第34話 ■ BlackBox ■
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????「やあ。こんにちは!生まれてきたね。おめでとう!」
????「君のための世界、『Plantasia(プランタシア)』へようこそ!」
黒髪の少年が私を覗き込んでいる。
綺麗な新緑が光にあたってキラキラしている。綺麗。
????「僕の名前は記録の大樹アカシア! 君の案内役だよ。
アカシア「これから君とゲームの最後までずっと一緒だよ!」
アカシア「僕は君のゲームを記録するよ☆休みたくなった時は僕のところへきてセーブしてね!」
アカシア「今からキャラクター作成とチュートリアルをはじめるね!」
……なんだろう、この夢。
アカシア? それにしては幼いような。
アカシア「まず名前は?」
アカシア「髪の色は?フムフム」
アカシア「…キャラクターが出来上がったね! では、まず僕を相手に練習してみよう!」
▶こんにちわ(笑顔)
▶好き!!(抱きつく) ←(ピッ)
アカシア「こらこら、いきなりそんなのはだめだよ! 好感度下がっちゃうよ?僕(れんしゅう)だから大丈夫だけどね!」
▶あなたがいいです ←(ピッ)
▶結婚して☆
ん……これってひょっとして、『ゲーム』ってやつ?
へえ、こんな感じなんだ。
アカシア「え、困るなぁ。ふふ。残念ながら僕は案内役だから」
アカシア「……でも、これは秘密なんだけどね。」
アカシア「……ひょっとしたら僕のルートもある、かも? 探してみてね☆」
アカシア「そうそう、右下にヘルプボタンあるでしょう?操作がわからなくなった時、
そこを押せばいつでも僕が」
ザーーーーーーー ーーーーーーーーーーーー ーーーーーーーーー
夢はそこで途切れ、目の前は砂嵐になり、私は強く目を閉じた。
※※※※※
誰かに優しく抱かれている。
ブラウニーだ。
こういう時はいつだってブラウニーだ。
「……プラム。目を開けろ」
……あれ? 声、が?
ブラウニーと同じ匂いが……あれ、でもちがう?
腕の大きさも胸の広さも。力の加減も。
あ、そうか……。
「プラム、オレがわかるか?」
「アドルフさん……」
「よし、良くできました」
いつもの優しい瞳。ホッとする。
周りが目に入る。
赤暗い土の洞穴みたいなとこだな。すごく狭い。
ちょうど私とアドルフさんでみっしりする感じだ。
だから抱っこされてるのかな。
「ここ、どこ?」
「わからん……多分、多分だけどな」
「うん……?」
まだ、お腹にダメージがある。力でない。回復しなきゃ。
「推測だが……異界、かな……はは」
アドルフさんが力なく笑った。
「……」
「……」
「それって魔王がいるとかっていう」
「そうだな……多分な。おじさんもこんなとこ……初めてきたぞ」
「グリーズリーとかたくさんいる?」
「実はさっき数体に襲われた、なんとか逃げれたけどな。ここはちょうど身を隠すのに良い場所だ。安定してるし。お前は自分に回復かけて、もう少し休んでなさいね」
安定?
「あ……」
アドルフさんが良くみたら傷だらけだ!
