第8話

うーん、うーんと唸っている声が聞こえる。その声で私は目を覚ました。随分近くで聞こえてたのに、目を覚ましたとたんに何も聞こえなくなった。もしかしたら私の寝言だったのかもしれないな。


しかし昨日は色々あったな。人喰い蜘蛛の伝説について調べるだけだったはずが他のことまで調べ始めたり、変な店でご飯を食べたり…


そういえばあの店は何がモチーフなんだろうか?


壁に描かれていたものは輝く太陽と三日月が同時に浮かんだ空。


扉に描かれていたものは人を殺して楽しむ天狗と鬼。そして死体から出る魂。


あと顔があり全体がヒビだらけの徳利(とっくり) を右手に持った河童や女性に化けた狐と真っ赤な池、椿の花と散った菊の花の絵が飾られてた気がする。


え!?待て待て待て待て待て!なんでこんな背中ベタベタしてんの!?私布団で寝たはずなんだけど!?


おおおおお落ち着こう落ち着こう。ほら、ちょうど下の方に水溜まりあるからそこで今の様子を確認したら…


…おいおい、嘘だろ?


なんで蜘蛛の糸に絡まってんの私!?


え!?いつの間に!?なんで!?


はっ、ここは網縫館。人喰い蜘蛛の伝説がある、言うなれば「蜘蛛屋敷」だ。


まさか…人喰い蜘蛛に捕らえられた!?

どうしたらいいんだよこんな状況!誰か助けてくれないか、いや、さすがにそんな都合よく助けは現れないだろう。


と思ってたら何か人を呼んでいる声がしてきた。そうだ、落ち着いて耳をすまそう。もしかしたら助けが来てるかもしれない。


この声は…お、凪の声だ。もしかして凪が私を助けてくれる?マジで!?


神は私を見放さなかった。God,thank you!

Very thank you!


凪「……ろ」


いいぞ凪、そのままこっち来い!


凪「…び………きろ」


ん?何て言ってる?


凪「響…いい加減に…





起きろーーーー!」


そう言うと容赦なく腹パンをしてきた。何故か腹パンされた後はいつの間にか布団にいた。もしかして…夢?


あまりの驚きと痛さに、私は少し不機嫌に「何だよ急に」と言ったが、凪はどこか落ち着きがなく、全く答えてくれなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る