FOG

@fddlovefdd

第1話 楽しいツーリング

「ねえ、大丈夫?」

「大丈夫、猫にご飯だけあげといて。朝には帰るから」

軽い会話をして家を出た。

「モバイルバッテリーに...あ、手袋忘れた!」

家に戻ると彼女が手袋をもって玄関口に立っていた。

「ハイ、ほんと気を付けてよね」

「サンキュー、じゃあ行ってくるね」

バイクでの遠出は初めてではないし、県外に行くわけでもない。

富士山までの一人でツーリング、夜は交通量も少ないし気楽に走れる。

「フー、さむさむ」

週末だからかいつもの夜より交通量が多い。

30分くらいは走っただろうか、コンビニで腹ごしらえをする。

「ありがとーございましたー」

外で食べるファミチキとおにぎりの組み合わせはうまい!

そして至福の一服までがセット。

「あのーすいません、今日って何年の何月何日ですか?」

「ハイ?え、2019年じゃなかったかな、12月13日だけど」

なんでこんなわけのわからない質問にド真面目に答えたかというと、

大泣きしたんだろうと想像できるほどメイクが崩れていたし

ベッピンだったから、以上。

「そうですか...」

「大丈夫ですか?なんかありましたか?」

そう聞いても無視して彼女はコンビニの店内に入っていった。

ちょっとむっとしたが、気持ちを入れ替え俺はバイクにまたがった。

「でもかわいかったなあ」

スマホのマップ通り進んでいく、まっすぐな道も終わり山道に変わった。

「ハイビーム!」

ヘルメットの中で怖さを紛らわすように大声で叫んだ。

「うわ、鹿じゃん」

鹿と目があった。

「もう人間の乗り物にはビビらんか...」

微動だにしない鹿と目があったのは数秒もなかっただろうが少し長く感じた。

「霧?えらい濃いな」

山道を進んでいくごとに少しづつ霧は濃くなっていた。

「うわっ鹿‼」

口に出しながら僕は宙に浮いていた。




バイクで事故なんて初めてだった、もうどれくらい寝ているのだろう。

森の木漏れ日がとても綺麗だ。

そんな風にボーっとしていたらケッパコに乗ったおじちゃんが来た。


「にいちゃん!大丈夫??」

「あ、大丈夫です。あれ、全然体痛くないや」

「おーならよかったけん、道でバイクと人が寝てるからびっくりしただよ」

「すいません、ありがとうございます。鹿とぶつかったみたいで」

「鹿?そんなでかいバイクに轢かれたちゅーに、鹿は死ななかっただね」


鹿の死体、血すらなかった。ずいぶん丈夫な鹿だったのか。


「にしてもそのバイク未来のバイクみたいやね、まあきおつけてや。」

と言い残しケッパコのおじちゃんは走り去っていった。


バイクは無事だった、横にはにはでっかい傷はついたが。

電話で彼女に連絡しようとしたが圏外だったのでとりあえず近くのコンビニまで走ることにした。


「あーあったあった、ここなら電波が...ない」

wifiならあるかと接続を試みたが無料のwifiどころかwifiが一つもなかった。

山中だしまあ仕方がないかとのんきに考えていた。

「あ!さっきの兄ちゃん、ぴんぴんしてるじゃん」

「さっきはどうも、この通り!ぴんぴんです!」

スパーマンのポーズをして見せたが、無視された。

「そういえばここ電波届かないですね携帯の電波届かなくて困っちゃいましたよ」

「ん?いや電話ならここでもつながるぞ、いつも使ってるし」

「え、見てくださいほら。圏外なんです」

圏外と右上に表示されてるiPhoneをおじちゃんに見せてみた。

「なんじゃそれ、携帯?黒い板じゃねーか」

「iPhoneですよ、アップルの」

時代遅れなのかかっこつけなのか、ちょっと鼻についた。

「へー、しらんな。兄ちゃんは変わったもんばっかっ持ってるな、バイクも」

「あー、まあハイ」

何言ってんだこのおじちゃんはと思いながらコンビニの店内にむかった。

「こんな赤いコンビニあったっけ?」

と思いコンビニの上のほうを見た。


「え、サークルK?」


おじちゃんのところに戻って僕は聞いた。

「えっと、あの今日って何年の何月何日ですか?」


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