飲み屋の役割
「今日も飲み行ってみるか!」
アルコールをコントロール出来なくなってきたことを医者に伝えたら抗酒薬を処方してもらえた。抗酒薬を飲み始めてから試しに酒を飲んだら顔が熱くなり動悸がして酒を飲むどころじゃなくなった。そのお陰で精神力では全く禁酒出来なかった颯斗だったが抗酒薬を飲み始めてから1か月も禁酒が続いていた。飲みに行ってもノンアルで済ませるのだ。
「まともになったんだね」
よく行く居酒屋の店主さくらさんにそう言われた。
(酒を飲んでる時の俺はまともじゃなかったのか)と苦笑した。
「これから俺はまともです!」
そう答えた。
ノンアルで飲みに行けるので母親も安心して口うるさく無くなった。
酒を飲んでた頃は救急車だったり警察だったり帰ってきても小便をまき散らしたり散々だったので僕が飲みに行くとき母親は心配しきっていたのだ。
ただ、シラフで飲みの場にいると30分もすれば満足して帰りたくなる。もう夜通し人と虚構を繰り広げることは出来ないんだな、と少し寂しい気持ちもある。
「まぁこれ以上人に迷惑かけるよりはましかな」
と自分を慰める。
酒を飲まなくなりまともになってきたので堂々と外に飲みに(もちろんノンアル)行けるようになり颯斗は最高の女に出会うために今日も飲みに出かける。
「うぃっす!」
「おぉ!颯斗久しぶり!」
そう答えてくれたのはすしbarの店主まほっさんだ。
「めっちゃ久しぶりっす!(笑)」
「仕事辞めちゃいました!(笑)」
「だと思った!2~3か月ぶりだもんね」
このすしbarは前職の役所のすぐ近くにあり役所で働いてるときは仕事帰りによく行っていたのだ。
「最近なにやってんの?」
「またYouTube始めました(笑)」
「なんて名前で活動してんの?」
「いかれぽんち13号です(笑)」
「なにそれめっちゃ面白いじゃん!俺も見たい(笑)」
久々だったのに前と全く変わらないテンションで話せる。これが飲み屋のいいところだと思う。お酒は全く自分には向いてなかったけれど。
ノンアルビールを飲みながら他のお客さんともたわいもない話をし、今日の疲れを解きほぐしていった。
「じゃあ!まほっさんお会計で!」
「おっ!真面目じゃん!」
「無職なんで!(笑)」
「じゃあ就職頑張って!」
「はいっ!」
そうしてすしbarを後にした颯斗はすがすがしい気分だった。
(明日も頑張ろう)
颯斗はそう思った。
本来飲み屋とはそういう役割なのかもしれないと颯斗は思った。
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