第7話 やっぱり辛いです
翌日、気を取り直して学院へと向かう。教室につくと
「皆様、おはようございます!」
元気に挨拶をしたのだが、誰も返事をしてくれなかった。それどころか、冷たい視線を送られる。なんだか無性に悲しくなって、すぐに自分の席に着いた。
「凄いわね…マリン様にあれだけ色々と言われたのに、今日普通に来たわよ。さすがね」
「本当よね。私だったらショックで、学院には来られないわ。きっともう、帰る場所がないのよ」
私に聞こえるような大きな声で、私の悪口を言う令嬢たち。私は別に何も悪い事をしていない。それなのに、どうしてこんな酷い事を言われないといけないのだろう…
そう思ったら、涙が込みあげてきた。ダメよ、泣いたら…
必死に涙を堪える。この日ももちろん、1人で過ごした。一番辛いのは、お昼休みだ。他の皆が楽しそうにテラスや教室で食事をしている中、私は独りぼっちなのだ。
教室にいるのが辛くて、学食で買ったサンドウィッチを持って、1人校舎裏で食事をする。
どうして私がこんな目に合わないといけないのだろう…私が何をしたというのかしら?悔しくて悲しくて、涙が溢れ出す。
もしかしたら、今までデイビッド様の気持ちを無視して、彼に婚約を申し込み続けて来たから、罰が当たったのかしら?そんな事まで考えてしまう。
私はデイビッド様を忘れるためにこの地に来たのに…楽しい学生ライフを夢見て。でも現実は…
そう思ったら、涙が止まらなかった。
結局この日も、誰とも話すことなく1日が終わった。
翌日も、その翌日も、1人で過ごした。それが辛くて悲しくて辛い。
こんな事なら、カリオス王国にいた方が良かったわ。カリオス王国には、お父様やお母様、レイズ、それに沢山の友人たちもいる。確かにデイビッド様もいらっしゃるけれど、それ以上に大切な人たちがいるのだ。
学院から戻ると、体調がすぐれないとカリアに伝え、すぐに布団に潜り込んだ。
「帰りたい…カリオス王国に…」
ついそんな事を呟いてしまう。それでも私は、帰る訳にはいかないのだ。でも…
気が付くと涙が溢れていた。もう学院になんて行きたくない。あそこには、私と仲良くしてくれる人は誰もいない。話しかけても無視されるし、大きな声で悪口だって…
そもそも、私の何を知っているのだろう…
「お嬢様、大丈夫ですか?」
1人布団にもぐって静かに泣いている私に声を掛けてきたのは、カリアだ。
「カリア、あなた部屋から出て行ったのではなかったの?」
「お嬢様が心配になって、戻って来たのです。お嬢様、学院でお友達が出来ずに悩んでいらっしゃるのではないのですか?」
「どうしてそれを?」
「あなた様の専属メイドを、何年やっていると思っているのですか?私はお嬢様の事なら何でも知っています。それで、一体何があったのですか?」
優しく問いかけてくるカリア。私はカリアに、今までの出来事を泣きながら話した。
「お可哀そうに、そんな辛い日々を送っていらしたのですね。気が付く事が出来ずに申し訳ございません」
そう言って謝るカリア。
「どうしてあなたが謝るの?カリア、今日話を聞いてくれてありがとう。あなたに話しをしたら、少しだけ心が楽になったわ」
「何をおっしゃっているのですか?それにしても、この国の人間は、なんて心が狭く汚いのでしょう。そんな人間しかいない学院に、傷ついたお嬢様をこれ以上置いておく訳にはいきません。お嬢様、すぐに帰国しましょう。きっと旦那様も、今のお嬢様の状況を聞いたら、すぐに帰って来いとおっしゃるでしょう。とにかく私はすぐに旦那様に連絡を入れて…」
「待って、どうかお父様にはまだ言わないで。今まで散々心配をかけたのですもの。私、もうちょっとこの地で頑張ってみるわ」
「お嬢様、一体何をおっしゃっているのですか!あなた様は、心の傷を癒すためにこの地にやっていらしたのでしょう。それなのに、傷口を広げる様な事をしてどうするのです。とにかくすぐに帰国しましょう」
真剣な表情でカリアが訴えてくる。でも…
「私の事を心配してくれて、ありがとう。でも…私、もう少しこの地で頑張ってみたいの。せっかく大切な皆が送り出してくれたのですもの。そんなにすぐに帰る何て、なんだか送り出してくれた皆にも申し訳ないし、何より私自身が嫌なの」
「お嬢様…」
「お願い、もう少しだけこの地で頑張らせて。それでももしダメだったら、諦めて帰国するわ」
「分かりました…でも、絶対に無理はしないで下さいね」
「ありがとう、カリア。それじゃあ、今日はもう休むわね」
カリアに話しをしたら、なんだか心が少しすっきりした。もしかしたら、このまま私をこの国の人たちが受け入れてくれることはないかもしれない。でも…もう少しだけ頑張ってみよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。