第13話 運河でパーティーをする事になりました
スカーレット様が急にそんな事を言いだしたのだ。なぜそこで、ダルク様の名前が出てくるのだろう。
「スカーレット様、ダルク様にも選ぶ権利がございますわ。それに、彼は結婚しないと決めているのでしょう?」
「そう言えばダルク様、ずっとアンジュ様を見つめていらっしゃるわよね。もしかして…」
「私もそれ思ったの。いつも人間には興味はありません!みたいな顔をしているのに、なぜかアンジュ様には熱烈な視線を送っているし」
「今日も4人でお茶をしていたのですが、じっとアンジュ様を見つめていらしたのよ」
皆があり得ない事を言い始めたのだ。
「皆様、落ち着いて下さい。きっとたまたまですわ。それに今日のお茶の時だって、飴細工が欲しくて私を見ていた様ですし…」
あのダルク様が、私を好きだなんて、絶対にあり得ない!これだけは、はっきりと言える!
「そうかしら?まあ、自分の事になると、周りが見えなくなることもありますのもね…ねえ、アンジュ様、留学期間を延ばすことは出来ないのですか?せっかく仲良くなったのに、後1ヶ月でお別れだなんて、寂しいですわ」
「そうですわ。私ももっと、アンジュ様と一緒にいたいです。そうだわ、卒業までこの地にいらしたらいかがですか?」
他の令嬢たちも、嬉しい事を言ってくれる。でも…
「ミラージュ王国からは、半年と言われております。それにもしかしたら、この国に留学を希望している方がいらっしゃるかもしれませんので」
「そう…確かに決まりは決まりだものね…残念だわ…」
心底残念そうにしてくれる令嬢たち。
「皆様、ありがとうございます。私、皆様にそう言ってもらえるだけで、とても嬉しいですわ。後1ヶ月ですが、目いっぱい思い出を作りたいと思っておりますの。どうかお力添え、よろしくお願いしますわ」
「そうですわよね…沢山思い出を作らないと、勿体ないですわよね。ねえ、アンジュ様、ミラージュ王国の王都の街には遊びに行った事はありますか?」
「はい、先日スカーレット様に連れて行っていただきましたわ。運河というものも、近くで拝見させていただきました。本当に素敵な国ですわね。いつか運河を船で横断出来たら素敵ですわ」
「まあ、アンジュ様は、運河を横断したいのですか?それでしたら、父に頼んで船を手配いたしますわ」
「昼間の運河も素敵ですが、夜の運河もまた綺麗ですわよ。せっかくですから、大きな船を貸し切って、パーティーを開きましょう」
「それ、いいですわね。それじゃあ、殿方も呼びましょう。でも、大きな船と言っても、せいぜい20名程度しか乗れませんので、クラスメイトにだけ声を掛けましょう」
「それでは明日、貴族学院が終わってからというのはどうですか?」
「いいですわね、そうしましょう」
えっ?今日の明日で、そんな大きな船を貸し切れるの?さすが上流貴族の方たちだわ…
「アンジュ様、ドレスは持っていますか?もしご準備していないのでしたら、私のドレスをお貸ししますわよ」
「ありがとうございます、スカーレット様。一応ドレスは準備しておりますので、大丈夫ですわ」
どうやらドレスで参加する様だ。まあ、貴族たちがパーティーを開くのだから、ドレスで参加は普通か。部屋に戻ったら、すぐにカリアに頼んで、準備してもらわないと。
翌日
急なパーティーにもかかわらず、ほとんどのクラスメイト達が参加してくれるとの事。もちろん、王太子殿下やダルク様も参加するらしい。
貴族学院が終わると、一旦部屋へと戻ってきた。
「お嬢様、おかえりなさいませ。ドレスの準備は出来ておりますよ。せっかくのパーティーなのです。しっかり着飾っていきましょう」
既に大張り切りのカリアに、浴槽へと連れて行かれ、体中を磨かれる。そして私の瞳の色に合わせ、水色のドレスを着た。
「お嬢様、よくお似合いですわ。やっぱりお嬢様は、水色のドレスがよくお似合いですわ。緑色より、水色ですわね」
カリアがそう強調する。緑色か…
カリオス王国にいた頃は、デイビッド様の瞳の色でもある、緑色のドレスを好んで着ていたのだ。
「はい、準備が整いましたよ。お嬢様、目いっぱい楽しんできてくださいね」
「ありがとう、カリア。それじゃあ、行ってくるわね」
満面の笑みのカリアに見送られ、部屋を出る。宿舎の玄関に行くと、既にドレスアップした令嬢たちが待っていた。
「アンジュ様、こちらですわ。さあ、参りましょう」
令嬢皆で馬車に乗り込む。なんだかドキドキしてきたわ。
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