第二十五話 迫り来る魔物
次の村までは一体どれくらい離れているんだろう?
あの村に住む人たちが、他にも村があるのかどうか分からないと言っていた意味が分かった。
これだけ離れていれば、村同士が関わることはないだろう。
それにこれから向かう場所は、魔物が営んでいる村だ。
一体どんな村だってんだ。
道中
いつかのホウゲンさんも言っていた。
ーーひとくちに魔物と言っても、悪いやつばかりじゃないーー
村に住む魔物が悪いやつじゃないことを祈るばかりだ。
ーーーー
いまだに雪は降り止む様子もなく降り続けている。
後ろを振り返ると、降り積もった雪の上にここまでの足跡が残っていた。
「ここを抜ければもう少しだ」
先頭を走る
森を抜けると、岩が剥き出しになった土地に出た。
目の前には土と岩だらけの茶色い世界が広がっている。
さっきまで緑の世界だったので、すごい変わりようだ。
後ろを見れば緑の森。
前を見れば土と岩の茶色。
俺たちは今その境界線に立っている。
「村までもう少しだ」
進む道の先は、ひび割れた地面に巨大な岩がゴロゴロと転がっていて無開拓の土地といった感じがする。
人類が来たのは俺たちが初めてなんじゃないかという気さえしてくる。
「なんかこの土地嫌な感じがする」
「確かにな。 感知が苦手な俺でも魔物が至る所にいるのを感じる」
感知が得意なシンジュが言っているから、俺の勘は当たっているんだろう。
「姿は見えないけど、数がすごい」
好奇心旺盛の彼女がここまで警戒するのは珍しい。
魔物が住む村が近いからだろうか。
「あれだ」
岩の上から見下ろした位置に村らしきものが見える。
あれが魔物だけの村。
「でも魔物の気配はあの村からじゃないよ。 もっと近く……真下!」
シンジュがそう叫んだと思ったら、地響きが起こり始めた。
「なんだ!?」
まさか魔物?
ずっと姿が見えないって思ってたけど地面に隠れてたってこと?
そう思っていると、そいつが地面を突き破って姿を現した。
【
四肢も翼も持たず、蛇のような大型の竜族。
地中に住みつき、岩や鉱物を食べるB +クラスの魔物だ。
「でっけー!!」
「でっけー!!」
タクミとほぼ同時のタイミングでの発言。
全長はおそらく15メートルほどはあるだろう。
恐ろしいというより、でかい!という感想がはじめに出たのは成長した証だろう。
B +クラスの魔物だったら、今の俺たちの敵ではない気がする。
一斉にみんな
そういえば特訓してから全員で戦うのって初めてだっけ?
ユウキ先生から全員の特徴は聞いてるし、モモエさんから口酸っぱく言われてた教えもあるし……やってみるか。
「ミサキとクロカは距離をとって! クロカは最優先事項でミサキを守りながら遠距離からの攻撃」
この2人は遠距離向きだ。
それにミサキはこのチーム唯一の回復系。絶対にやられちゃダメ。
なので敵から一番距離を取らなきゃ。
「うん」
「分かったわ」
クロカとミサキは指示通り距離を取る。
「え、うちはどうしたらいい?」
「お前は俺から近すぎず遠すぎずの位置から、俺に敵の位置を教えてくれ! 俺、感知苦手だから」
「オッケー任せて!」
問題はタクミだけど、あいつは俺が変に指示を出すより自由にやらせた方がいいだろう。
元々人の言うことを(彼女以外)聞くタイプでもないしな。
よし!陣形も決まったことだし、いっちょ目の前のヘビを倒しますか。
ーーーーーー
灰雪の中、
青色の呪力に覆われた無数の巨大な岩が、
クロカの先制攻撃だ。
無数の岩の雨は、容赦なく
衝撃波により無数の岩は砕け飛ぶ。
が、それと入れ替わるように、雪煙の中で紫の呪力を纏った拳でタクミが
20メートルほど上空へと殴り上げられた
瞬時に
青色の呪力が赤黒い鞘を覆い、それは青紫へと変化していく。
その先からは紫の液体が漏れ出す。
あれはおそらく毒。噛まれたらひとたまりもないだろう。
真上から大口を開けて迫り来る
ーーーーよし今だ!
勢いよく刀を鞘から抜き出し一閃すると、
ーーーー
あっという間に勝負はついた。
B +クラスの魔物との戦闘は初めてだったけど、力を合わせればいとも簡単に倒すことができた。
「ムギの野郎、いいとことりやがったな」
確かにタクミなら、この程度は1人で倒せたのかもしれない。
でも、こうやって連携して倒したことが今後に繋がるような気がする。
それにしても初めての連携だったけど、我ながら見事な指示出しだったと思う。
「まぁそう言うなって。 次魔物が襲ってきたら、最後の一撃はタクミに譲ってやるよ」
「おう! また指示出し頼むわ!」
上々の出来に満足して話している中、シンジュの方を見ると、1人冴えない顔をしていた。
「どうしたんだ?」
「まだ魔物がいるよ……それにもっと強力なのが」
その言葉にタクミは、今度こそトドメは俺がさす!とでも言わんばかりに周囲を見渡す。
さっきの
周りを見渡す。
すぐに
5メートルほどの巨体に2本の角。
丸太のように太い腕と、その何倍もあろうかという図太い胴体。
顔はぼうぼうに生やした髭に覆われており、額には第3の目のようなものがついている。
そして何より驚いたのは、奴らは片手に剣、片手に盾のようなものを持っていた。
知性があるのか?
そのただならぬ雰囲気から、おそらくAクラス以上はあるだろう。
そんな奴が5体ゆっくりとこちらに迫ってきている。
流石にこれ全部とやるのはキツイかもな……
無意識に一歩、二歩と後退りする。
「だ、大丈夫である」
「どうしたんだ?」
「奴らはお主たちを村に招待するのに相応しい実力の持ち主か試していただけである。 敵ではない」
尻尾をブンブンと振る
……敵じゃないのか?
魔物は俺たちの前まで来た。
「ようこそ我が村、ベーセホリスへ。 ワイは鬼族のゲンゴロウマルだ」
5体のうちの1体がそう言って、頭を下げた。
それに倣うように、残りの4体も頭を下げる。
……これは……お辞儀?
「あれ? 昔来た人族に教えてもらったはずなんやけどな。 誰かを村に迎え入れる時はこんな風にお出迎えしろって」
「頭を上げる時間が違うんやない?」
「大事なんは頭を下げる角度って言ってたやんか」
どうやらお辞儀の作法について、仲間内で揉めているらしい。
それに聞こえてくる会話を聞く限り、悪い魔物ではなさそうだ。
普通に会話しているので知能もそれなりに高いんだろう。
さっきの
これはこっちから手本を見せるか。
言い合いをしている魔物に向かってお辞儀をする。
「ほら、やっぱり合ってたやんか」
「ほんとやな。 それに力試しの
ゲンゴロウマルはそう言って先導を切って歩き始めた。
New World Order〜故郷から追放された俺は、神に授けられた力を駆使して世界を統一することにした〜 @tetora0112
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