【第二章:科学探偵クラブ(5)】

次の日は再び雨だった。給食きゅうしょくの後の休み時間に、真中しずえと空木カンナは、六年三組の担任たんにんである池田勇太(いけだ・ゆうた)のところに旧校舎の図書準備室へ入る方法ほうほうを聞きにいった。池田勇太は二人のクラスの担任であるだけでなく、科学クラブの顧問こもんにもなっている。


昨年の夏休みには、真中しずえと空木カンナの研究けんきゅうプロジェクトを熱心ねっしん指導しどうしていた。そのため、真中しずえと空木カンナは、池田勇太に対しては比較的ひかくてき自由じゆうに物を言える立場にあった。また、池田勇太も、あまりこのましいことではないと思いつつも、真中しずえと空木カンナの二人にはほか児童じどうとは違った対応たいおうをすることがあった。


「池田先生、お願いがあるんです!」と、真中しずえは話を切り出した。


「またお願いか。今回のはなんだ?科学クラブで新しい実験じっけんをしたいとかそんなのか?」

「違います。旧校舎の図書室の横にある図書準備室に入りたいなと思ってるんです。」

「なんでまたあんなところに。宝探たからさがしでもしてるのか?」


冗談じょうだんを言って笑わせようとした池田勇太だったが、真中しずえは笑いもせずに「幽霊の謎を解きたいんです!」と、一歩近づいてそう言った。


「幽霊?一体なんの話をしてるんだ?」と不思議そうな顔をしている池田勇太に、真中しずえと空木カンナは一昨日の放課後に相葉由紀の身に起きた出来事と昨日の放課後にみんなで図書室に行ったときの様子を説明せつめいした。


「なるほど、君たちが言いたいことはわかった。でもなあ、そんな理由りゆうであそこのかぎを開けるのはどうかと思うな。」

「そこを何とかおねがいします。」

「幽霊がいるかどうかを確かめるためにって、そんなの理由にはならないよなあ。君ら科学クラブに入ってるんだろ。幽霊なんて、そんな非科学的ひかがくてきなこと信じるのか?」

「自分の目で確かめてこその科学クラブですよ、先生。」

「うーん、とは言ってもなあ。」


「あ、そうだ」と、空木カンナが池田勇太と真中しずえの会話に割って入る。


「池田先生、たしか去年きょねんの終わりごろに、『来年らいねん図書委員としょいいん担当たんとうをするのか〜』って言ってましたよね。」

「おう、よくおぼえてるな。そうなんだよ、今年は図書委員の担当なんだよな。一年ごとの持ち回りで、まあこう言っちゃなんだが、特に大きな仕事はないからいいんだけどね。」

「じゃあ、池田先生は今、図書委員の担当なんですよね?旧校舎の図書準備室の本の整理せいりをするって名目めいもくで、その部屋へやに私たちと一緒に入ってくれませんか?何なら掃除そうじとかもしちゃいますよ。」

「お、それは良いアイデアだな。掃除もしてくれるんなら、おれにとってもありがたいな。」

「じゃあ、早速さっそく今日の放課後に行きましょう。」

「おう、いいぞ。でも、掃除をするんなら、君ら二人だけだと大変たいへんじゃないのか。もっと人手が入りそうだが。帰りの会で掃除を手伝ってくれる人を募集ぼしゅうするか。まあ、放課後にわざわざ掃除したいなんてやつはいないかもしれないけどな。」


すると、「大丈夫ですよ、先生。科学探偵クラブの人は強制参加きょうせいさんかなので!」と、うれしそうに真中しずえが言った。


***

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