第51話

王城での打ち合わせが終わったヨウイチは、冒険者ギルドへ戻ってきた。

「ヨウイチ、今日はご苦労様だったな。」

「ギルドマスターもお疲れ様です。付いてきてくれてありがとうございました。」

「講師の件は、希望通りとなったか?」

「ん〜、まだやってみないとわからないので何とも言えないですね。何せ初めての事なので・・・」

「まぁそうだろうな。いずれにせよ、あと1週間あるんだ。その間冒険者ギルドの講師陣にでも話を聞いたらどうだ?」

「初心者支援の講師の方々ですか?」

「あぁ、今回の件は王城からの要件とはいえ、ヨウイチには迷惑をかけるからな。講師陣には話をしておいてやる。一応、日毎に行う授業が違うから1週間でいろいろな授業が見れるぞ。」

「それはありがたいですね。是非お願いします。」

「わかった、話はしておくよ。明日からでいいか?」

「はい、ありがとうございます。」

(初心者支援の講師か・・・どんな人なんだろう?俺はお金がなかったから受けなかったんだよな。)

ヨウイチはギルドマスターにお礼を言うと、冒険者ギルドを出て家へと帰った。


◇◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


王城で講師の件で打ち合わせを行なった翌日、ヨウイチは冒険者ギルドに来ていた。

「おはようございます。」

「ヨウイチさん、おはようございます。」

受付嬢のメイさんが笑顔で挨拶を返してくれた。

(相変わらず笑顔がかわいいな・・・)

「本日はどういったご用件でしょうか?」

「初心者支援の講師の方々の授業を見学させてもらいたくて来ました。」

「わかりました。担当の者に伝えておきますので少々お待ちください。」

メイはそう言うと、席を離れていった。

(さて、どんな講師がいるのか楽しみだな・・・)

しばらく待っているとメイさんが戻ってきたので、初心者支援の教室へと向かった。

「では、私はここで失礼しますね。頑張ってください!」

「はい、ありがとうございます。」

ヨウイチは教室のドアを開けた。

「失礼します。」

中に入ると、20人程の生徒が座っていた。

(なるほど・・・全員座って授業を受けるのか・・・)

ヨウイチは空いている1番後ろの席に座ると講師が来るのを待った。

5分ほどすると、講師が入ってきた。

(ん?あの人たちは確か・・・)

入ってきたのは、前に一緒に護衛任務を受けたサイとそのパーティだった。

「皆さん、おはようございます。今日から1週間、私たちが皆さんに冒険者として必要な知識を教えることになりましたのでよろしくお願いしますね。」

(やっぱりサイさんだったか・・・)

ヨウイチが見ていると授業が始まった。

「まず最初に自己紹介から始めましょうか?では、そこの君からお願いしますね。」

サイが指名したのは、最前列の男性だった。

「はい、俺は・・・」

(なるほど・・・自己紹介から始めるのか。職業、スキル等を知るためと組み合わせを考えるのかな。)

ヨウイチは、サイの自己紹介を聞きながら授業の流れを考えていた。

「では、次の人お願いしますね。」

(次は・・・あの女性か)

「はい!私は・・・」

(ん?あれって・・・)

ヨウイチが指名された女性を見ていると、以前一緒に薬草採取を受けた冒険者だった。

(やっぱりあの時の女の子だったか・・・)

その後も次々と自己紹介が行われていった。

「では、最後にヨウイチさんお願いしますね。」

「はい!」

(俺の番か・・・)

ヨウイチは立ち上がると自己紹介を始めた。

「皆さん初めまして、私はヨウイチと申します。職業は鑑定士でレベルは50です。前衛から後衛までオールマイティにできます。今回は講師について勉強するために皆さんと一緒に受けることになりました。よろしくお願いします。」

自己紹介を終えたヨウイチが席に着くと、サイの声が聞こえた。

「はい、ヨウイチさんはすでにC級の冒険者ですが、今回特別に参加することになっています。C級とはいえ、ちゃんと習ってもらいますから、皆さんも変だと思ったら指摘してあげてくださいね。」

くすくす・・・

(笑われてしまった・・・サイさんやるな、場を和ませたな。)

ヨウイチは、サイの配慮に感心しながら授業を聞くことにした。

「では、本日の授業を始めます。」

(さて、どんな内容なのか楽しみだな・・・)

ヨウイチが見ていると、サイが黒板に文字を書き始めた。

「今日は冒険者として必要な知識を話します。明日からは訓練場を使って体を動かしながら教えるので、座学は今日だけです。皆さんも知っていると思いますが・・・」

(ふむふむ・・・)

ヨウイチはサイの話を真剣に聞いていた。

「まず、冒険者として必要な知識は・・・」

(なるほど・・・こんな感じで教えるのか・・・)

ヨウイチは授業を聞きながらメモを取っていた。

「・・・以上です。では、今日のところはこれで終わりにしましょう。明日からは動ける格好できてくださいね。」

「ありがとうございました。」

2時間程の授業が終了すると、サイが教室を出て行った。

(さて、俺も帰るか・・・)

ヨウイチが帰ろうとすると後ろから声がかかった。

「ヨウイチさん、お疲れ様です。」

「あぁ、サイさん、講師お疲れ様でした。」

「それで、聞いてみてどうでしたか?」

「えぇ、とても参考になりましたよ。わかりやすかったし、何より場を和ませるのがすごい上手でした。」

「ありがとうございます。」

「では、また明日からもよろしくお願いします。」

ヨウイチはそう言うと教室を後にした。

(サイさんの教え方は上手だったな。あそこまでではないにせよ、俺も教える側として考えないと・・・)

今日の授業風景を見て、思うところがあったヨウイチは自分が講師としてやっていくべきことを考えながら家に帰宅した。

家に帰るとちょうどお昼の時間だったので、メイドさんに準備してもらった昼食を食べながら、ヨウイチは考えていた。

(さて、明日から本格的に授業が始まるけど・・・とりあえず、昨日は王城での打合せが疲れたし、今日はゆっくりするか。)

ヨウイチは明日からの授業を楽しみに、一日ゆっくりと過ごした。


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