【第一章:転校生(6)】
「と言うわけで・・・」と真中しずえは沢木キョウの方を向いて
「田中君が良いんだったら言うけど、本当に良いんだね?」と、左手で
「僕が思うに、このトランプってカードの裏に何のカードかが書いてあるような気がするんだよ。」
「でも、どれも同じ
すると空木カンナが、「ねぇ、しずえちゃん、このカードとこのカード、なんか裏の模様が
「そうかなあ・・・」と真中しずえは言ったが、「ほら、ここ。この真ん中の円形の模様がちょっと違うよ。こっちは青い色が
「え。本当?それがタネなの?トランプの裏の模様でどのカードかわかるってこと?」
「まあ、そうかな。」
「えー、でもそれだけじゃわからないよ。だって洋一君はトランプの裏の模様を見ただけでしょ。一枚ずつ
「なんか僕ちょっとバカにされてる?」
「え?違う違う。全然違うよ。バカになんかしてないよ。」
「本当?」
「ほんとほんと。だから、どうやって裏の模様だけでカードを
「えー、どうしようかなー。羽加瀬君や空木さんはわかる?」
羽加瀬信太はちょっと
「このトランプの裏って円形の模様が五つあるでしょ。真ん中に大きな円形の模様と、
「あー、ほんとだ。良く気づいたね、カンナ」と、真中しずえは
「って言うことは、それが
「うん、正解。裏の模様のパターンでどのカードかわかるんだ。」
「でも、どうやって?」
「えっとね、真ん中の大きな円形の模様はトランプの種類を示してるんだよ。例えば、こっちは線対称の模様でしょ。それはハートなんだよ。」
「じゃあ、こっちの点対称は?」
「それはダイヤ。」
「これは?」
「えっと、それは点対称でも線対称でもないから、クローバーだね。」
「じゃあ、点対称でもあり線対称でもある模様はスペード?」
「正解。」
「で、数字を表すのは
「うん、そうなんだ。そっちはちょっと
「そうすると、点対称の模様の数が一つだけならそのカードは『5』で、点対称の模様が増えるごとに『6』、『7』、『8』となるんだね」とトランプの表と裏を
「うん。で、『9』から『12』は線対称の模様の数で表してるんだよ」と田中洋一が言うと、「じゃあ、『13』は?」と真中しずえが
「それは
「当たり。みんな良くわかるね。この手品のタネが今日バレるとは思わなかったよ」と、田中洋一が
「手品のタネをばらすようなことをしてごめんね。」
「ううん、全然いいよ。でも、よくわかったね。」
「実はね、これと同じような手品をアメリカでも見たことがあって、僕もお店で買って持ってたんだよ。」
「あー、そうなんだ。」
「でも、タネがあるとは言っても、模様のパターンを
「まあね。これでも
「手品のタネはわかったけど、確かにちょっと複雑だね。洋一君にしては良く覚えたなと思うよ」と、半分からかいながら真中しずえが言うと、「
すると、「あれ、どうしたの?」と空木カンナが沢木キョウに聞いた。
「え?」
「なんか考えごとしているような感じだったから。」
「いや、別に何でもないよ。ただ、田中君が頑張って覚えた自分の手品のタネがばれたのに、
「洋一君はそんな細かいことは気にしないよね?」と、真中しずえが言うと、「手品のタネがばれてみんなに笑われるまでが僕の手品ショーだからね」と言って、
「ほんとに
「全然だよ。
「君はナイスな人なんだね。」
「え?そう面と向かっていわれるとちょっと
「いつも
「もう、本当に余計なお世話だよ。でも、僕の手品を見てくれる友達が
「もちろんだよ。友達が一人もいない学校に転校してきて不安だったけど、
「じゃあ、みんな下の名前で
(「第一章:転校生」おわり)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます