剥がれていくメッキ

日々手を動かす毎日の中で颯斗はちょくちょく外に出かけていた。最高の女と出会うためだ。一人で個人経営のカフェに行きそこの店員さんが女性であったことにテンションが上がったが結婚指輪を確認してすぐに冷静になった。

(いい女はそりゃ相手がいるわなぁ)

そう、いい女は相手がいるのだ。男もしかりいい男は相手がいるものなのだ。そんな当たり前のことに今更気づいた颯斗はあるネット配信者の言葉を思い出した。

「お前らはなぁ適当な女と結婚して適当な子供作って適当に育てて一生が終わるんだよ!」

(人生なんてそんなもんだよな)

ネット配信者の言葉は颯斗に響いた。

自分を高く見積もりがちでそれによって苦しんできた颯斗にとって当たり前のことを言ってくれる存在はデカかった。

(適当な女と付き合うかぁ、出会って俺を受け入れてくれた人が俺にとって”最高な女”だ!)

また、颯斗の殻が一つ剥けた。学生じゃなくなり強制的に社会に参加するようになってから颯斗のメッキはどんどんと剝がれていった。そしてどんどん颯斗は生きやすくなっていた。自分で着込んだメッキに颯斗はずっと苦しめられていたのだ。


素っ裸になりたい!


颯斗の心はそう叫んでいた。社会は望むも望まないも人を裸にしていく。どんなに着込んでいても脱がされていく。そんな社会に身を任せて生きていく事を颯斗は決めたのであった。

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