第6話 転生

 長い夢を見ていた気がする。夢の中で、あのゲームのストーリーで起こったことを、現実に追体験したような。

 もっと見ていたかったけど……そろそろ起きないと、会社に遅れるか。



「ん? どこだ、ここ?」

 目を開ければ、そこは、いつもの見慣れた自分の部屋ではなく。様々なトレーニング機材が置かれた、ジムのような部屋の中だった。俺はマットの上に、薄い毛布一枚で寝ていたらしい。

 置いてあるトレーニング機材、めちゃデカいな。って、それよりも、本当に、ここどこ?

 確か、俺は普通に昨夜寝てーー

 脳裏に浮かんでくる。飛び散る大量の窓ガラスの破片と吹き込んでくる白い雪。そして、勢いよく、俺に突っ込んで来た大型トラック。

 思い出した! 俺は喫茶店にいて、それでーー

「死んだのか……」

 はあっと大きく息を吐く。どうせ死ぬなら、お腹いっぱいで死にたかった……。というか、空腹を感じてるってことは、

「死後の世界じゃないのかここ?」

 もしかして、流行りの異世界転生とかいうやつをしたのか、俺?

 理由は全然わかんねーけども。にしても……、

「俺の声、こんなイケてる声だっけ?」

 こんな、イケてる声のやつ、声優でしか知らんぞ。なんか懐かしいから、絶対どこかで聞いたことあるやつ。

「……まさかな」

 あいつとして転生したわけじゃないよな?



「そのまさかかよ」

 部屋の中で鏡を見つけ、映った容姿を見て確信した。俺は、20年前クリアしたあのゲームの主人公キャラ、アインになっている!



「俺、アインとして生きていけるのか……」

 いや、アインはもともと俺の分身のようなものなのだけども。ゲームと現実じゃ勝手が違うし。この世界の人が、俺をアインとして受け入れてくれるのかも、不安しかないし。……けど、なっちまったもんは仕方ない。

「腹くくるか」

 そうと決まればーー早速、俺と相棒たちの朝ご飯を作りますか!!

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