第76話 桜の攻略


 「束糸〜」


 桜さんのオマージュ戦法は続く。

 まぁ、糸使いってのは似たり寄ったりな性能になりがちだし? 仕方ない所もあるよね。うん。


 「グェェエ!?」


 「グワァァア!?」


 二羽で飛んできたフォレスト・イーグルを鞭の様なもので叩き落とす。

 これは何本もの糸を一つに束ねて、鞭のように使う技らしい。


 「超過鞭○そっくりなんだよなぁ」


 含み笑いのジョーカーさんは糸使いとして参考にするには都合が良すぎる。

 どれもこれもカッコいいしな。


 「○NE PIECEは参考にしやすい」


 桜さんがドレスロー○編を何回も読み返してた意味が分かりましたぜ。


 「あ〜肉を落としたよ〜!」


 「確保!!」


 今宵の晩飯は唐揚げじゃい!!

 俺はいそいそと風魔法を使って、丁寧に鞄の中に入れる。あー想像しただけで涎が…。


 「思いっ切り戦えるのって楽し〜!」


 桜はご機嫌な様子。

 本格的な戦闘はガチャから出て来て初だもんな。

 この調子で思う存分楽しんで下さい。


 「接近戦も練習したいところだったんだけど〜。空を飛んでるから出来ないね〜」


 雲を掴んで空中機動とか出来ないのかな。

 まぁ、実際は雲を掴むって無理な話だし。


 「森の木々を上手い事利用して、立体機動みたいな事は出来るんじゃね? 糸を使ういい練習になりそうだし」


 「なるほど〜! まさしく立体機動装置みたいにするって事だね〜? あたしミカ○役やるよ〜!」


 役とかはなんでも良いけど。

 まぁ、イメージし易いって事なのかな。

 じゃあ俺は、兵長役やらせてもらっても?


 「フォレスト・イーグルを駆逐してくれ」


 「心臓を捧げよ〜!」


 手を胸に当てて敬礼する桜。

 こいつも中々オタクになってるよな。

 俺の影響かしらん?


 「いやっほ〜!」


 「器用だな」


 さっそく糸を巧みに使って木の間を飛んでいく。

 すぐに実行出来るあたり、桜のスペックは優れている。


 「爪糸〜!」


 片手は空中機動するのに使い、もう片手で接近した敵に指先から出した鋭利な糸で斬りつける。

 なんかそれも見た事あるな。名前忘れたけど。


 「ってか、これは撮影するの難しいぞ」


 縦横無尽に動き続ける桜を捉えるのは一苦労だ。

 ちゃんと映ってるんだろうか。

 一応、俺は空を飛べるからついて行けているけど。


 「んふ〜! 立体機動はもう少し練習が必要だね〜。自分の思った場所に中々行けないよ〜」


 「充分動けてるように見えたけどな」


 まぁ、本人が納得してないなら練習あるのみですよ。いくらでも付き合いますぜ。


 「え〜っと〜後試してない技は〜。これはボス戦で使うとして〜」


 桜はポケットからスマホを取り出して、何かを操作している。

 狭間内では電波は届かないので、わざわざメモしてたんだろうか。真面目。


 「うんうん〜。後は並列操作の練習かな〜」


 「家でも偶に練習してるよな」


 「指先から出した糸を全部別々に操作したいんだよ〜。これが難しくてね〜」


 暇な時に糸をふよふよさせてるのをよく見かける。別々に操作するのは難しいだろうなぁ。


 「あたしは体の何処からでも糸を出せる訳だし〜? 指先からだけじゃ勿体無いんだよね〜。まずは指先から並列操作の練習してるんだけど〜」


 「脳みその数が足りてませんぜ」


 想像しただけでヘッドがペインになる。

 戦ったりしてると気にならないのかな? 俺も反転の計算とかしてる時とか、滅茶苦茶脳みそ使ってそうだけど、気になってないし。


 「ここからはサクサクいくよ〜!」


 「頑張ってくだせぇ」


 宣言通り、桜さんは向かってくるフォレスト・イーグルを指先から出した糸で上手に首を刎ねていく。回数を重ねる毎にスピードも上がっていき、1時間程でボスが居そうな場所までやってきた。


 「思ったよりも早かったな」


 「操作に慣れてきたからね〜」


 練習しながらだから、もっと時間がかかるかと思ったけど。桜さんは天才ですか。

 俺の方が撮影やら素材回収で慌ただしくしてたぐらいだ。


 「どうするの? まさか鳥籠を使っちゃう感じ?」


 「あれは通常操作の応用で簡単に出来ちゃうからしないよ〜」


 なんだ。ちょっと期待してたのに。

 後、ジョーカーさんの技ってなんかあったっけ?

 いや、いっぱいあるんだろうけど。


 「マリオネット〜」


 「ほう! ほうほう! ほうほうほう!」


 桜が少し手を捏ねてるなと思ったら、糸で作った等身大の人形が完成した。


 「うんうん〜。流石に自動で動かしたりは出来ないけど〜。悪くない出来だね〜」


 「ロマン! ロマンを感じる技だな!! ん? 誰かに似てるような?」


 「安藤さんだよ〜。なんか強い女性を思い浮かべたら自然にこうなっちゃった〜」


 『暁の明星』の筋肉女子安藤さん。

 確かにあの人見た目強そうだもんな。


 「よ〜し! このままボスも倒しちゃうよ〜!」


 ボスの場所に飛び込んだ桜は多数のフォレスト・イーグルとフォレスト・マザー・イーグルと対峙する。

 マザーがボスなのか。そんなに強くないんだけど。ってか、産卵特化な感じだった気がする。

 3級だしそんなもんか。


 「いけ〜! 安藤さん一号〜!」


 「お前怒られるぞ」


 片手の手でマリオネットを操作し、敵をどんどんと叩き落としていく。

 もう片方の手は指先から出した弾糸で撃墜。


 「マリオネットに前衛をやらせて、桜が後衛から弾を撃っていくってムーブも出来そうだな」


 「操作が難しいんだよ〜!」


 良く見たら桜さんは結構必死だ。

 マリオネットの操作が難しいんだろうか。

 両手で操作した方が楽では? と思ったけど、それなら桜が戦った方が早いもんね。

 片手で操作する事に意味があるんだろう。


 「これで終わり〜! 砲糸〜!」


 今まで弾丸サイズだった糸を大砲クラスの大きさにして射出。

 マザーの大きな体に風穴が空いて、光になって消えていった。


 「疲れた〜!」


 「お疲れちゃーん」


 素材やら魔石やらを回収しつつ、桜に労いの言葉をかける。

 なんだかんだ練習しつつ3級を攻略できたな。

 これは2級攻略も頑張れば出来そうだぞ。

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