私は回復をかけた。
「おいおい、まず自分の回復をだな……」
「大丈夫!って――っ」
激痛がした。
自分の腹を見ると包帯が丁寧に巻かれている。
「ほら、大怪我してるんだから静かにしてろ、普通の人なら死んでるぞ。忙しいな、お前。つい昼間に大火傷したばっかだってのに」
いたわるように頭を撫でられた。心配かけてしまってるなぁ。
「アドルフさん、包帯もったいないよ。私なんて放っておけば、治るんだから……」
「うーん……まあ、自動回復だって追いつかないことあるだろ……(中身が出てたなど、おじさん言えないよ)」
「吐きなさい」
「ブラウニーポジを取りに行った!?」
なんもない、なんも! どの道服が破けてるから! ……と言って、結局教えてもらえなかった。むう。
私は自分に回復をかけた。
「あ、『絶対圏』は使えてる。まだ接続切れてなかったんだね。ちょっと安心した」
「だよな。お前がそれ使えなかったらおじさん、さすがに絶望してたよ」
「……ブラウニー、大丈夫かな」
「わからん。だが、今や『絶対圏』も一人で接続ができるようだからなんとかするだろう」
「あんな、あんな事になるなんて。一人であんな事して、ブラウニーの馬鹿……。なんで一人で行っちゃったの」
「……相談してほしかったんだな、プラムは」
「うん」
「多分衝動的になって出てったんだろう。それだけ昼間おまえに起こった出来事に気分が収まらなかったんだろうな。オレだって、お前があんな事になって震えたし、怖かった。ブラウニーなんて世界が終わった感じがしただろう」
……そういえば、様子がおかしかった。
私は事件はとりあえず収まった、として呑気(のんき)にし過ぎたかもしれない。
ブラウニーの気持ちにもう少し踏み込んで会話すべきだった。
……甘えすぎてた。
私はアドルフさんにもう大丈夫、ありがとうといって、自分で起き上がった。
「あれ、なにこれ」
腕に紐がついてる。紐の先はアドルフさんの腕だ。
「ああ、説明する。悪いな、さっきから抱きかかえてたのもちょっと心配な理由があってな。
こっちこっち。ほら、外をしばらく観察してみ」
「ん?」
「……ああ、ちょうどあそこが動いてる」
「……えっ。地形が変わったよ?」
次にアドルフさんは遠くにいる魔物たちを指さした。
「あそこの魔物たち見てみ?」
「ま、まもの……?」
いや、アドルフさん、落ち着いてるけど魔物いるって大変なことじゃない!?
あ、でもあの魔物見た目はかわいい。うさぎっぽい。
「あ、ちょうどあの子たちのところ、地形動いて……あれ?魔物が減った? ……いや、消えた?」
「……そうなんだよ。地形が変わったり、目の前のものがなくなったりするんだよ。この洞穴はあまり変化がなさそうだったから、ここに隠れてたんだがな」
「理解できない……」
「地形が動いてる割に、地震とかも起こらないんだよなぁ……。まあ、そんなだから、この紐だ。結ばないよりはマシかと思ってな。グリーズリーに追われてる最中にうっかりぽろっとお前落として、そこの土地動いたらアウトだと思ったんで……お前起きたし、そろそろ外しとくか」
「アドルフさん、グリーズリーに追われながらそこまでやってくれたの?」
のほほんとしてそうなのに有能だな!
「おじさん、危なかったんだぞ~」
「ご迷惑おかけしました……」
「オレはお前のお父さんだからな。当たり前だ」
また頭をくしゃくしゃされた。
「……う。そういえばアドルフさんを連れてきちゃってごめんなさい。アドルフさんを、こんな危ない場所に……」
アドルフさんと一緒じゃないとブラウニーを止めれない気がして巻き込んでしまった……。
でも、私はアドルフさんがいるおかげで、とても安心してる。
こんな所に魔力もない普通の人間のアドルフさんを連れてきてしまった……と思いつつも、すごくありがたい……。
「もう~。そういう事いわないの。お前が連れてきたんじゃない、オレが一緒に飛び込んだだけだ。
だいたいこんな所に来てしまうなんて、思わないだろ」
「み」
モチがアドルフさんのフードから頭をちょこっと出して、うんうん、言ってる。
こんな時だけど可愛い……。
あああ、泣いてしまう。
「ほーら、よちよち。泣かない泣かない。で……どうするかな。『絶対圏』でオレたちの世界に帰れそうか?」
そうだ、泣いている場合ではなかった、私は涙を拭いた。
「うう。うーん、テレポートする時は、一応跳ぶ先の場所が頭に浮かんでるんだけど、全然元の世界の映像が視えない……。異界の中の移動(テレポート)はいけそうだけど……。『絶対圏』て結構想像力いるんだよね。ひょっとしたら元いた場所にひょこっと出る方法思いついたりするかもしれないけど」
それにしても、『絶対圏』の接続を切るわけにいかないな。
アドルフさんの安全のためにも……。
「聖書にはたしか神の力が弱まる場所、とか書いてた気がするなー。だから他の属性のルールが通るかわからんが、魔属性で溢れてるここは『絶対圏』の力も多少弱いかもな。……うーん、ゲートを探してみるか」
「ゲート? 魔物たちがでてくるやつ?」
「そうそう。ただ、どこに出るかはわからないけどな。とりあえずこの世界から出れるならまあ、なんとなかるだろ……早めに脱出しないと、あれだ。飯とか水がな……」
「……」
「……」
いやああああ!ライフラインが皆無うううう!!
