第60話 魔素活性柱と四天王
四天王が俺の破壊行為も止めず、破壊した後にも顔を出さなかったと言う事は、この柱が他もあるからだと容易に想像出来る。
まずは報告がてら、俺は仁さんに家に向かった。
「何やて? 柱があった?」
「そう、あの最初に破壊された封印石の神社に。ものすごく大きい柱だった」
「つまり、認識阻害の魔法が発動しとったんやな」
「多分」
半纏を着た仁さんは、飲みかけのココアを一気に飲み干す。それから舞鷹市の地図を持ってきてテーブルの上に広げた。それから、持っていたマジックですぐに神社に丸をつける。
「誠はどう見る?」
「え?」
「また封印石みたいに五芒星を作っとると思うか?」
「いや分かんないす」
俺は感知魔法については全然勉強していない。何とか覚えようとはしたけど、眠くなってまだ未習得だった。それに、感知と言えば仁さんの方が得意だろう。マーガを発見出来ているし。あれ、俺には出来ない。
俺が地図を眺めて首をひねっていると、仁さんがフーチを持ってきた。
「まずはやってみよか。フーチは基本誰にでも出来るらしいで」
「いや瞳さん呼べばいいじゃないすか」
「いつも瞳が近くにいるとも限らんやろ。だから練習はしておいた方がええ」
仁さんに説得されて、仕方なく俺はフーチを使った探索を始める。100%見様見真似だ。やり方自体は瞳さんのを見ていたから真似事みたいな事は出来る。問題は、正しいとか間違いとか指摘してくれる人がいないと言う事だ。
俺は垂らした重りの先を見つめながらため息を吐き出して、ポツリとつぶやく。
「まだ真紀さんの方が当たると思いますよ?」
「いや、今は速さが重要なんや。女性陣は今日まで休みやろ?」
「じゃあ仁さんがやればいいじゃないですか」
「ワシは……こう言うの苦手なんや」
何やかんや言いくるめられ、俺は意識を集中させる。基準は俺が魔素活性柱を壊したあの神社だ。この神社にある何かしらの気配でチューニングして、俺は地図の上で重りを滑らせる。
そうしていると、指の先が不思議な感覚を教えてくれた。
「うん? これは……?」
俺が場所を突き止めかけた時、タイミング良くインターホンが鳴る。仁さんが対応すると、来客はズカズカと勢い良くこたつのある部屋に近付いてきた。
段々大きくなる足音に俺はちょっとビビる。
「ちょーっと待ったァァァ!」
現れたのは西部劇のガンマン風な衣装を着た真紀さんと、いつものように黒で決めた瞳さん。威風堂々としている真紀さんとは対象的に、瞳さんは恥ずかしそうに彼女の後ろに隠れていた。
俺は一日早い彼女達との再開に目を丸くする。
「あ、あけましておめでと」
「あ、おめでとうございます。じゃないわよ! そう言うのは私達に任せなさい」
「え?」
「誠君達が動き始める予感がしたから来たら案の定よ。それは私達の仕事でしょ」
真紀さんいわく、正月は暇で仕方なかったらしい。そこで瞳さんを誘って遊びに来たと言うのが真相なのだとか。その途中で嫌な予感をキャッチしてこう言う流れになったようだ。
俺はすぐに探索を2人に任せ、その様子を見守る。仁さんは2人にぜんざいを作って提供した。作業を一旦中断した2人はぜんざいを美味しそうに食べ始める。
「美味しいわねこれ」
「せやろ? まぁ全部市販品やけどな! ガハハ」
「魔素活性柱の反応、結構多いです。5ヶ所はあります」
「なんやて?」
瞳さんによると反応の濃いのだけで5ヶ所、薄いのも含めるとその倍はあるとの事。俺達はすぐにその反応の濃い5ヶ所に向かう。素早く移動するためと、そこに四天王がいる可能性も考え、変身して2人で向かった。
瞳さんが指し示した5ヶ所は山の中の工場跡、耕作放置された元田んぼの中、建設途中の橋桁の近く、地元を流れる川の中州、山を切り開いてそのまま放置されている原っぱ。そのどこにも柱は立っていて、そのどれにも四天王もマーガすらいなかった。ひと気のない場所に大きな柱だけがそびえている光景は中々にシュールで、悪夢のワンシーンのようにも見える。
指定された場所に着いて柱が見つかると、ピンクが積極的に破壊していった。
「ていっ!」
どこの柱もパンチ一発で呆気なく崩れ去っていく。こうして全ての魔素活性柱を破壊した俺達は、残りの柱の情報を教えてもらう。その頃には反応の薄かった場所もしっかり確定しており、俺達は順番にタスクをこなしていった。
最後のひとつを破壊しようとした時、背後に強力な4つの気配が現れる。俺達が振り向くと、四天王が本来の姿で勢揃いしていた。
その中の1人、身長3メートルのヒュラが俺達をギロリとにらみつける。
「何してくれてんだ? あぁ?」
「小生、日本人は正月三が日は働かないって聞いておったのだが……」
「そうよ!今日までアホみたいに休んでなさいよ! 折角建てたのを全部壊して! 何してんのよ馬鹿!」
「オデ……オマエら、ゆるさない!」
やはりこれらの柱を建てたのは四天王のようだ。今まで不眠不休で頑張っていたのか、全員目の下にくまがある。これなら楽勝で倒せるかも知れない。俺達はステッキを握り直して戦闘態勢を取る。
対決姿勢になったところで、ピンクが四天王を挑発した。
「いいわよ。相手してあげる」
「何だその態度は! 人様の物を壊したらまずごめんなさいだろうがァ!」
激高したヒュラがまず動いた。新しい指輪になったピンクはヒュラより早く動いて彼を翻弄する。1対1ならピンクの方が有利にバトルを進められるだろう。
けれど、今は四天王が全員揃っている。数の上では不利だ。俺もすぐに参戦して警戒を強めた。
「マジカルブルースターネオ!」
ステッキの先から無数の青い矢を放つ。それらが残りの四天王達の頭上に降り注ぎ爆発を起こした。その威力は感覚的に言って以前の数倍にもなっている。
俺はパワーアップした自分の力を実感して、拳を強く握った。
「ヨシ!」
「何がヨシだぁ? 小生達はこの通りピンピンしておるわ」
爆煙が消えると、無傷の3人がそこに立っていた。魔法の矢が狙っていたのに微動だにしなかったのは、攻撃に耐えられる自信があったからのようだ。
この結果に俺は認識を改める。ヤツらも以前よりパワーアップしていると。
「ピンク! 油断しないで!」
「分かってる!」
ヒュラと一騎打ちしているピンクも苦戦しているようだ。お互いに体力特化で格闘戦をしていて、全くの互角の攻防を繰り広げていた。目で捉えきれないほどの超高速バトルだ、ちょっとあの中には入れないな。
仕方なく、俺は残りの3人を1人で相手する事になった。ヌーンは搦手が得意なので複数戦では前に出てこない。シーラも何か時間のかかる呪文を唱え始めている。と言う訳で、速攻で迫ってきたのはトカゲ男のガドリスだ。
「オデ、お前をコロス……コロス……コロ」
「怖っ! ファイマックス!」
「ギュワッ!」
制限の外れた火炎魔法は爆煙魔法にレベルアップしていた。その大量破壊兵器じみた威力には、流石のガドリスもひっくり返る。その桁違いの破壊力には、俺の方が驚いてしまった。
「嘘? こんなに怖い魔法になっていたなんて」
「くっ。ま、まだまだ……なんだな」
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