【第一章:転校生(4)】

羽加瀬信太は、年齢ねんれいわりには小柄こがらな男の子だった。運動は苦手にがてだったが、勉強は得意とくいで、授業じゅぎょう真面目まじめに受けていて宿題しゅくだいもきちんと毎日やってきていた。そのため先生や周りのクラスメートからは、勉強を頑張がんばっている優等生ゆうとうせいとの評価ひょうかをされることが多かった。


しかし、そのことが逆に、一之瀬さとしや酒見正の気にさわっているらしく、時々ときどきその二人に意地悪いじわるをされていることもあった。特に六年生になってからは、一之瀬さとしや酒見正からのちょっかいがひどくなってきているように、他のクラスメートの目にもうつっていた。


ただ、クラスの中心的存在ちゅうしんてきそんざいであった真中しずえが、羽加瀬信太に対する一之瀬さとしや酒見正の言動げんどう担任たんにんの池田先生に事細ことこまかに伝えていたため、これまでは大きな問題もんだいにはなっていなかった。


空木カンナは、真中しずえといつも一緒にいる女の子だった。彼女は一年前、小学五年生のときに転校してきた。自分から積極的に話しかけるタイプではなかったため、転校してきてからしばらくは一人で登下校する姿が目立った。そんなとき、ある授業で真中しずえとペアを組むことがあり、それ以来いらい、二人の距離きょり急激きゅうげきちじまった。


空木カンナはは、真中しずえとは対照的たいしょうてき性格せいかくで、何事なにごとにも落ち着いて対処たいしょしていた。そのため、いつも活発かっぱつでひたすら前にき進む真中しずえにブレーキをかける場面ばめんも多かったが、彼女たちの正反対の性格が逆に二人を親友しんゆうとして強くむすびつけていたようだった。


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