「大変じゃないですか!!」
「しーっ。静かに。そうなんだよ」
「なんでそんな、いや、慌てるでしょう!?」
「だから静かに。…慌てても仕方ないしな。数日なら大丈夫だぞ。おじさん錬金術でなんとかしてみる」
「有能!?」
「静かにしてほしいんだが、もっと褒めてくれていいぞ」
数日、しかし数日か。
「じゃあ……私はこの世界を視て、ゲートを探してみようかな……」
「頼む。ああ、そうだ。何か食べれそうなもの見つけても、すぐに口にするなよ。実とか。この世界特有っぽそうなやつ」
「え、なんで? そりゃ得体はしれないけれど……試すくらいはいいのでは」
「聖書の一節にあるんだよ。 異界の食べ物を口にした人間は、魔王の所有物になってゲートがあっても帰れなくなる話なんだけどな」
「絶望しかない……」
「安心しろ。魔物はいけるはずだ。食ったことある」
「―――!!」
いやああ!と叫ぼうとする前にアドルフさんに口をふさがれた。
「こらこら、もう、さっきから静かにしなさいって何度も言ってるでしょ? いい加減、お母さん怒るわよ? 魔物に気づかれちゃうんだから」
めっ、てされた。
私はコクコクと頷いた。ごめんなさい、おとかーさん。
「……まあ、元気になってよかった」
アドルフさんは優しく微笑んだ。
その瞳はブラウニーと同じだから余計に安心する。
……そういえば、今二人きりだし、聞いてみようか?
「……ねえ、アドルフさん。自分で気がついてる?」
「ん? なにがだ?」
「えっと…アドルフさんとブラウニーってそっくりだよ」
「……」
アドルフさんがピク、とした。
「あ……あー、気がついてる気がついてる、似てるよな。自分でも不思議だわ。やっぱそう思うか? お互い孤児だし、ひょっとしたら血繋がってるかもな!」
「それだけじゃなくて……アドルフさん、額に傷があるよね。ブラウニーにも、そっくりなのが、あるんだよね」
「……」
「……」
しばらく、お互い無言になった。
私はその無言に、アドルフさんがこの件を敢えて今まで話題にしてなかったのだな、と気がついた。
あ……。聞いちゃいけなかったかな……。
「――そうだな」
アドルフさんは、無言でしばらく何か考えたあと、そう言った。
「え」
「恐らくお前が気づいてるだろうこと、オレもわかってる。自分の事だしな。実は……今まで、いつそれを言われるかとビクビクしていた」
「どうして?」
「自分で自分の得体が知れないからな。ブラウニーに初めて出会った時びっくりした。ガキの頃のオレにそっくりだったからな。髪色以外は。…その髪も今や銀に染まりつつ合って……。最初は単純に血が繋がってるのかな、とか親近感を覚えたさ。……でも、わかるだろう。お前なら。そんなもんじゃないんだよ、……まるで双子だ」
「ブラウニーも似てるとは思ってるみたいだけど、そこまでは考えてなかったみたい」
「あいつは今他に考えることがいっぱいあるからな。お前のことで頭がいっぱいだ、あいつは」
額をつん、とつつかれた。
ちょっと恥ずかしい。
「オレには怖いものは結構あるが。その一つが自分の記憶だ。お前たちを引き取ってから余計に自分の記憶を知るのが怖くなった。記憶を取り戻した時にオレは、今の自分を失う気がしていて怖い」
……シスター・イラも記憶喪失ではないけれど、前世の記憶を思い出したせいで、性格がガラリと変わってたもんね……。
