【第二章:科学探偵クラブ(7)】
次の日、いつもより三十分早く起きて家を出た田中洋一は、
図書室に入ると、「
足音はどんどんと近づき、図書準備室へのドアへと
「その鍵は今朝新しいのに
「え、沢木君?どうしてここに?それに鍵を替えたって、どういうこと?」
「幽霊の
「僕が幽霊?何の話をしてるの?」
「うん、ちょっと
「当たり前だよ。僕は幽霊なんかじゃないもん。」
それまでは
「怒らせるつもりはないんだよ。ごめんね。僕が言いたかったのは、相葉さんが聞いた幽霊の声と音が君によるものだったんだよねってことなんだ。」
「な、何で、そんな・・・」
「あ、それとね、ここには僕だけじゃなくて空木さんと洋一君もいるよ。」
「え・・・。」
すると田中洋一は「ごめんね。僕は羽加瀬君がここに
「ねえ、どういう意味?僕が幽霊って何のことを言ってるの?それに、どうして鍵を替えたの?君が
すると、
「そこで羽加瀬君の味方をするのか、空木さんは。それは読めなかったな」と沢木キョウも笑いながら答えた。
「
「まあ証拠はないんだけど、あの日、何があったかは
「あの日って?」
「相葉さんが幽霊の声と音を聞いたあの日だよ。すごい雷と雨だった日。」
「何があったって言うの?」
「僕が思うにね、あの日、相葉さんがこの旧校舎の図書室に入ってきたとき、君はすでに隣の図書準備室にいたんじゃないかと思うんだよね。」
沢木キョウがそう言ったあと、羽加瀬信太は
「でも、図書準備室に入ってドアを閉めたら、ここの南京錠は
「うん、そうだよ。」
「いつも鍵が閉まってるドアなんだから、羽加瀬君がそのときに図書準備室にはいたってことにはならないよね。」
「そ、そうだよ。田中君の言う通りだよ」と羽加瀬信太が田中洋一に続いた。そして、「沢木君だって、昨日図書準備室に入ったよね。あの中から閉めたドアの
そして、「相葉さんが来たときも鍵がかかってたんでしょ。じゃあ、僕が図書準備室にいたわけないよ」と最後は強い口調で沢木キョウを
「鍵がかかってたらね」と今度は空木カンナが口を
「え?」と驚いた羽加瀬信太の方を向きながら、空木カンナは「相葉さんはドアが閉まってたとは言ったけど、鍵がかかってたことは
「で、でも、相葉さんは鍵がかかってなかったとも言ってなかったよ。」
「そうね。だから
「考えてること?」
「うん。相葉さんが図書室に来たときには
「・・・。」
「それでね、静かにしてたはいいものの、雨漏りしてた天井から急に
羽加瀬信太は何も言わなかった。しかし、その
しかし羽加瀬信太は「ち、違うよ。全部でたらめだよ。証拠はないんでしょ。僕じゃないよ」と、うろたえながらも自分がそこにいたことは認めなかった。
「そう、証拠はないんだよ」と沢木キョウは
「そ、そんなの君の
「うん、その通り。証拠がないんだよね。でも、昨日みんなで図書準備室に入ったとき、君は
「・・・。」
「あ、大丈夫だよ。
「せ、先生にいいつけるつもり?」
「え?
「そんなつもりは私にも全然ないよ。私は
「あ、そうなんだ。僕もだよ。証拠はまだないけど、まあ、自分の考えが正しかったか間違っていたかくらいはわかったから、僕はもう
「そうね。私も同じ
二人の会話についていけなかった田中洋一は「え、どういうこと。これって何なの?って言うか、これからどうするの?二人とも何のためにここに来たの?それに羽加瀬君も何でここにいたの?」と、何が何だかわからないと言った様子で沢木キョウと空木カンナに聞いてきた。
「私は沢木君の
歩き始めた沢木キョウに続いて空木カンナが続いたが、二、三歩歩いたあとで空木カンナは
旧校舎の図書室に残された田中洋一と羽加瀬信太は、しばらく図書準備室へと続くドアの近くで
***
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