第5話 ミラージュ王国に着きました

「見て、カリア、あんなにも大きな噴水があるわ。あら、あそこにも」


「お嬢様、落ち着いて下さい」


は~っとため息を付くカリア。


屋敷を出て5日目、ついにミラージュ王国の王都に入ったのだ。美しい国だとは聞いていたが、想像以上に美しい。王都の中心には、運河が流れていて、その周りにたくさんの建物が建っているのだ。


さらにあちこちに噴水もある。


「ミラージュ王国は、別名水の都とも呼ばれておりますから。それにしても、大きな運河ですわね。私も初めて見ましたわ」


なんだかんだ言って、カリアも身を乗り出して窓の外を見つめている。


「そうでしょう?ねえ、カリア。後で運河を見てみたいわ。ほら、船も出ているみたいだし。あの船、乗れるみたいよ」


「本当ですね。どうやらあの船を使って、向こう岸に向かう様ですわ」


「立派な橋が架かっているのに、わざわざ船で渡るだなんて。でも楽しそうね」


「さあ、お嬢様、貴族学院が見えて参りましたよ」


目の前には立派な学院が。やはりこの学院にも、大きな噴水がある。


「それでは私は、受付をして参りますので、お嬢様は馬車の中で少々お待ちください」


そう言って1人降りていくカリア。今日から半年間、この学院でお世話になるのね。なんだかドキドキしてきたわ。友達、出来るかしら?


そんな事を考えていると、カリアが戻ってきた。


「お嬢様、どうぞこちらへ」


カリアに連れられ、学院の中に入って行く。まず案内されたのは、学院長室だ。そこで学院長に挨拶をした。そして次に向かったのが、女子寮だ。さすが貴族学院の寮だけの事はある。とても広くて立派だ。そこで寮長にも挨拶をした。


どうやら外部の人間を雇っている様で、とても優しそうな女性だった。


「さあ、お嬢様のお部屋はこちらの様です」


案内された部屋に入る。


「まあ、素敵な部屋ね。こんな立派な部屋が与えられるだなんて」


「貴族学院ですから、貴族の皆様が快適に過ごせるようにと、ある程度のお部屋が準備されているのですよ。ただお部屋も5段階ありまして、旦那様が一番いい部屋をとの事でしたので、お嬢様は一番いいお部屋を準備して頂いております」


「まあ、お父様が?」


「はい、お嬢様が異国の地で、少しでも快適に過ごせるようにと」


お父様ったら…いつも私の事を一番に考えてくれているのね。そう思ったら、なんだか涙が込みあげてきた。


お父様や家族が、さらに友人たちが私を応援してくれているのだから、目いっぱい楽しまないと。何が何でもデイビッド様の事を忘れて、笑顔で国に帰ろう。


改めてそう決意したのだった。


早速立派なお部屋を見て回る。正直言って、侯爵家の私の部屋よりも立派だ。カリアの話では、通常王族や公爵令嬢が使う部屋らしい。そんな立派な部屋を手配してくれるだなんて、本当に感謝してもしきれない。


ゆっくり部屋を見て回った後、夕食を頂く事にした。基本的に貴族という事もあり、メイドが部屋まで食事を運んでくれるらしい。私もカリアに食事を運んで貰って、ゆっくり部屋で夕食を頂いた。


これがミラージュ王国の料理なのね。運河があるためか、魚料理が中心で、とても美味しかった。


食後は立派なバスルームで、湯あみを行った。有難い事に、色々なアロマが置いてもらってあった。これはリラックスできるわ。


何から何まで、至れり尽くせりだ。


「さあ、お嬢様。明日はいよいよ留学初日、初登院の日です。明日に備えて、早めにお休みください」


「そうね、今日はもう休ませていただくわ。カリアも疲れたでしょう。ゆっくり休んで」


「ありがとうございます。それでは私は、失礼いたします」


そう言って部屋から出て行ったカリア。そして、外側からガチャリと鍵を掛けている。一応ここは、他の生徒たちも住んでいる宿舎だ。その為、安全のため鍵を掛ける事がルールらしい。


ベッドに入り、ゆっくりと目を閉じる。明日からいよいよ、貴族学院に通うのね。なんだかドキドキするわ。私、上手くなじめるかしら?て、何弱気な事を言っているのかしら。そうよ、私はこの地で頑張ると決めたのよ。今から泣き言なんて言っていられないわ。


さあ、もう寝ましょう。


長旅で疲れていたこともあり、この日はあっという間に眠ってしまったのだった。

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