ココリーネは前の自分を思い出して苦しんだクチだ。
そう思うと、アドルフさんがそれを恐れる気持ちはわかる。
「年齡はかなり違うが、オレの身体とブラウニーの身体は同一、もしくは複製の肉体なんだろう。なんでかはわからないがな。どんなに似てても古傷まで同じ双子はありえない。オレがブラウニーなのか、ブラウニーがオレなのか。どっちだったとしても、オレは知りたくない」
「額の傷って、やっぱり拾われた頃にはあったの?」
「……あったはずだ」
複製……もしそうだとしたら、ブラウニーが傷を負った後、ということになる……。
ブラウニーは赤ちゃんの頃から私と一緒だ。
傷を負ったのも私が原因だ。
かたや、アドルフさんは10歳くらいより前の自分を知らない。そう考えると……。
私は改めてアドルフさんを見た。
アドルフさんは……少し目を逸した。
「お願いなんだが……」
アドルフさんがとても静かだ。
ちょっと軽く聞いてみようって気持ちだった。
まさかこんな重たい話になるなんて……。
「オレのことは、今まで通り、アドルフ、だと思っていてくれ。オレはお前たちの父親でいたいし、お前たちが大事なんだよ。記憶なんていらない。アドルフとして生きてきた事やそして現在(いま)がとても大事なんだ。」
「……」
「そしてプラム、おまえも、そう思おうとしてたんじゃないのか?」
「……うん。そうだよ。」
「そうか、良かった。だからさ、この話はもうこれでよしとしないか?」
「うん。わかった。私もアドルフさんがアドルフさんのままがいいよ! ブラウニーだってアドルフさんが大好きなんだし、アドルフさんがアドルフさんじゃなくなるのは、私達も嫌だよ」
「嬉しい事いってくれるね。……そっか。なら良かった」
アドルフさんは安心した顔になって、頭をくしゃくしゃ、としてくれた。嬉しい。
「それじゃあ、ちょっと視るね」
「頼むわ。……この場所はあまり動きはないが、いつ動くかわからんから、そっちはオレが見ておこう」
※※※※※※※
それから私はしばらく、この異界を視てみた。
赤い土の世界がずっと広がっていた。
ゲートは稀にあって、そこから魔物がでていったりしてる。
帰ってくる魔物は、違う魔物ばかりだ。
「ゲートはあるにはあるけど、使えるかどうかわからないからなぁ」
「アドルフさん、なんかすっごいドロドロした明るい川がいっぱい流れてるよ」
「おじさん泣きたい、プラムいいかな? それ多分溶岩ってやつだな」
「ようがん」
これが溶岩か!物語で読んだことあるくらいだよ!!
「たまにねぇ、あっちの世界のダンジョンとかでもそういうのあるのよ~、おじさん溶岩嫌い……」
「あ、森みたいなとこはあった」
「それは朗報だな」
「変な実が……」
「……まあ、食わなきゃいいからな」
「この森……アドルフさんが作ったヒースの人工森に似てる…」
「へえー」
「あ……建物がある、大きいお城……みたいな」
「……プラム。勘だが、それ視るのやめたほうが」
「あっ」
「何!?」
「目が合っちゃった!」
「誰と!?」
「知らない人と!!」
「人がいるのか!?」
「なんか角生えてるけど人だよ!」
「魔族じゃねええかあああああ!!」
私はすぐさま、視界を切った。
「や、やばいかな。場所バレするかな」
深淵を覗く時また深淵も……こっち見てたよ!!!
