第23話 禁忌領域


 禁忌領域。

 異世界には、特定の人間以外立ち入り禁止されている場所がある。


 俺が異世界に降り立った頃はそんなもの無かった。ってか、どこもかしこも魔物だらけで世界が禁忌領域みたいなもんだった。


 そこから、勇者(笑)の俺が徐々に人間の活動領域を広げていき、生存圏を確保した。

 それでも、俺がこの地域の魔物の根絶は無理だなと思った場所や、普通の人間が入ると危険な場所が多々あった。

 魔の森とかな。禁忌領域って命名して、各国に通達して貰ったのは俺なんだけど。

 なんかかっこいいでしょ? 禁忌領域。


 魔の森の魔物とか倒そうと思えば、長い時間を掛ければ倒せる。でも途方もない時間が掛かるので諦めたんだ。

 

 一応、結界を張っていて入れないようにしてるが、俺が現代に戻ってきてからどうなってるかは分からない。

 性悪女神が引き継いでくれてる事を祈る。


 ここはその一つで、初めて魔王と邂逅し、戦闘になりボコボコにやられた場所である。

 戦闘の際、地形を変えたり、天変地異を起こしたりとめちゃくちゃにしやがったので、俺が魔王討伐してから禁忌領域に指定した。

 人間が活動出来る場所じゃないし、負けた場所ってなんか見られたくなかったんだよね。

 私情がかなり入ってるのは認める。


 「え〜!? だんちょ〜って負けた事あるんだ〜?」


 「魔王には何回も負けてるな。その度に尻尾巻いて逃げた。四天王にも何回か負けたな」


 嫌な思い出が蘇りますねぇ。あの頃は若かったんだ。憑依なんて破格の能力を手に入れて、憑依時の全能感に酔っていた。

 初めて魔王と戦った時も負ける気は一切無かったんだ。あそこでボコボコにやられて泣いて逃げ出したなぁ。


 でも、それで我に返ったというか。いや、その後も何回も負けてからかな。これはもっと強くなってからじゃないと無理だと悟って、真剣に能力と向き合った。


 「お陰で今の謙虚な天魔さんが居るって訳よ」


 「謙虚〜? 冗談はやめてよね〜」


 何故か桜さんに鼻で笑われた。理由は明確だが。

 流石に自分が謙虚だとは思っていない。

 でも、昔はこれよりももっと酷かったんだ。


 あの老害を馬鹿に出来ないぐらい、自尊心の塊だった。もしかしたら、あの老害が嫌いなのは自分と重ねてるからかもしれん。

 それでも許す気はサラサラないが。俺は自分の事は棚に上げる主義なのだ。


 「それで〜? ここの魔物は強いの〜? 禁忌領域ってぐらいだし〜?」


 「強いな、普通に。一時は魔王が根城にしてたぐらいだし。しっかし、結界を張ってたのになんでこっちに来てるんだろ。性悪女神の嫌がらせか?」


 しかも相性が悪いんだよなぁ、ここの魔物。

 ここの魔物ってか、魔族的な? 見た目は悪魔みたいな奴らだ。

 テンプレ通り、他の種族と敵対している。

 良い魔族とか居ないぞ? マジでどの魔族も他の種族を不倶戴天の敵として見てくる。

 言葉は何言ってるか分からんが。魔王と幹部クラスは聞き取れるんだが。


 厄介なのは、魔法を反射したり吸収したりしてくるんだよ。

 魔王の特性を微妙に引き継いじゃってる。

 キャパオーバーするぐらいの威力で、叩き込めば良いだけなんだけど、かなり疲れるんだよなぁ。


 「結界を張ってたから〜なんか違和感があったんじゃないの〜? 結界のせいで1級って誤魔化されてるとか〜?」


 えー。って事は禁忌領域もこっちに来る可能性があるって事になるじゃん。

 どこもかしこもマジで面倒だから禁忌指定したのにさ。


 「これ、攻略したら向こうで禁忌領域無くなったりするのか? ちょっと、性悪女神とコンタクト取りたいな。神託とか授けてくれないもんか」


 「こっちの神様じゃないから無理でしょ〜?」


 「姉妹なんだからそれぐらい融通してくれてもいいだろうがよ」


 これ、狭間崩壊したら間違いなく人類は終わるだろうなぁ。

 俺が来てなかったら、どうしてんたんだろ。


 「まぁ、桜が戦うのは無しだな。多分勝てない。いや、何体かは仕留められるだろうけど、攻略は無理だ」


 しかも、糸でぐるぐる巻き状態だしね。

 環境もよろしくない。


 「だんちょ〜は勝てるの〜? 禁忌指定したぐらいなんでしょ〜?」


 「勝てる。ここは面倒ってのと、魔王と戦って、初敗北した場所ってので近付きたくなかったから、指定したんだ」


 異世界に降り立ての頃は、逃げ回ってたけど、あれはノーカン。

 能力もまともに使えなかったし。


 「あたしは寒すぎて無理だよ〜。てかてか〜だんちょ〜は寒くないの〜? コート着てるけどそれだけで防げる寒さじゃなくな〜い?」


 季節は春よりの冬。

 馬鹿みたいに薄着してる桜がいるお陰で季節感は皆無だが、一般的には厚着する季節である。


 「俺の能力で温度調節出来るからな」


 「え〜? 憑依してないじゃ〜ん?」


 「憑依じゃない方の能力。丁度良い機会だし、こっちの能力を本格的に使うか」


 「だんちょ〜の二つ目の能力だ〜! 楽しみ〜!」


 楽しみにしてるとこ、悪いけどこの能力は撮影禁止だぞ?

 とても人様に見せれる能力じゃない。

 いや、偶に日常でも使ってるんだけど、やっぱり桜は気付いてないよな。

 まぁ、どうでも良い事にしか使ってないからなんだけど。今回の温度調節とか。


 使い勝手は悪くないと思う。

 条件有りだから、そこが面倒ってだけで。


 「憑依ポゼッション:慈悲ミカエル


 とりあえず、憑依。まぁ、前段階ってやつだな。


 「え〜? いつもの憑依だよね〜?」


 「そう焦るな。これ、使うのは色々条件があったりと面倒なんだ」


 ほんと。最初この能力貰った時、チートじゃんって思ったんだけどな。


 「反転せよ」


 くそ面倒な条件付けやがってよぉ。

 あの性悪女神め。俺が四苦八苦する姿見て笑ってやがったんだぜぇ?

 許せねぇよなぁ?


 「憤怒サタン

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る