【最終章:右目と名前(8)】
田中洋一が気がついたとき、彼は
・・・いや、もうこの書き方はやめよう。今この文章を書いている私の本当の名前は田中洋一。
私が病院のベッドで目が覚めたのは、あの
しかし、沢木キョウは
この事件はワイドショーの
結局、空木カンナと立花美香の
特に池田勇太は、生き残った
真中しずえと羽加瀬信太、そして私の三人は、夏休みが終わったあとも普通に学校に通っていた。しかし、相葉由紀は事件の
学校では、事件のことを
***
卒業式の日、最後の帰りの会が終わり私が校庭を出ようとしていたとき、後ろから真中しずえに話しかけられた。
「洋一君ちょっと待って。」
「どうしたの?」
「えっと・・・卒業おめでとう。」
「え?あ、真中さんも卒業おめでとう。」
「私、中学からは私立の学校に行くの。」
「うん、知ってるよ。すごい
「ありがとう・・・。中学からは別の学校になるね。」
「そうだね。」
数秒の
「その花、私が
「きれいな花だね。なんていう花なの?」
「カンナって言う名前の花。」
「カンナ・・・」
「本当は
「きれいな花が咲くといいね。」
「カンナ、どうしてるのかな。」
「空木さんのこと?」
「うん。」
と、返事をした真中しずえの目には涙が浮かんでいた。その涙を見て、私はとっさに「空木さんならきっと大丈夫。心配ないよ。そのうち、元気な姿で僕らの前にまた姿を表してくれるよ」と、心にもないことを言ってしまった。
真中しずえが私と同じ右目を持っていたならば、きっと私の周りには赤黒いモヤが見えていただろう。だが、真中しずえは私のそのような心の声には全く気づかずに、無理やり笑顔を作り出して「そうだよね。カンナだもんね。私もそう思う」と言った。
「この花の花言葉って何か知ってるの?」
「え、洋一君がそんなことを聞いてくるなんて
「永遠・・・か。それはきっと真中さんと空木さんの友情が永遠に続くってことを意味してるんだよ。」
真中しずえの目から
「じゃあ私いくね。」
「うん。」
「・・・あのね、洋一君。私ね・・・」
「なに?」
「ううん、なんでもない。元気でね。」
「うん、ありがとう。真中さんも元気でね。」
「中学校、私はいないけど大丈夫?」
「え?大丈夫だよ。」
「ほんと?手品を見せるときはきちんと練習してからにするんだよ。」
「もう、余計なお世話だよ。」
「しずえー」と呼ぶ声がまた聞こえた。
「私いくね。バイバイ。」
「うん、ありがとう。バイバイ。」
(「最終章:右目と名前」おわり)
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