第5章 悪魔召喚
第197話 面談依頼
「やはり来たか」
それはエルフ大使館を通じてのマーランド王国からの面談依頼だった。
オーブ屋で保護している黒髪の少女――ギャル子と優等生っ子のことね――に事情を訊ねたいという建前だが、本音は2人に勇者パーティーに戻って欲しいということだろう。
勇者拓哉が死に、聖騎士栄斗を勇者に祭り上げたは良いが、さすがに戦力的に見劣りするというところか。
そこで白羽の矢が立ったのが、生きていると確認された黒髪の少女たちの能力ということなんだろう。
彼女たちがジョブとその能力を失っていると聞かされていても、実際にはどうなのか確認しないと納得がいかないというのもあるのだろう。
「エルフィン王国としては貸しがあるので、別に断っても構わないのです」
リュミエールはそう言うが、ここできっちり国に諦めさせないと、面倒事が続きかねない。
まあ、それもギャル子と優等生っ子本人たち次第なんだけどね。
勇者拓哉が処刑され、彼に殺される危険が無くなった今、彼女達が戻りたいと言うならば、そうしてあげても構わないのだ。
「え? 勇者パーティーに戻るかって?
論外! 無理!」
「私も嫌です。
あそこ自由が無くて窮屈なんですもの」
「国と揉めると、この国に居られなくなるかもしれないぞ?」
「そこは外交特権が効くんでしょ?」
「ここに居れば安全だもの。
ここを襲おうなんて、もう勇者崩れの組織しか居ないと思うし、何だったら国相手でも守ってもらえるし」
そうか、もし国の傘下に戻ったとしても、勇者崩れに狙われるのは同じ。
ならば、ここで守ってもらった方が安全だよな。
その相手がこの国でもって思ってるのが過剰意見だが。
「国から面談を求められているんだが、それはどうする?」
「行く。 ジョブが無いのを見せれば納得するでしょ」
答えは一緒のようだ。
「教会で再取得しろって言われるかもよ?」
「それでジョブが戻るの?」
「さすがにレアジョブは引かないでしょ?」
異世界転移特典でもなければ、さすがにお目にかかれないジョブだよな。
それをもう一度引くなんて宝くじを2度当てるようなものか。
「まあ、ジョブが戻ったとしても、勇者パーティーでこき使われるのは嫌だから、断ってやるけどね」
「そうそう」
ああ、確かに。
先代以前の勇者も戦争に投入されたんだっけ?
今も北で戦争中らしいからな。
そういや王城に王女は居たけど、王子が居なかったのは、戦争に従軍中ってことか?
「戦争に行かされるのは嫌だもんな。
その時は国を捨ててでも守ってやるからな」
「期待してます」
「流石私が見込んだ男。
今夜抱かれても良いかも♡」
「要らんわ!」
なんか
任意で使えるとか恐ろしすぎるわ。
◇
善は急げではないけど、翌日には登城することになった。
今朝早々に迎えで女武者っ子が馬車と共に来た。
2人だけだと、そのまま軟禁されるなんてこともあるかと、俺も同行することになった。
まあ、俺は変身の指輪で偽装したままだけどね。
2人は、元の姿に戻っている。
どうせ正体を知られているのだ、偽装姿を認識されてしまうのも嫌かなというところだ。
王城の入口、それも正門へとやって来た。
俺が追放されたのは通用口だったから、微妙な気持ちになる。
まさか、正門から戻ることになるとは思ってもいなかった。
だが、今の俺はオーブ屋の店主とは仮の姿の名誉エルフの準王族なのだ。
まあ、正装が間に合わなかったから、いつも通りの冒険者装備姿だけどな。
それはしょうがない。
ただ、追放された召喚者だとだけは気付かれてはならない。
その点、バラさないようにギャル子と碧唯には言い含めてある。
正門を通過するにあたり、王家が手配した馬車で女武者っ子が乗っていても手心は加えられず、きちんと内部の確認を受けた。
衛兵隊司令長官が粛清され、衛兵たちも気を引き締めた結果だろう。
身分など関係なしにやることはやる。
これは良い傾向だろう。
お仕事ご苦労さん。
「ん? これは!」
王城の正門には最新式の警備魔導具が設置されていたようだ。
しかも、俺たち専用の無効化装置が無力化されているっぽい。
さすが、王城警備というところか。
そこらへん、有能な人物が関わっていて解析済みってことだろう。
だが、その改造は無理やりっぽかった。
違和感が残り、それに俺も気づかされた。
そして、衛兵の目の前で変身の指輪が解除されてしまった。
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