第6話 留学1日目を迎えました
翌日、真新しい制服に袖を通した。
「お嬢様、その制服、とてもよくお似合いですよ。たくさんお友達が出来るといいですわね」
「ええ、正直不安な気持ちもあるけれど、今は楽しみな気持ちの方が大きいわ。それじゃあカリア、行ってくるわね」
「はい、行ってらっしゃいませ」
カリアに見送られ、部屋を出る。そしてまずは、職員室へと向かう。
「アンジュ・スィークルンと申します。今日からよろしくお願いいたします」
「君がアンジュ殿だね。それじゃあ、教室に向かおうか」
担任の先生に連れられ、教室へと向かう。なんだか緊張してきたわ。
「それじゃあ、私が呼んだら入ってきてくれるかい?」
「はい、分かりました」
先生が先に教室に入って行く。どうやら他の生徒たちに、私の事を話している様だ。増々緊張してきたわ。
すると
「アンジュ殿、入ってくれ」
先生から声を掛けられた。緊張しながらも、ゆっくり教室へと入って行く。
そして
「カリオス王国から来ました、アンジュ・スィークルンと申します。どうよろしくお願いいたします」
クラスメイトの方たちに向かって、頭を下げた。ただ…なぜか皆固まっている。どうしたのかしら?
「それじゃあ、アンジュ殿は一番後ろの空いている席に座ってください。では、授業を始めます」
先生に指定された席に座る。ふと隣の令嬢を見ると、スッと目をそらされてしまった。もしかして私、皆に歓迎されていないのかしら?なんだか不安になって来た。
授業が終わると、クラスメイト達は仲良しの人たちと固まって楽しそうに話しをし始めた。私の周りには、もちろん誰もいない。どうしよう…
とりあえず、近くにいたグループに声を掛けてみる事にした。
「あの…」
すると、なぜか皆スッと私を避けるようにどこかに行ってしまったのだ。
今あからさまに私を避けたわよね。どうして…
その時だった。
「こんな中途半端な時期に転校してくるだなんて、あなた一体どんな悪さをしたの?」
私に話し掛けてきたのは、1人の令嬢だ。後ろに3人程度の令嬢を従えている。
「私は悪さなど…」
「前に留学してきた子は、王太子殿下に婚約破棄をされてこの国に逃げてきた子だったわ。本当にどうしようもない子で、我が国の王太子殿下に色目を使ったり、殿下の婚約者のスカーレット様に嫌がらせしたりと、本当に嫌な子だったの。それで、あなたは一体何をしてこの地に飛ばされてきたの?」
「私は悪さなどしておりませんわ。本当です」
「それならどうして、こんな時期に留学なんて?本来留学は、学期の始めと決まっているものよ。それもあなた、侯爵令嬢のくせに、一番グレードの良い部屋にいるそうじゃない。我が儘な令嬢って、なぜか親も常識がないのよね」
そう言って令嬢が笑っている。酷い、お父様の事まで悪く言うだなんて…悔しくて、涙が込みあげてきた。でも、ここで泣く訳にはいかない。
「とにかく、あなたが何を企んでいるか知らないけれど、あなたの好き勝手にはさせないからね」
そう言って去って行った令嬢たち。
どうやら私は、いわく付きの令嬢だと思われている様だ。その後も私に近づく人は誰もいなかった。
1人寂しく部屋に戻る。すると
「お嬢様、それで、学院はどうでしたか?お友達は出来ましたか?」
部屋で待っていたカリアが心配そうに駆け寄ってきた。
「ええ、もちろんよ。とても楽しかったわ。私ね、もうお友達が出来たのよ」
「そうですか。よかったですわ」
心底ほっとした表情のカリア。その表情を見た瞬間、胸がチクリと痛んだ。もし私が、クラスメイト達に嫌われ、無視されていると知ったら、きっとカリアも悲しむだろう。
「なんだか今日は初めての学院で疲れちゃったから、少し休むわ」
「分かりましたわ、長旅の後すぐに学院生活が始まったのですものね。どうかゆっくりしてください」
カリアがすぐに着替えさせてくれた。カリアの優しさが、胸に突き刺さる。
正直既に帰りたい。でも…
私の事を思って送り出してくれた家族や友人たちの事を考えると、口が裂けても帰りたいだなんて言えない。
私、こんな状態で半年も過ごせるかしら?
いくら私が皆と仲良くしようとしても、彼らが受け入れてくれなければどうしようもない。
これからどうしよう…
て、弱音を吐いていたらダメよね。私の事を知ってくれたら、もしかしたら皆、私の事を受け入れてくれるかもしれない。とにかく、根気強く認めてもらえる様に、努力するしかない。明日からも頑張ろう。
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