【第一章:転校生(5)】
田中洋一の「シャッフルしてくれる人いませんか?」という問いかけに、この日は「私がシャッフルしようかな」と空木カンナが答え、田中洋一からトランプをもらって小さな手で何回かシャッフルをした。
「空木さん、ありがとう。じゃあ
「え、僕が?」
「うん。どこからでもいいよ。あ、でも表は
「う、うん。じゃあ、これにしようかな。選んだトランプの表は僕は見てもいいの?」
「いいよ。」と田中洋一に言われて、羽加瀬信太は誰にも見られないように自分の選んだトランプの表を見た。ハートの五だった。
「じゃあ、次に、そのトランプを
田中洋一に言われるまま、羽加瀬信太は自分が選んだトランプを田中洋一の机の上に置いた。
「これから僕はそのトランプが何のカードかを当てます。実は、みんなには
そういって大げさにトランプを
「沢木君も
「うん。どんな力が田中君にあるのか興味があるよ」と、沢木キョウは答えた。
「知りたい?実はね、僕は物を
「そうなんだ」と、今度は
「あ、その様子だと信じてないね。いいよ、僕の力を見せてあげるよ」と言いながら、田中洋一は「う〜ん・・・」と小さく
そして、みんなが
「すごーい!」と大きな声で言ったのは真中しずえだった。
「なんでなんでー。なんでわかったの?わたし、タネが
「タネも
「えーそんなことないよ。あ、わかった。このトランプ、全部ハートの五なんじゃないの?」
「違うよ」とちょっと
「あれ?ほんとだ。じゃあ何で羽加瀬君が選んだカードがわかったの?もっかいやって。」
「いいよ、何回でもやろうか。じゃあ、今度は信太君がシャッフルして真中さんが一枚トランプを選んでみる?」
言われるままに、羽加瀬信太がトランプの束を受け取りシャッフルをして、真中しずえが自分の選んだトランプの表を
「クローバーの
「えーーー何でわかるの!?」
「もう一回やろうか?」
「うん、やるやる。」
「えっと、これはちょっと難しいな・・・。うん、わかった。ハートの八、だよね?」
「どうしてわかるの?」
「だから言ったでしょ、僕の目には
「そんなことあるわけないよ。ねぇ、タネを教えて。」
「タネも
と、ちょっと
「沢木君は手品が好きなんだよね。タネがわかった?」と、ドヤ
「どうだろう。えっと、空木さんだっけ?君はわかった?」と、沢木キョウは左手で
「私も全然わからなかったよ」と空木カンナが答えると、「ふ〜ん、そうなんだ」と、
「もちろん、いいよ。」
「ありがとう。でも、選んだトランプを机の上に置いたあと、その上から残りのトランプの束を置いてみてもいいかな?」
「え?」
「田中君がレントゲンみたいな目を持ってるなら、選んだカードの上にたくさんトランプが置いてあっても
田中洋一が
「そ、そんなことないよ。ほら、どのカードも同じでしょ」と田中洋一はパラパラと一枚ずつトランプの裏面を見せた。
「あれ、たしかに。どれも同じだ・・・。」
「でしょ。」
「じゃあ、どうしても選んだトランプの上に何か置いたらダメなの?」
「えっと、それは・・・。」
「手品って、タネがわからないから楽しいんだと思うよ。それに、田中君もタネがバレたら
「いいのいいの。この人の手品はタネがバレるところまでが
「タネがバレるのが芸って・・・」と、田中洋一は
「まあ、なんとなくは」と沢木キョウが答えると、「えー教えて教えて」と真中しずえは沢木キョウに詰めよった。
「それはマナー
「大丈夫大丈夫、と言いたいところだけど、まあ
「そう思ってモヤモヤするのも手品を見る楽しみだよ。」
「うーん、そうなのかなー。」
すると
「え、ほんと?」と、真中しずえの声のトーンが
「うん、これまでもネタバラシされたことあったし。」
「さすが洋一君、
「でも、沢木君の考えが違ってる可能性もあるよ。」
「そっかー。でも、沢木君の考えが間違ってても本当のタネは教えてくれる?」
「それはさすがにダメだよ。」
「だよねー。でも、沢木君の
「いいよ。でも、合ってたら、だよ。」
***
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます