第17話 2度目の1級攻略へ
ネギ玉牛丼特盛を3杯かっ食らい、協会で用意された宿泊施設に泊まった翌日。
夜のプロレスもこなし、心身共に絶好調である。
ゆっくりと準備をしてから、次元の狭間へ。
今日も今日とて野次馬がいっぱいである。
「暇人かよ。今日平日だぞ。働けよ」
「あはは〜。探索者の人達が多いんじゃな〜い?」
それだけ注目されてるんだと思っておきますか。
ここで待機してても、狭間が消える瞬間ぐらいしか見れるもんは無いと思うけどね。
「もう撮ってます?」
「いえ、今からです。次元の狭間に入る直前からスタートですので」
大村さんはかなり緊張していて、顔が真っ青である。普通なら1級攻略の撮影してこいなんて、死んでこいって言ってるのと同じだもんね。
仕方ない事だとは思う。でも、体は震えてるのに、手は一切動いてないんだよね。
撮影能力の手ブレ補正ってやつ? 面白いよね。
「よーし、今日もさっさと攻略して美味しいご飯でも食べるか」
「牛丼〜! いえ〜い!」
え? また牛丼? せっかく神戸に来たんだし、ご当地メニュー的なのも食べてみたいんだけど。
牛丼の悪魔か何かに取り憑かれてない?
撮影が始まって、次元の狭間へ。
今回の狭間は森だった。
「森。森か〜。出てくる魔物の候補が多過ぎて絞れないな」
「知ってる所だったりする〜?」
桜がカメラに声を拾われないように、糸を使って話かけてくる。
糸電話みたいな感じ。面白い使い方するな。
「そんな森をパッと見て分かる訳ないじゃん。俺も異世界の森を全部知ってる訳じゃないしさ。いきなり森に放り出されて、『あ、ここは富士の樹海か』って分からないだろ? そういう事だよ」
最も、何か特徴があれば話は別なんだけど。
見た感じ普通の森なんだよね。
「さて、大村さんの護衛は任せるぞ」
「ういうい〜」
「大村さん、一応桜はこんなんですけど、3級ぐらいなら単独で攻略出来る程度の力はあります。安心して撮影して下さい」
「こんなんってなんだよ〜! 桜ちゃんだぞ?」
「はいはい」
コクコクと頷く、大村さんの顔はもう真っ青を通り越して真っ白である。
狭間の中は魔力多いからな。圧倒されちゃったか。1級なんて普通は入らないし。
どんな魔物が出てくるだろなと、周りを見渡していると、ブブブブと不快な羽音が聞こえてきた。
「虫か。キラービーっぽいな。それだけか?」
「おお〜。はちみつゲットじゃ〜ん」
ロイヤルゼリーとかな。
こいつらの下位種が、もっと低い等級の狭間で出て来るらしいんだけど、そのドロップのはちみつやらロイヤルゼリーはかなり高値で売れる。
「当たりを引いたな。今回の儲けは相当なもんになりそうだ」
「え〜。あたしもロイヤルゼリー欲しい〜。美容に良いんだよ〜」
「俺も欲しいし、はちみつも欲しい。俺達用にも確保するか。ドロップ運が試されるな」
恐らくボスは女王だろう。
ボスドロップのロイヤルゼリーは絶対俺達で使おう。ぷるぷるなお肌に興味があります。
「
虫は燃やす。先祖代々からそう決まってる。
なんで、虫の羽音ってこんなに不快なんだろうね。寝てる時の耳元で鳴る蚊の音とか。
マジでイライラしない? 俺はする。
「爆ぜろ、
俺は森林災害もなんのそのと、周辺に火魔法を撒き散らす。
どうせ、俺が攻略し終わったら消えるんだ。
どうなってもかまわないだろ。
「ちょっとちょっと〜! あっついよ〜!」
そう思ってたんだけど、思ったより乾燥してたのかな? 火が消えそうにない。
「これじゃあ、ドロップ品を回収出来ないな」
ドロップ品は人間が触らないと不思議パワーで保護されてるという謎設定だ。
多分今の俺がやったみたいに、こんな状態になってしまったらドロップ品がダメになってしまうからだろう。大変助かります。
「
髪と翼が青色に。そして青い輪っかを装着。
火を消すなら水魔法でしょと安易に考えました。
「掻き消せ、
見た目通りの大津波である。
これで火も消えるでしょうよ。
「ねぇ〜。ドロップ品も流されちゃったよ〜? 誰が回収するの〜?」
桜さん、出番ですよ! 糸を使って回収お願いします!
ちょっと、今日は協会の撮影があるからって調子に乗りすぎたな。
考え無しとか思われそうだ。その通りなんだけども。大村さんは信じられないものを見る目で俺を見てるが、カメラは忙しなく動かしている。
これも撮影能力のお陰なんだろうか?
「もう〜。もう少し被害の少ない魔法を使ってよ〜。毎回こんな事やってられないよ〜」
ぶちぶちと文句を言いながらも、体中から糸を出して、辺りに張り巡らしてドロップ品を次々と回収していく。
なんて便利な能力なんだ。厨二病心を擽り、強くて便利。世の中高生はみんな欲しがりそうな能力だ。
「てんきゅー!」
「あたしが糸を出した範囲は全部回収出来ただろうけど〜多分取り零しもあるよ〜。勿体無いから次はこんな事しないでね〜」
分かりました。大丈夫です。
織田天魔は反省を次に活かせる男であります。
羽音が気持ち悪過ぎて、つい燃やしてしまおうと安易に考えたのが良くなかったね。
適当に火の玉でもぶつけて対処しよう。
キラービー系の魔物は単体だと強くないしね。
かなりの数で群れてくるから厄介なんだ。
極小の火の玉で被害を最小限に仕留めていこうと思います。
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