第52話

冒険者ギルドの初心者支援の講義2日目

「皆さん、おはようございます。今日からギルドの訓練場を使用し行います。よろしくお願いします。」

「お願いします!」

「では、本日の授業を始めます。」

(さて、どんな内容なのか楽しみだな・・・)

ヨウイチが見ていると、サイの声が聞こえた。

「今日からはより実践的な授業になります。とはいえ、皆さんにはまだ足りないものが多いため、まずは基礎的なところから覚えていきましょう。」

「はい!」

(ふむ、基礎的なところからか・・・)

ヨウイチはサイの話を聞きつつ頭の中でメモを取っていた。

「皆さんは、冒険者として必要なものは何だと思いますか?」

「はい!強さです!」

「そうです。冒険者は強くなければいけません。」

(ふむふむ・・・)

ヨウイチはメモを取りながら聞いていた。

「では、強さとはなんでしょう?」

(ん?強さ?)

ヨウイチが考えているとサイが話し始めた。

「皆さんの中には、スキルやレベルが高いから強いと思っている人もいるかもしれません。しかし、それは間違いです。」

ヨウイチは、サイの話を真剣に聞いていた。

「スキルやレベルが高いから強いのではありません。冒険者として必要な知識、技術が身についているからこそ強いのです。」

(なるほど・・・確かにその通りだな・・・)

「例えば、皆さんはスライムを倒せますか?」

「はい!余裕です!」

(ん?余裕なのか?)

ヨウイチは疑問に思ったが、黙って聞いていた。

「では、スライムはどうやって倒すのですか?」

「剣で斬ります!」

「そうですね。では、剣や武器を使用しないで倒せますか?」

「無理です!」

「では、武器がなかった場合はどうしますか?」

「逃げます!」

「では、逃げるのは悪いことですか?」

「いいえ!逃げるべきです!」

「そうです。逃げるべきなのです。スライムもゴブリンも自分より強い相手と戦うと逃げ出します。それはなぜでしょう?」

「死んでしまうからです!」

「そうです。自分より強い相手と戦えば死んでしまうかもしれません。ただ、逃げるにせよ戦うにせよ、そこで必要なのは判断能力と体力です。」

「判断能力と体力・・・」

「そうです。判断能力がなければ、逃げるか戦うかわかりませんし、体力がなければ逃げ切れません。」

(なるほど・・・)

「冒険者というか冒険者だけではありませんが、死なないことは人として必要な一番重要なスキルです。冒険者は特にモンスターと戦って生計する職業なので特に重要です。」

「はい!」

「今回の講義では冒険者として必要な基礎を教えます。ただし、全過程で一番初めに行うのは体力作り、走り込みです。何を行うにしても体力が消耗している中でどれだけ力が発揮できるかを知る必要があります。疲れている中、咄嗟に次の行動に移せる、何ができて何ができないかを把握しておくことはモンスターと戦う上で一番重要です。」

(なるほど・・・確かにそうだ。)

「では、本日の授業を始めます。先ほども言った通り走り込みからです。終わりというまでこの訓練場を走ります。では、はじめ!!」

こうして、ヨウイチの冒険者基礎講座が始まった。

ヨウイチが見ていると、サイの声が聞こえた。

「皆さん、お疲れ様です。今日の走り込みはここまでにしましょう。」

(ん?もう終わりなのか・・・)

ヨウイチが周りを見ると、皆息を切らして座り込んでいた。

(なるほど・・・体力作りか・・・確かにこれは重要だな・・・)

「さて、皆さん、次の講義に入りますよ。まずは隊列毎に分かれてください。前衛はここ、中衛はここ、後衛はこちらです。」

サイがそう言うと、皆一斉によろよろと動き始めた。

「では、各隊列に別れたら隊列毎に講師がいますので従ってくださいね。あ、ヨウイチさんは全て覚えないといけないので、私と見て回りますか。」

「わかりました。」

ヨウイチはサイと一緒に各隊列を見て回った。

(なるほど・・・こうやって隊列を分けるのか・・・)

「まずは前衛から順番に行きますか。」

「はい。」

・・・

「前衛はモンスターと対峙する上で一番危険なポジションだ。一番前に立ってモンスターからの攻撃を後方に行かせないようにしないといけない。」

「はい!」

「モンスターが弱いうちは小さな盾でもいいが、モンスターが強くなるにつれて盾も強く、重く、頑丈な盾であることが望ましい。まぁ、戦うスタイルにもよるが・・・走り込み後でわかるかもしれないが、体力がない時にそんな盾を持つのは厳しい。前衛はポジションの中でも一番体力を必要とする。これからも体力作りを怠るなよ。」

「わかりました!」

「では、まず盾の取り扱いから行おう。」

・・・

「中衛は前衛がモンスターと戦っている間、後方で待機しモンスターの動向を探る必要がある。隙があれば攻撃し、前衛の補助を行い、回復させ、前衛が取り逃がしたモンスターを後衛に行かせないようにする。前にも後ろにも気を配らないといけないので、瞬時に見極める能力が必要だ。」

「はい!」

「まずは中衛としての立ち位置から学んでいこう。」

・・・

「後衛は遠距離からの攻撃や回復などを行うポジションだ。しかし、職業柄、防御が弱いことが多いため、近づかれると一番危ないポジションでもある。ただし、一番後ろで動向を見ることができるため抜けてきそうなモンスターがいたり、前衛・中衛が危なそうな時に遠距離攻撃で牽制したり、良い立ち回りをするために前衛・中衛に指示したりする司令塔でもある。」

「はい!」

「では、まず後方からの戦況把握と指示だしから行おうか。」

・・・

ヨウイチはサイと共に各隊列を見て回りながら講義を受けていた。

(なるほど・・・前衛は盾の使い方と体力作りがメインで、中衛は状況判断がメインで、後衛は戦況把握と遠距離攻撃がメインなのか・・・さて、どこまで教えれるかわからないけど覚えるしかないな。)

ヨウイチが考え事をしていると、サイの声が聞こえた。

「では、本日はここまでにしましょう。皆さんお疲れ様でした。」

(ん?終わったのか・・・)

「本日の講義でわからなかったところがあればいつでも質問してくださいね。」

「ありがとうございました!」

講義が終わるころにはすっかりお昼になっていた。

(さて、俺も帰るか・・・)

ヨウイチは家へと帰っていった。


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召喚され追放された頼りない鑑定士の俺ですが、何故だか周りから頼りにされて順調に成り上がっていきます。 Ash藤花 @Ash_toka

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