第7話

ちょうど2人の話が終わった頃に料理が出てきた。


今日は白ご飯に野菜がたっぷり入った味噌汁、刺身の盛り合わせに酢漬け、茶碗蒸しにデザートの杏仁豆腐とさすがの豪華さだ。


全員分の料理が出終わったころにこの旅館の主人だと思っていた人が出てきた。


菊「皆様こんばんは。私は網縫館で働いております、火車 菊(ひぐるま きく)と申します。本日は1日の締めとして最高の夕食を用意しました」


「そんな事よりよォ」と例のムカつく会社員(名前は河童だった気がする)の声がした。「さっさと飯を出せよ。俺たちはお客様だぞ?」などと言っている。


「河童くん!」と付喪さんが言った。


洋平「いくらなんでも態度が横暴だ。それでも君は社会人か?」


__よしいいぞ!もっと言ってやれ!


そのままの雰囲気で夕食を食べ始めた。正直気持ちは重たいが、さすが老舗旅館だ。とても美味しい。苦痛そのものな空間でも箸が進む。


次に話を始めたのは一織ちゃんだった。


一織「皆さんは何をしにここへ来たんですか?」


そこで聞いた内容を大まかにまとめると、私たちは人喰い蜘蛛の調査、付喪さん達は出張のついでに、玉藻さんはとある理由で来たらしい。


玉藻さんは「あまり言いたくないのだけれど、それでもいい?」と言っていたため何か特別な事情があるのだろうが聞けなかった。


…それにしても、何か眠いような?そういえば花菜さんは「礼司くん、私の茶碗蒸し食べてくれない?私卵アレルギーで…」と言っていたな。……なんで今こんなこと考えたんだろう?


一度気を張り治してよく見たら凪にすごく心配されていた。さすがに食事中にこんな様子では心配するのも無理はないな。それにしても眠い。


私まだ食べきってないんだけど、もう布団に入りたい。なんでだろう。疲れたのか、なん、なの、か、な…


一織「響さん?響さん!?」


大きな声で叫ぶ一織ちゃんの声が最後に聞いた言葉だ。


つい味噌汁に顔をつけてしまい、熱いと思ったのだが、そんなことは私にはどうしようもなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る