第18話 魔物がお金に見える
「うっひゃ〜! 今日のドロップ運良くな〜い?」
「うん。なんかめっちゃ落ちるな」
なんだこれ? 確率的には二回に一回ぐらいで素材もドロップするんだが?
お陰で何回も空間魔法を使う羽目になり、憑依が忙しいったらない。
「大村さん、しっかり撮れてます?」
「は、はいっ!」
映えも意識して探索しないといけないって、面倒だな。俺の能力は普通にしてても取れ高満点なんだろうけどさ。
桜はカメラ映りなんて気にする事なく、うきうきで素材を回収している。
すごい強メンタルだよね。目が$マークになってるぜ。
「アンデッドでさえ、結構な金になったんだ。今回の稼ぎがどれくらいになるか楽しみだな」
「ね〜!」
もう、魔物がお金にしか見えない。
こんな簡単にお金を稼がせてもらっても良いんでしょうか。
ブラック企業で働いてる皆さんに申し訳ないですな。今でもそんな企業があるのかは知らないが。
「イグニッション」
どれだけやられても向かってくる、蜂の軍団にどんどん火魔法をぶつけていく。
反省したので、被害は最小限に。倒したそばから桜が糸でドロップ品を回収してくれるから、進行スピードは中々早い。
「うーん、淡白。面白味に欠ける狭間だなぁ」
ただただ羽音がうるさい。気持ち悪い。
だから、出て来たら直ぐに仕留めてるんだけど、害虫駆除してる様な感じにしかならない。
「これでも苦戦する現代人よ。学校の指導が間違ってるんじゃないの?」
あんな老害がでかい顔出来るくらいだしさ。
しっかり対策を練って、能力を使えれば大抵の能力でも1級は攻略出来る筈なんだよ。
「1級攻略終わったら学校でも覗きに行くかな」
「あたしも行きた〜い」
能力者がいっぱい集まってる宝の山だもんな。
良い生産能力者がいたらスカウトも考えよう。
戦闘系には期待しない。どうせ適当に能力使ってる奴しかいないんだし。
あ、いや、面白そうな能力持ちを俺が育てれば良いのか。そいつが使い物になれば、俺がわざわざ1級攻略しなくてもやってくれるって事だし。
それから、1級を攻略してるとは思えないぐらいリラックスして、どんどん攻略を進める。
俺と桜が雑談しながら、適当にやってるもんだから、大村さんも大分緊張が抜けたみたいだ。
それでもこいつらマジかって顔してるけど。
「ボス戦〜ボス戦〜お金ちゃ〜ん。今日の晩御飯代になっておくれ〜」
「ひどい歌だな」
君が戦う訳じゃないのに。既にお金扱いとは。
ボス戦だけで得たお金だけでも一生暮らしていけるぐらいのお金は手に入ると思うんだけど、それを晩御飯代だけに使うなら、どれだけ高級料理を食べないといけないのかな?
俺、正直チープな料理の方が好きなんだけど。
ファーストフードとかさ。偶にご当地メニューを贅沢して食べるのは良いんだけど。
「神戸って中華街以外になんかないのか?」
「そりゃ〜神戸牛でしょ〜。神戸牛の牛丼とかないのかな〜」
あ、それは食べてみたいな。ステーキ丼もあり。
よーし、さっさと攻略してご飯行くか!
「大村さんも行きます?」
「い、いえ。自分は直ぐに戻って映像を提出して編集作業に入らないといけませんので…」
「そうですか…。ん? 撮影の能力って編集にも効果あるんです? もう全く関係なさそうですが」
「自分が撮った動画に限ってはですけどね」
ほへー。ほんとに面白い能力だなぁ。
テレビ局とかで働いてたら酷使不可避じゃん。
え? あ、働いてたんだ。案の定、酷使されまくって嫌になって辞めたと。
「給料は良かったんですけどね…。全くプライベートの時間が取れなくて」
「それで探索者協会に再就職したのに〜1級攻略なんかに連れて来られるなんてたまったもんじゃないよね〜」
「そうですね…。正直、話を聞かされた時は辞めようかと思いましたよ。でもいざ来てみると、最初はかなり怖かったんですが、お二方にこれだけ余裕を見せられるとなんか馬鹿らしくなってきまして。楽しい画が撮れて今は来て良かったと思ってます」
すみませんね。緊張感がなくて。
まぁ、でもそれが大村さんのためになったなら良いでしょ。結果オーライってやつだ。
「んじゃ、取れ高のためにも頑張りますかね。まだ使ってない憑依でも使うか」
えーと、後は何属性を使ってなかったかな?
「
茶色の髪に茶色の翼。茶色の輪っかを装着。
地味だけど、土属性だから仕方ないよね。
「かーらーの。
髪が赤と茶のツートーンになり、片翼も赤く。
土属性と火属性を使う。この二つが揃ったらやる事は一つだよね。
「堕ちろ、
ボス部屋に入ると、どでかい蜂の巣に大量の近衛蜂。それに一際圧がある女王蜂がいたが、そんなの関係ない。まとめて一掃してやる。
炎を纏った岩石群が蜂の魔物に殺到する。
魔法って大量の雑魚魔物を圧倒するのに持ってこいだよねぇ。この威力ならボスも死ぬだろうけど。
「ちょっとちょっと〜! 魔法の余波がこっちにも来てるんですけど〜!」
おっと。こいつは失敬。
「
俺は慌てて憑依相手を変える。
白色の髪に白の翼。前に、
「
この現代に戻って来て、滅多に攻撃を受けたりしないから、使う事は余りないと思ってたけど、自分の攻撃に対して使うとはな。
神々しい光が辺りを漂い、何故かこっち向かってきた余波が跳ね返っていく。
これは俺が害になると思ったものを通さないという不思議結界なのだ。
魔王の攻撃は2.3回受けると壊れてしまったが。
いや、防げただけでも凄いんだけどね。
「だんちょ〜はやる事が極端なんだよ〜」
「申し訳ねぇ」
多分、俺が結界を使わなくても防げたんだろうけど。糸張り巡らせれば良いだけだもんな。
どれだけ耐久力がある糸なのか興味あります。
「ん〜? ボスも死んでるな」
「こ、こんな簡単にボス攻略してしまうなんて…」
大村さんは今日で一生分驚いたんじゃないかな。
得難い人生経験になった事でしょう。
感謝してくれたまえ。
さーて、さっさとボスドロップを回収して神戸牛を食いに行こうぜー。
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