飛梅と小説家《薄氷奇譚》6
参
翌日。
しかし、私の心には未だ
依然として原稿は白紙であるし、
とにもかくにも書斎に籠もって鬱々と過ごし、手元にある砂糖菓子を旨いとも不味いとも感じず頬張るばかり。
「誰ぞ、少し時を戻してくれねェもんかね……」
誰も居ない窓外を眺めながら、
加えて、無心で食べ続けていたせいか、気づけば、茶
と、その時である。
「……い」
ふいに、
「何だ?」
砂糖菓子を軽く握りしめたままで動きを止め、
その結果、信じ難きことに、その微かな嗄声は私の手の中の砂糖菓子――つまり金平糖の奥深くより聞こえてくるようだった。
――来た。恐らく、
「危うく食うところだよ。場所は選んでくれよ」
妖に襲われるのはいつものことだが、一分一厘とて胃の腑に入れたくはない。絶対に、だ。
襲いに来るのは構わないが、出来得ることなら外出時に現れてほしいと、切に願う。
が、私の心中を知ってか知らずか、まるで私の話など聞こえていないかのように、声は淀みなく語り続けた。
「もし。もし。助けてください先生。
「ほう」
藪から棒に放たれた爆弾発言に私は
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