第42話 しっかり海でリフレッシュ
「それより2人はどんな水着なんやろなあ」
「セクハラにならないように言葉には気をつけないとですね」
「まぁ似合とる言うたらええやろ」
「後は視線ですよね」
「ああ、こればっかりはなあ」
浜辺に出ると、当然のように人はまばらだった。流石にゼロではなかったので逆に俺は感心する。実際、今までの俺の海体験は近場の浜辺で、海水浴場に来る事自体が初めての経験だったからだ。
海の家も実物を見るのは今日が初めてだ。実在していたのかと感動してしまった。やっぱり昼ごはんは定番のカレーかなあ。
先に出てきた俺と仁さんでメインでくつろぐ場所を決める。人がほぼいないので場所は選び放題だった。花見の時とは逆だなあ。ま、これも朝の早い時間に着いたからだけど。10時すぎに来ていたら、ここでも場所決めに難儀する羽目になっていたかも知れない。
シートを敷いて、ビーチパラソルを立てる。この行為も初体験だ。まさか俺がこんなリア充な事をする事になるとは思わなかった。初めての体験だけに、やるだけやったもののこれで正解かどうか自信がない。見た目だけはクリアしている気がするんだけどな。
そんな準備をしている内に女性メンバーも俺達の存在に気付いてやってくる。
「いい場所を選んだじゃない」
「ほうやろ」
「あ……」
俺は2人の水着姿に目が釘付けになる。瞳さんは黒のセパレートタイプの水着だ。恥ずかしそうにしているのが可愛い。海に来ているだけあってメガネをかけていない姿も新鮮だ。普段から中学生に見える童顔と体型だけど、水着姿になってもそれは変わらなかった。やはりそっち系の人にモテそうだなあ。
「メガネなくて大丈夫なの?」
「あ、裸眼でも結構見えるんです」
瞳さんは眼鏡が似合っていたから、裸眼だと普通の顔に見える。個人的にはメガネをかけている方が好みかな。メガネを外したら美人って展開が昔の少女漫画とかではよくあったけど、誰もがそうじゃないんだなと俺は実感する。
「あの……あんまり見ないでください」
「あ、ゴメン」
「あら? あたしはジロジロ見ちゃってくれていいわよお」
「!!」
真紀さんの水着は布面積の少ない超ビキニ――だと思っていた俺の予想は覆された。彼女が着ていたのは真っ青な競泳用水着だったのだ。ビキニじゃないからって、こちらも結構際どい。大きな胸は強調されているし、何より超ハイレグだ。目のやり場に困ってしまう。
俺はすぐに視線をそらした。でないとまともに動く事も出来なくなるからだ。
「あら。誠君はウブなのねえ。フフフ……」
「今まで異性と縁がなかったんやろ。あんまりからかわんといてくれや」
意外な事に、仁さんはこのセクシーダイナマイトと普通に会話をしている。つまり、場数を踏んでるって事だ。若い頃は結構ブイブイ言わせていたんだろうか。まぁ見た目マイルドヤンキーみたいだしなあ。
普段プラベートな事は聞かないから、こう言う時にそう言うところが垣間見えると困ってしまうんだよな。どう接していいのか分からなくなる。
「で、ここまで来て言うのもアレやけど、どんな事が起こるって言うんや?」
「あたしが見たのは逃げ惑う海水浴客の姿よ」
「マーガが出るんやな? じゃあなんで全員で? ワシら魔法少女だけでええやろ?」
「だってえ、みんなで海に来たかったんだもん」
真紀さんいわく、現れる敵は大した事はないらしい。だからこそ、みんなで遊びたかったとの事。つまり、俺達はハメられたと言う訳だ。昨日のお告げが出た時点で、もっと詳しく聞いておくべきだったんだ。
まぁ、こうして彼女の目論見も分かった訳で、俺達は改めて海を満喫する事にした。折角海水浴場に来たんだ。楽しまなきゃ損だよな。
「しゃーない。敵が出てくるまで暇やし、泳ぐか」
「皆さんはどうします?」
「ぼ、ボクはここで」
「荷物はあたしが見てるから泳ぎに行ってきなさいよ」
真紀さんに背中を押されて、瞳さんも泳ぐ流れになった。敵は昼過ぎに現れるそうなので、それまでは何も気にせずに遊ぶ事が出来る。とは言え、その相手が中年のおっさん2人と言うのはネックかもなあ。
彼女は恥ずかしそうにしながら、俺達の前まで歩いてきた。
「じゃああの、よろしくです」
「おう、しっかり海を楽しもうな」
こうして俺達は瞳さんも加えて地元の海を満喫する。海で泳いだり水遊びをしたりと、若い女性とこんな事が出来る日が来るとは思わなかった。ああ、俺、魔法少女になって良かったなぁ。
俺の予想通り、日が高くなって暑くなってくると海水浴客が増えてくる。もう夏休みに入っているので、家族連れや友達同士ではしゃぐ姿が目に飛び込んできた。これが海水浴場の光景なんだなぁ。いいなあ。その中に俺達も入っているんだなぁ。
午前11時を回って、俺達は早めの昼食を取るために海の家に向かう。敵が襲ってくる前に済ましておかないといけないからだ。色々あって、目の前に注文した料理が並んだ頃には11時半を過ぎていた。
「誠のカレーも美味そうやな」
「仁さんのラーメンも美味しそうですよ」
「瞳ちゃんは焼きそばだけでいいの?」
「真紀さん、お酒飲んじゃうんですか?」
俺達の中で、やはり真紀さんだけが場馴れしている感じがする。だって昼間からビールを飲んでいるのだから。勿論周りのお客さんで酒を飲んでいる人は少なくない。ただ、やはり海の家初心者はいきなりそう言う行動には出られないのだ。俺達の中でも飲酒しているのは彼女だけだし。
仁さんもこう言う場所じゃ飲みそうなものだけど、後でマーガとのバトルが待っているから控えているんだろうな。
海の家でのランチは、この場所特有の雰囲気もあってとても美味しく感じられた。他の場所で食べたらあんまり記憶に残らないような気がする。
食べ終わって外に出るといきなり悲鳴が聞こえてきた。きっとマーガが出たのだろう。俺と仁さんはうなずき合ってすぐに建物の裏手に回った。
「「へんしーん!」」
お互いに魔法少女になって、すぐに騒ぎの現況のもとに駆けつける。そこにいたのはリザードマンと大きなサメのマーガだった。マーガはサメ映画みたいに空中に浮かんでいる。
リザードマンは俺達に気付くと目を丸くした。
「なんで? なんでお前達がここに?」
「正義と慈愛の魔法少女、ピュアピンク!」
「秩序と博愛の魔法少女、ピュアブルー!」
「お、オデはガドリスだど! 四天王の1人だど!」
リザードマンのガドリスは早速サメマーガに攻撃命令を下す。すごい勢いで迫ってきた敵に対して、俺達は息を合わせて構えを取った。
「「ダブル魔法少女パーンチ!」」
「ギュワアアアア!」
「こ、こっちくんなうわァァァッ!」
パンチで吹っ飛んだマーガは、ガドリスを巻き込んで空の彼方に飛んでいく。占いで結果は分かってたけど、まさか一撃で倒せるとは……。
その後、俺達は変身を解き、騒ぎが収まった海水浴場も通常の賑わいを取り戻す。結局俺達は午後3時まで海で遊んでしまった。まぁそう言う日があってもいいか。
4人でビーチバレーをしていた時、白ビキニのレイラを目にしたような気がしたけど、アレは目の錯覚だったのか、それとも――。
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