【第四章:ターゲット発見(5)】
みんなでどら焼きを食べたあとは、二回目の血糖値の測定まで
特に真中しずえは、『
そんな風に、みんなでワイワイと話をしていると、あっという間に一時間が
「さて、どら焼きを食べてから一時間が経ったので、二回目の血糖値測定をしましょう」と立花美香が言い、一回目の測定と同じ順番で血糖値を測った。全員、二回目の
その値に不安の声がみんなから出たが、「甘いものを食べたから少しは血糖値はあがるわ。でも、どの数値も正常範囲内よ。みんな
最後は池田勇太の番だった。今回も数値が高いかと思われたが、意外にも二回目はどの生徒の数値よりも低い『102』の数値が出た。
「あら、今度は普通の値ですね。さっきのが
そのやり取りを見ていて、ふと沢木キョウが
「立花先生、僕らの2回目の数値、どれも1回目よりも高かったんですが、この数値って少し時間が経つとどうなるんですか?」
「それは良い質問ね。今のあなたたちの血糖値は、どら焼きを食べたから、その中の
「血管の外に出た糖はエネルギーとして色んな細胞で使われるんですよね」と、先週の研究室見学のあと糖尿病について勉強をした真中しずえが、二人の会話に入ってきた。
「その通りよ。小学生なのに、そんなことまで知ってるなんてすごいわね。きっと池田先生の
すると、沢木キョウは「池田先生、
空木カンナも「やっぱり沢木君もわかっちゃったのね。池田先生が
「な、何がわかったんだ?」と池田勇太は
「ふふ、大丈夫ですよ、二人とも。私も最初からわかってたから」と今度は立花美香が笑顔で沢木キョウと空木カンナに話しかけた。
「な、何なんだい、二人とも。それに美香先生まで」と池田勇太が言うと、「あ、もしかして池田先生が立花先生のことを大好きだって言うこと?えー、それをこの場でバラしちゃうの?」と真中しずえが大きい声で言った。
すると、顔を真っ赤にして「いきなり何を言うんだ、君は」と、これまで見たことのない
そして、立花美香の方を向いて「
そんな池田勇太の様子とは
「え?」と
「どら焼きが一個なくなってたのは池田先生が食べちゃってたからなんですか?しかも、勝手にこっそり?」と、ちょっと強い口調で真中しずえが池田勇太に問い
「ち、違うんだ」と池田勇太が言うと、「あら、違うんですか?」とすぐさま立花美香が質問をした。
「いや、違くはないんですけど・・・。」
「でも、どら焼き一個だけで、あそこまで血糖値が上がるのはちょっと心配ですわ。念のため病院に行ったほうがよろしいかと思います。」
「いえ、違うんです。」
「違うというのは、どら焼きは食べたけど、他にも何か食べたということですか?もしかして、どら焼きを職員室に持っていって、そこでどら焼きだけでなくて他にも何か食べたということでしょうか。」
「
池田勇太は
「え、本当に池田先生が食べちゃってたんですか?」と相葉由紀も驚いて聞いてきた。
「ちょっと
「血糖値の動きを見たら、池田先生が1回目の測定のちょっと前に何か食べたんだろうなって思っただけです」と沢木キョウが言うと、「食べたのがどら焼きだっていう証拠はなかったから私は黙っていようと思ってたんですけどね」と空木カンナが付け加えた。
「ぐ・・・黙ってたらバレなかったのか」と小さな声で池田勇太が言うと、「でも、どら焼きが今日この保健室にあるということを知ってるのは、この学校ではほとんどいませんよ。それに、私がどら焼きをもらってから、この部屋を空けたのは長くても十分とかでした。その短い間にこっそり保健室に入ってきて、この箱を開けてどら焼きをとっていく人はいないと思いますよ。この箱にどら焼きが入っているなんて普通は思いませんもの」と、いつもの上品な口調で立花美香が池田勇太をたしなめた。
「たしかに、この箱の中にどら焼きが入ってるってぱっと見だとわからないかも」と、真中しずえが言った。そして、「あーあ、これは
「美香先生、ごめんなさい。この
「ふふ、別に怒ってないですからいいですわ。埋め合わせもする必要はないんですが、そういえば、
「え?も、もちろんです!喜んでご馳走します!!」
「あ、あれ?なんか池田先生にとっては
***
その夜、立花美香は
「私です。
(「第四章:ターゲット発見」おわり)
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