第16話 神戸へ


 「んふふ〜。くたばれ老害がトレンド一位になってるよ〜。送ったアカウントも私達のってマークが貰えたね〜。やっぱり写真をポストしたのが良かったのかな〜?」


 ちゃんと俺からの宣戦布告と分かってもらうために、俺と桜のツーショット写真をポストしたからな。美男美女。中々画になった事だろう。

 ナルシストすぎ? イケメンが謙遜してそんな事ないですよ〜って言う方がなんか嫌味っぽくない?

 俺はそう思うから自分の顔は積極的に売りにしていく所存です。


 それはさておき、今日は協会の人達と神戸に向かう。

 わざわざ車を出してくれるんだよね。

 新幹線で行った方が早いと思うんだが。


 「織田さん。本日はよろしくお願いします」


 「こちらこそよろしくです」


 車には撮影してくれる、協会の人とインタビュアーの人も同乗する。

 狭間の中に入るのは、撮影してくれる人だけだが、車の中で軽いインタビューがあるんだ。

 正直めんどくさいが、これも知名度アップの一環だと考えて頑張ろう。


 因みに、撮影者の大村さん。

 能力はなんと撮影らしい。

 そんな能力もあるんだねぇ。

 さぞかし綺麗に撮ってくれるんだろう。


 Q.1級を攻略したという事ですが、今のお気持ちは?

 A.日本の危機を少しでも救えたと思い、ホッとしています。まだ信じていられない方も多いと思うので、今回協会の人が協力してくれるのはありがたいですね。


 Q.つい最近探索者登録をして、いきなり攻略となった訳ですが、今までは何をしていらしたんですか?

 A.魔王討伐に夢中でした。あはは。ゲームの話ですよ。今まではダラダラとして遊んでたんですけどね。流石に1級が崩壊すると、遊んでばかりではいられないなと思いまして。


 Q.動画を拝見させて頂きました。織田さんは能力が一つしかないと考えられているなか、沢山の能力を使ってるように見えたんですが、詳細を聞いても大丈夫でしょうか?

 A.俺の能力は憑依と言いまして。7柱の天使の力を借りる事が出来るんですよね。大層に聞こえますが、これはそれぞれに対応した魔法を使えるってだけで。まぁ、それでも破格の能力なのには変わりないですけど。こんな感じですね。


 俺は会話を中断して、憑依する。

 インタビュアーの人も、撮影者の大村さんも唖然としていたが、それでも仕事は忘れていないようで、カメラはしっかりと俺に向けられている。


 Q.貴重な映像をありがとうございました。とても神々しい能力ですね。巷では早速二つ名で使徒なんて呼ばれたりしてますが?

 A.あははは。使徒ですか。俺なんかには過ぎた二つ名ですね。勿論応援して下さるのはありがたい事なんですが。


 俺の丁寧な対応を見て、桜は寒気がするとばかりに体を震わせて、半笑いで俺の事を見ている。

 こういうのは大事なんだよ?

 なんでもかんでも敵に回してたらキリがないからね。敵味方はしっかりと区別しとかないと。


 その後も色々とインタビューされたが、そつなく大衆受けするように答えていく。

 インタビュアーさんも最初はどんな人なのかとビビってたみたいだが、俺の対応を見て、徐々に緊張がほぐれたのか、ノリノリで質問してきていた。


 まぁ、大御所の老害の事について聞かれた時は、くたばれ老害と言っておいたが。


 そんなこんなで目的地の神戸。

 今日は一泊して明日、狭間攻略をする。


 「うわっ。人多いな」


 「SNSで攻略日を告知したからね〜。みんな観に来てるんじゃないの〜」


 とりあえず下見でもするかと、狭間を見に来たんだが、かなりの人だかりだった。

 容赦なく、パシャパシャと写真を撮られる。

 肖像権なんてあったもんじゃない。


 「ここで笑顔で対応すると、その後が楽になるんだよな。調子に乗る奴も出てくるだろうが」


 「だんちょ〜が気にしてる民意って奴だね〜。一般人に好印象与えておくのにこした事はないからね〜」


 桜はそう言いながら、俺と腕を組み周りに手を振っている。

 お前そういう事すると、男を敵に回すんだが?

 言ってる事とやってる事が違いますよ?


 「んふふ〜。嫉妬の目線が気持ちいいね〜?」


 誰にも聞こえない様に小さい声で言ってくる桜。

 こいつ、中々良い性格してやがるな。


 「なんかこの辺で美味しいご飯屋さんとかないの? 神戸名物的な?」


 「中華街とかあるんじゃなかったっけ〜? あたしはそれよりも牛丼が食べたいな〜」


 「すっかりハマったな」


 「あれは至高の料理だよ〜」


 桜は初めて牛丼を食べてからかなりハマっている。家にいる時も配達で頼むほどだ。


 「高級な肉を使ってるのじゃなくて〜チェーン店のが良いんだよ〜」


 「じゃあ、そこら辺歩くか。牛丼の御三家は直ぐに見つかるだろ」


 相当な田舎じゃなければ、何処にでもあると思ってますんで、はい。

 駅の近くには絶対あると思ってます。


 その後、野次馬を引き連れて牛丼屋へ。

 俺達の会話を聞いていたのか、野次馬の中の一人がわざわざ案内してくれた。


 「ありがとう〜」


 「いえ! こちらこそありがとうございます!」


 何故か俺じゃなく、桜のサインを貰って満足そうに去っていった男性。

 そこは俺じゃないのかね?

 性欲に支配されてるんじゃなかろうな?

 ………これは俺も人の事言えないか。

 俺にも美人女性ファンとか出来ないもんかね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る