コバさん

今作っているものたちが自分をどこかに連れてってくれる。そう信じて颯斗は今も手を動かしている。自分の書いた小説がドラマになり映画になり自分の半生もまた作品として世に紹介される。そんな人生を歩みたい。そう思ってやってきた。今自分がやってることはすべて意味がある、そう思うことで颯斗は自我を保ち今日も淡々とやるのだ。

颯斗には友達がいない。地元の友達とも高校の友達とも疎遠になった。連絡先も消してしまった。それがコンプレックスだったが最近友達と思える人が出来た。

コバさんだ。

颯斗は毎週日曜日に飲み屋の人とキャッチボールをしているのだが、そこで出会ったのがコバさんだ。どこか憎めない、年上なのに少しナメさせてくれる懐が深い人だ。

颯斗はそんなコバさんとお笑いコンビを組みたいと密かに思っている。言ったら絶対断られるだろうなと思っているが言ってみるだけの価値はあると思っている。

コンビを組むならとコンビ名も考えていた。”下の民の同盟”だ。僕とコバさんはキャッチボール仲間の中で位が低い。よくいじられるのだ。一度コバさんと他の草野球チームの助っ人として石神井公園まで二人で行ったことがある。その時に僕から

「コバさん同盟を組みましょう」

と言ったのだ。

「裏切るのはなしね。」

そこで僕らの同盟が結ばれたのだ。

そんなことがあって僕はコバさんに心を開いている。もしコンビを組むならコバさんだなと思っている。コバさんは確か42,3歳なのでだいぶ年上だが心置きなく話せるのでコンビを組んでもやっていけそうだなと思っている。

そして、実は今日コバさんと飲みに行くのだ。飲みに行く理由は秋津の飲み屋でかわいい子を見つけたからだ。前回のキャッチボールの時にそのことが話題にあがりコバさんを誘ったのだ。

だから今日僕はとても楽しみだ。そのかわいい子に連絡先聞きたいし仲良くなりたい。そしてコバさんにコンビ組まないか聞くのだ。

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