第191話 拓哉の真実

シノンギャル子碧唯優等生っ子は?」


 女武者っ子に真実を話してもらうため、俺は2人をリビングに呼ぶことにした。


「シノンは休憩。

アオイさんはタニアのところ」


 どうやら2人とも都合よくバックヤードに居るようだ。


「2人共奥にいるようだ。

こっちに来てくれ」


 女武者っ子を奥へと誘う。

猫っ子と犬っ子も奥へと向かうが、彼女たちはリビング脇を通過して、そのまま風呂へ直行だ。

外の汚れを落とすのだ。

女武者っ子もダンジョンの汚れが気になるかもしれないが、さすがに風呂に入るかなんて誘えないだろ。


碧唯優等生っ子シノンギャル子、2人に客だ」


 キッチンとリビングに居る2人に声をかける。

そして注目した先の女武者っ子を見て、2人して驚きの声を上げた。


彩香さやか!」

東雲しののめさん!」


 女武者っ子が入口の警報装置に引っ掛からないように、変身の指輪を解除していたために、2人は一目で訪問者の正体に気付いたのだ。

呼び方に距離があるのが面白い。

ちなみに名前呼びが碧唯優等生っ子で、名字呼びがシノンギャル子だ。


 しかし、2人は姿を偽装していた。

シノンギャル子はマノンとシセルを足して2で割った感じ。

碧唯優等生っ子が知り合いの女騎士を若くした妹という感じだ。

だが、そこは長い付き合いの仲。

女武者っ子も直ぐに気付いた。


「渚! 桃井さん!

無事だったのね!」


 それは、さっきと同じ距離感だった。

シノンギャル子との間は、やはり余所余所しさがあるな。


 ここはオーブ屋のバックヤード。

人目は無くタニアも守秘義務があったので、2人は変身の指輪を解除した。

3人が手を繋いできゃぴきゃぴと飛び跳ねる。

再会を心底喜んでいる様子だ。


「御覧の通り、2人を保護している。

なぜ2人がここに辿り着いたのか、本人たちに訊いてみると良い」


 女武者っ子には事実を知ってもらわないとならない。

おそらく立場上、このまま出奔するわけにはいかないのだ。

王宮に帰っても、ここの話をしてはまずいと思ってもらわなければならない。


「お願い、本当のことを教えて。

拓哉に何をされたの?」


 俺が促すと、女武者っ子が頷いて2人に真実を訊ねた。


「それならば、私から」


 シノンギャル子が経緯を話し始めた。


「拓哉に誘われて訓練ダンジョンに行ったんだけど、そこで拓哉が私に触れて大声を出して、そうしたら急にスキルが上手く使えなくなって。

拓哉が私の事を結婚の邪魔だって言い出して……。

その目が怖くなって逃げたら後ろから斬られたんだよ。

あいつは公爵家の令嬢に乗り換えたんだ。

その後は偶然冒険者に見つけられて高価なポーションを使ってもらって助かったんだけど、そのお金が払えなくて奴隷落ちだよ」


 訓練ダンジョンというのは王宮騎士の俗称で、普通に冒険者も来るダンジョンだったから助かったんだよな。

勇者拓哉は知らなかったかもだけど。

もし誰も来ないと思っていたならば、放置されたシノンギャル子が死んでしまうだろうと確信していたはずだ。

それにしても、拓哉が大声を出したというのは俺も初めて聞いたぞ。


シノンギャル子、勇者拓哉が出した大声ってなんだ?

以前は言ってなかっただろ?

それでジョブを無くされたんじゃないのか?」


 つまり、勇者拓哉のそのスキルは接触型。

大声な理由はわからないが、それが発動条件か?


「ああ、そうかもしれない。

拓哉は必殺技を叫ぶ癖があったから。

またそれだと思って何を言ったかは聞き流してたから」


「私の時もほぼ同じ流れ。

私は闇オークションに売られたけど……。

だけど、その大声の内容は少し覚えているわ。

たしか『スなんとかブレーカー』よ」


 碧唯優等生っ子がその大声の一部を覚えていた。


「拓哉って、必殺技に変な節をつけるからね。

巻き舌でやるんだよね」


「あんの野郎!」


 あ、女武者っ子が真実を知って激怒してしまった。

勇者拓哉を殺さんという勢いだ。


「待て、もしそのスキルがジョブやスキルを消せるか奪えるならば、今度は君が危険だぞ!?」


 そして、ダンジョンでの三つ巴の戦闘の結果も、そのスキルの使用次第で覆っているかもしれない。

【隠蔽】で姿を隠したから、俺たちがいつまで現場にいたか勇者拓哉は知らない。

もし、そのスキル使用を見られたと勇者拓哉が思ったら、その後どうする?


「勇者拓哉は、俺たち含めて君も殺そうとするぞ?

君には、ここに留まって貰った方が良さそうだ」


「だけど、栄斗が向こうに……」


「恋人さんは、何も知らない方が安全だぞ。

頃合いを見て、勇者拓哉が居ない間に話を通すべきだ」


「大丈夫なの?」


 女武者っ子が不安そうに碧唯優等生っ子シノンギャル子に訊ねる。

何が大丈夫かって、俺が変態扱いだからか!


「大丈夫よ。

彼、奥さん居るし、他の皆にも手を出してないから」


「こっちから手を出さなければ基本ヘタレだしね」


「桃井さん! まさか!」


「いや、私がバッドスキルの発作で襲っただけだから」


「変態のうえロリコン!」


 女武者っ子が俺にロリコンの属性を追加した。

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