「……ちょっと移動するか。さっきの森とかに飛べるか?」
「ちょっとやってみる」
私はアドルフさんの腕を掴んで、ヒースの蒼い森に似た、その場所へ跳んだ。
「……本当だ。オレが作った森に似ている」
アドルフさんが言った。
私達は地形を観察するために、その場に留まった。
「ここから見えるあっちの赤い土地は動いてるが……ここは動かないな」
「そうだね」
「よし、ここをキャンプ地とする!」
「おー!!」
森には普通の水が流れていた。
アドルフさんが、何か機材を使って調べてる。
「…大丈夫そうだな。絶対とは言えないが、これは普通の水だと思う」
「あ、アドルフさん鹿がいるよ。私達の世界とは見た目違うけど」
「……襲ってこないな」
「全て地上に出てきて襲ってくる魔物、ってわけじゃないのかな」
「……食えるかな」
「あ、アドルフさん!?」
「しょうがないでしょ!?」
「おなかすいてるんか?これ食べるかの?」
突如、皿が差し出された。
更には切られた見たことないフルーツが載っている。
「あ、ありがとう」
「どうも……だが、ここのフルーツは……」
「……」
「……」
「……」
「だーーーーーーーっ!?」
「きゃーーーーーーっ!?」
「なんぢゃーーーー!?」
三者三様の絶叫が森に響き渡った。
アドルフさんは私を抱きかかえて距離を取った。
その、皿を差し出してきた――
赤子のようにちっこいお爺さんはお爺さんで、ビックリしている。
「…どちら様で」
警戒した声でアドルフさんが尋ねる。
「ここら辺を根城ににしとるもんだが。お客さん久しぶり。急いでフルーツ切ってもってきたんじゃが。いらんかったんかいの」
「いや、ここの実食べたら魔王の所有物になるって聞いてるからな。気持ちだけ頂こう」
「おま……何言ってるの? そんな訳ないぢゃん?」
ぢゃん!?
「そうなの!?」
「そんなフルーツあったら今頃人間界は魔王様のコレクションだらけじゃ」
このおぢいちゃんを信じていいのかどうか……。
「(……じゃあ、あの聖書の解釈は間違えているのか?)」
アドルフさんはわかんね~って顔してる。
「前にも人が来たのか?」
「そうじゃな。迷い込んで稀にくる。最後に来たのは10年以上前じゃったかの」
「おじいちゃん、魔族なの?」
「そーじゃよ。現役は引退したがの」
「現役?」
「魔王軍の」
「……それって人間の敵ってこと?」
「かつて、はの。ブラック企業の生き残りじゃ……」
ブラック企業!?
「今はただの終活61年継続中のじーちゃんじゃの」
終活!? 魔族の終活ってそんな年月かかるの!?
「お前たちが人間だからしゃべっちゃおうかなぁ。内緒なんだけど。……わし、魔族だけど中身は違う世界の人間なんよ~魔族とは合わなくての~」
「……あ」
「……う」
「なんぢゃ」
「転生者かあ!?」
「まさか……新たな攻略対象!?こんなおぢいちゃんと愛を育むルートが!?」
「なんてことだ娘よ! まさかお前、そんな趣味が!」
「ある訳ないでしょ!?」
「何を言っておんのじゃ…? お前ら怖…」
私達は一旦落ち着くことにした。
「……地球の人?」
「……お、おおおおおお!! 人間な上に地球の話が通じるんかい!!」
ビンゴー!
「ああ~帰りたいのう、ちたま……」
ちたまってなんだ。
地球のことか。専門用語やめて下さい。
「あ、わし、モリヤマって呼んで」
モリヤマさん。
「……あれ、そういえば10年前くらいに来た思春期銀髪小僧も地球を知っとったの……ん?」
モリヤマのおじいちゃんは、アドルフさんを見た。
「あの時の銀髪小僧がちょうど桃色の髪の少女と背の高い銀髪隻眼の男を知らないかと……ああ、そうかそこの赤土荒野ではぐれたから、今ここにお前らが来たわけか(手をポン)」
え? それってブラウニー? でも10年前!?
てか思春期ってなによ!?
「ん? じゃが……隻眼のお前、あの時の銀髪小僧じゃないのか? 魔王様には会えたんかの? 良く生きておったな」
「は……?」
「ん? それとも。ドッペルのほうか? どっちも銀髪でそっくりじゃったから見分けつかんわ。なんで片目なんじゃ? さてはあの後、魔王様にでも取引で要求でもされたか?」
アドルフさんの顔が蒼白になって、口元を抑える。
「ドッペルの方なら、結構長生きじゃな。そろそろあれから……何年経つんじゃ? お前よく死ななかったな。余計なお世話じゃが。ああ、ひょっとしてあの本体(オリジナル)の小僧を殺して本物になったんかの??」
……このおじいちゃん、何を言ってるの!?
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