【最終章:右目と名前(3)】
みんながお弁当を食べたあと、
その後で、再び池田勇太と立花美香の車に男女別に別れて乗り込み、車で一時間ほどの
「さっきお昼ご飯を食べたばっかりな気がするけど、もうお腹が空いてきちゃったよ」と田中洋一は言うと、沢木キョウは「ショッピングセンターでたくさん歩いたからね。あ、そうだ、さっき立花先生が言ってたけど、今日の夜はみんなでカレーを作るんだって。池田先生じゃないけど、この大自然の中で食べるカレーはすごく美味しいと思うよ」とにこやかに返してきた。
沢木キョウは
カレーライスを作ったのは主に女性陣だった。男性の中で料理の手伝いをしたのは沢木キョウだけで、他の男性陣は何をすればよいのかわからず、ただウロウロと女性陣が料理をしているそばを歩きまわるだけだった。
真中しずえが「使えない男子たちね。沢木君をちょっとは
ご飯が
「おいしい!」と田中洋一が言うと、「でしょー」と真中しずえはすぐに答えた。「いや〜、美味しいですね。立花先生は料理も素晴らしいんですね」と
普段はあまり
ご飯を食べ終わったあと、みんなで後片付けを終えた
羽加瀬信太がふと上の方を見上げると、「すごい、星がきれいだよ!」と興奮した様子でみんなに伝えた。
科学探偵クラブの子どもたちが口々に、「あれが
天体観測ショーのあいだ、一人ずつ順番にシャワーを浴び、最後に立花美香を残すだけになったころには、時計の針は夜の九時半を回っていた。
「じゃあ、そろそろみんな寝ましょうか」と立花美香が言うと、「えー、立花先生がシャワー終わるまではもう少しだけ起きていてもいいですか?」と、まだまだ遊び足りないといった様子で、真中しずえが聞いてきた。
しかし、立花美香は「明日もたくさん遊べるから心配しなくていいのよ。
みんなが寝る準備をするために家の中に入ろうとしたとき、「でも、立花先生はまだシャワー終わってないですよね。先にシャワーを使ってしまってすみません」と、相葉由紀が言ってきた。
「あら、お
「あ、そうなんですね。キャンピングカーってすごいですね。」
「ええ、自分のお家が移動する感じね。そうだ、今日は相葉さんがキャンピングカーで寝る日なのよね、じゃあ、寝るための荷物と歯ブラシを持っていらっしゃい。私がシャワーを浴びているとき、運転席の上のベッドから夜空を見ているといいわ。」
「わー、いいんですか?うれしいです。」
真中しずえと空木カンナは、「立花先生、由紀ちゃん、おやすみなさい」と、キャンピングカーに乗り込む二人に明るい声で声をかけて、そのまま二人で楽しそうに会話をしながら二階の寝室へと入っていった。残された男性陣は、沢木キョウを
***
次の日の朝、池田勇太を除いたみんなは庭に出て、まだひんやりとする空気の中、立花美香の『別荘』の周りを
「みんな、おはよう。よく眠れた?」と聞く立花美香に、女性陣はみんな「はい。とってもよく眠れました」と答えたが、田中洋一と羽加瀬信太は「眠れたには眠れたんですが、池田先生の
でも、そんな暗い表情も、立花美香が持ってきたコップに入った水を飲んだら、さっと
みんなが井戸の水を飲んでいるとき、空木カンナが沢木キョウに、「沢木君はよく眠れたの?田中君と羽加瀬君はあんまり眠れなかったようだけど」と話しかけていた。その質問に沢木キョウは、「念のため
その横では、真中しずえが「キャンピングカーはどうだった?」と相葉由紀に聞いていた。「すごかったよ。星はきれいだし、ベッドもふかふかだし、車で寝てるなんて感じじゃ全然なかったの」と、興奮した声で、相葉由紀はそう答えた。そして、少し声のトーンを落として「それとね、これは男の子たちには
そんな朝のさわやかなひと時は、「おーみんな起きてるのか。腹減ったな。ご飯の準備でもしようか」という池田勇太の
この日も、全てのアクティビティが子どもたちの
緑に囲まれていたためか、目に見えるものは、いつもよりも遠くまでくっきりと見える気がした。また、鳥や虫のさえずりだけでなく、風にゆらめく木々の音もはっきりと聞こえ、ものを
そんな話をお昼ごはんのオニギリを食べているときにしていると、空木カンナがみんなに「ねえ、せっかくだから、この
「どういうこと?」と沢木キョウが聞くと、「みんなゲーム
「なるほど、それは面白いかもね。でも、デジカメで写真は
すると、「写真くらいはいいんじゃない。でも、携帯電話とかパソコンは禁止にしようよ。それにテレビも見ないでいいと私は思うな」と真中しずえが言い、子どもたちはみんな「賛成!」と手を挙げた。
池田勇太は「それはちょっと困るかも・・・」というようなことを言いたそうだったが、立花美香がみんなに
そして、「じゃあ、みんなの携帯電話は言い出しっぺのカンナに預けましょうか。先生たちもそれでいいですか?」と、いつものように真中しずえが
立花美香は「もちろんよ。よろしくね、空木さん」と言ったが、池田勇太は「やっぱり携帯電話が近くにないのは不安だな。
しかし、「ダメです。みんなで決めたことなので
結局、池田勇太の携帯電話を
***
その日の夜は、バーベキューでお肉と野菜を焼いて食べることになった。立花美香の『
しかし、「それだけだと
意外なことに、火を起こしたり、その火を管理したりするのが得意だったのは、アウトドア系とは縁がないように思われた相葉由紀と羽加瀬信太の二人だった。その二人も、
「おお、すごいじゃないか二人とも」と池田勇太が感心して言うと、「本で読んだとおりにやっただけですけど、うまくいきました」と嬉しそうな表情で相葉由紀は答えた。
レンガで作ったバーベキュー台から少し離れたところにまとめて置いてあった松ぼっくりに気づいた田中洋一が「これ、なんでこんなところに集めてるの?」と聞いてくると、「松ぼっくりは、その形から火がつきやすいって聞いたことがあるから試してみたの。松ヤニっていう
その日の夕食となるバーベキュー・パーティーだけでなく、合宿三日目となる翌日も、参加した科学探偵クラブの子どもたちにとっては夢のような時間であった。みんな朝早くから起きてきて、
しかし、その
***
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