第77話 無計画


 「宝箱はっと」


 「少しの金銀財宝にポーション〜。それにこれは鞄〜?」


 「おっ。マジックバッグじゃん。容量次第では高値で売れるぞ」


 3級の狭間にしては悪くないんじゃないかな。

 どれもこれも良いお値段になりそう。


 「全部売るの〜?」


 「何か欲しいもんがあるのか?」


 「あたしもマジックバッグを持ってた方が便利かな〜って思って〜」


 「なんだ。それなら早く言えよな」


 俺は慈悲ミカエル忍耐アズラエルに憑依して空間魔法のアイテムボックスを起動。

 ゴソゴソと中を漁り一つのアイテムを桜に放り投げる。


 「マジックバッグの指輪バージョンだな。いつ手に入れたか忘れたけど、それあげるよ」


 「え〜!? 良いの〜!? だんちょ〜大好き〜!!」


 ひしっと抱きついてくる桜。

 お胸の感触が素晴らしい。薄着の桜さんだからより一層そう感じるね。


 「俺はアイテムボックス使えるから要らないし。憑依するのは面倒だけどな」


 異世界ではどこでも憑依出来たから無用の長物だったんだ。

 現代では少し人目を気にしないといけないけど、使うほどでもない。


 「って事で、今回手に入れたのは全部売りまーす」


 「ういうい〜」


 マジックバッグだけで億は超えるだろう。

 俺のアイテムボックスの中身も少し混ぜようかな。家の金庫内に飾りたいけど、それを差し置いても金銀財宝は大量にあるから。


 「さて、外に出るぞ。協会に寄ってドロップ品を査定してもらった後はお買い物タイムだ!」


 「いえ〜い!」





 「んふふ〜!」


 「テンション高いな」


 「お買い物は楽しいんだよ〜!」


 狭間を出てから、野次馬の応対をしつつパーキングへ。

 車に乗った桜さんのテンションはMAXだ。


 「どこに行く?」


 「とりあえずご飯〜」


 それもそうか。

 現在時刻は15時過ぎ。昼ご飯には遅いけど、確かにお腹は空いている。

 俺は車を走らせて吉野さんへ。


 「はっ! 自然に吉野さんに来てしまった!」


 「慣れって怖いよね〜」


 ご飯と言われて何を食べるかも聞かずに吉野さんに向かっていた。

 俺はいつのまに洗脳されてしまったんだ。嫉妬レヴィアタンの出番か?


 いつも通りネギ玉牛丼特盛とチーズ牛丼特盛を頼む。桜さんは絶対ノーマルな牛丼を頼む。他にも頼むけど。


 「時間が時間だからなぁ。そんなに多くは回れないけどどうする?」


 「明日は探索者学校に行く日でしょ〜? それ用の服を見に行くとかは〜?」


 え? スーツじゃダメなの? 俺は面接の時に仕立ててもらったのを着て行く気満々だったんだけど。


 「スーツは固すぎるんじゃないかな〜? いやでもスーツの方がいいかな〜」


 「それに服ってのは選ぶのに時間がかかるもんだろ? 女性なら特に。もっと時間がある時の方が良いんじゃないかな」


 「一理ある〜。美味し〜!!」


 俺達は牛丼をむしゃつきながら話を進める。

 桜さんにそう提案したものの、時間が微妙すぎてどこに行くか迷うな。


 「だんちょ〜はゲームが欲しいんじゃなかった〜?」


 「そうだけど。そんなに時間は掛からないと思うよ?」


 欲しいのを片っ端から買って行くだけだし。

 お金はあるんだ。気になったのは全部買えば良いだろう。迷う必要がない。


 「それにゲームはネットでもポチれるし」


 「だんちょ〜が異世界に行く前の骨董品ゲームを探すならネットの方が良いかもね〜」


 骨董品って言うな。

 面白いゲームが沢山あるんだぞ。

 とりあえず龍が如○は絶対買う。俺の古い記憶では4で止まってるんだ。続きが気になってしょうがない。


 「なんかあれだな。面倒になってきた」


 「分かる〜。なんかご飯食べたら動く気無くなってきちゃった〜」


 わいわいとどこに行くか話してたけど、満腹になって人心地つくと、家に帰りたくなってきた。

 この計画性のなさよ。これぞ天魔クオリティ。


 「帰るか。ポテが待ってる」


 「買い物は早起きしてから行こ〜う」


 それな。こんな中途半端な時間に行くもんじゃねぇや。閉店時間を気にしながら買い物なんて楽しくないしな。うんうん。完璧な理論武装だ。


 「協会寄って帰ろう。明日は学校に行くんだし、英気を養わないと」


 「ポテちゃんは良い子にしてるかな〜」


 案外寂しくしてるかもしれんぞ。

 ごろにゃーして玄関で待ち構えてるかもしれん。





 「ただいまーっと」


 「ポテちゃ〜ん」


 残念ながら玄関で待ってるという可愛らしい展開はなかった。

 少し期待してスマホを構えてたんだけどな。


 ラウンジには見当たらないので、リビングに向かう。どこにいるんだろうか。


 「にゃにゃ」


 「大物かよ」


 「ポテちゃんただいま〜!」


 猫用ベッドに寝転がり片足を上げておかえりみたいな雰囲気を出してくれている。

 こいつ、俺達が家を出ました時と格好がほとんど変わってないんだが?

 まさか、ずっとベッドでくつろいでたんでは?

 ニートみたいな野郎だぜ。


 「ごろにゃー」


 「良い子にしてたかな〜?」


 桜が早速構い倒してるので、俺はペットカメラを起動する。

 ペットショップの人に勧められて買ったんだよね。不在時のペットの様子が分かるらしい。


 「こ、こいつ…っ!」


 マジでベッドから動いてねぇ。

 偶に毛繕いはしてるものの、ずっとベッドで転がってやがった。


 「猫ってもっと活発に動くもんだと思ってたぜ」


 キャットウォークとかに興味はないのかね。

 そのうち遊んでくれるんだろうか。



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 はい。って事で今章は終了です。

 お疲れ様でした。

 ギルドの面接をして〜家族が増えたって感じですかね。

 後は待望の新居。事務所等の施設はまだですが、作者の妄想を詰め込んだ家になってるかなと思います。


 次章はようやく学校巡りですね。

 まぁ最初は詳しくやって、後はご当地巡りになりそうな感じですが。

 ゆるっと進めていけたらなと思います。


 ではではまた次章で〜。


 

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