応、銃を撃てる様に練習する為にこの学校に通ってるみたいです」


 既にかなりの高給取りらしい。

 探索者学校は能力を活かして、仕事するのは認められているからな。

 勿論、学校を疎かにしない程度にだけど。狭間に行く事も禁じられている。

 狭間に行けるのは三年生の実習の時だけだ。


 「まっ、一年生を見ても座学をしてるだけだし。さっさと二年生の方に向かいますかね」


 一応全体を見た後は、体育館で講義的なのを予定されてるけども。

 俺は何を喋れば良いんでしょうね。

 戦闘の指導は出来るけども、人生の道標とかにはなりませんよ?

 狭間もノリで攻略してるしさ。


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